福島県立医科大学 TRセンターの概要と成果 | 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター

福島県立医科大学 TRセンターの概要と成果

福島県立医科大学TRセンターの概要と成果

事業概要

事業主体

1. 名称: 福島県立医科大学医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター(TRセンター)

2. 設置: 平成24年11月20日

3. 組織: 設置時は臨床リソース・データ基盤分野など10分野

    平成29年度から生体分子プロファイリング部門など6部門及び3支援室(令和3年度から6部門及び事務室)

事業の目的及び内容

福島県立医科大学医療-産業トランスレーショナルリサーチセンターは、東日本大震災からの復興プロジェクトの一つである「福島医薬品関連産業支援拠点化事業」を推進し、がん組織からの培養細胞や実験動物モデル等の研究成果を製薬企業等に橋渡しするとともに、福島に新たなバイオ産業と雇用を創出するため、本事業の成果を活用・事業化する大学発ベンチャー企業を育成するなど医薬品関連産業を支援してきております。

福島医薬品関連産業支援拠点化事業

主な研究成果

各種生体由来検体

令和元年度までに、福島県立医科大学附属病院及び同大学関連病院に由来する臨床検体の採取数は13,111件。東北地方で他に比較できる規模のバイオバンクは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(保存試料数約150,800人分:2019年12月現在)と鶴岡メタボロームコホート研究(慶應義塾大学)(保存試料数10,521人分)の2か所だけです。(AMEDバイオバンク情報一覧より)

なお、臨床検体数と同数の臨床情報も取得しており、これらの解析による遺伝子発現情報やタンパク質解析情報等と合わせて、データを収集・公開しています。

福島コレクション
F-PDO®

令和4年2月までに、患者由来のがん組織を培養したF-PDO®を104件(系統)樹立。F-PDO®の樹立系統数は、世界最大手のA社細胞バンクの134系統に匹敵する規模となっています。

なお、令和4年3月には世界的ながん研究機関である英国CRTとの間でF-PDO®の再使用許諾に係るパートナーシップを締結いたしました。

F-PDO
がん由来培養細胞 樹立細胞系統数109
F-PDX®

令和4年2月までに、患者由来のがん組織を免疫不全マウスに移植して増殖させたF-PDX®を206件(系統)樹立。F-PDX®の樹立系統数は、国内の研究機関としてトップクラスであり、特に造血器腫瘍(白血病)の61系統は、世界最大のPDXコレクションを有するB社の白血病モデル数(20系統)より多くなっています。

F-PDX
担がんマウスモデル 樹立細胞系統数200
タンパク質マイクロアレイ

逆相タンパク質マイクロアレイ搭載試料を、令和4年度までに累計28,742件調製。ヒトタンパク質やアレルゲン・病原体を含む微生物由来のタンパク質をガラス基板に数千~数万種類搭載可能にしたタンパク質マイクロアレイ技術は、世界でも類を見ない当センター独自の技術です。

タンパク質マイクロアレイ
タンパク質マイクロアレイ(実写)
スライドガラス上の細かい点の一つひとつが、ヒトタンパク質やアレルゲン、病原体に由来するタンパク質です。このマイクロアレイに血液サンプルなどを当てることにより、血液中の抗体がどのタンパク質(抗原)に結合するか、網羅的に調べることができ、抗体の機能を効率的に知ることができます。例えば、この技術を用いて、病原体やアレルゲンに結合する抗体が血液中にどのくらいあるか、知ることができます。
新型コロナウイルスに対する抗体の取得

私たちは、血液に含まれる体内への侵入物(細菌、ウイルス、カビ、酵母など)に対する多くの抗体*を1回の検査で調べる技術(タンパク質マイクロアレイ)を開発しています。この検査により、体内に存在する抗体がタンパク質マイクロアレイ上にある侵入物に反応を示すかを容易に調べることができます。今回の場合は、新型コロナウイルスへの反応を調べます。また、血液中の新型コロナウイルスに対する抗体を取り出し、その抗体を新型コロナウイルスの診断薬・医薬品としての開発を支援します。(抗体医薬品研究について詳細はこちらから
*抗体は体内から侵入物を排除する重要な役割をになっています。

新型コロナウイルス
高グレード細胞保管施設

セルバンクの保管までできるGMPに準拠した凍結保管庫を9台(1台当たり最大25,600バイアルを保管可能)備えており、令和4年度には10万本以上の検体を保存。管理・運営者が令和2年7月7日に医薬品製造業許可を取得。このような保管専用施設は全国的にも例が少なく、東北地方では唯一のものです。

細胞保管施設(災害医学・医療産業棟1階)
細胞保管施設(災害医学・医療産業棟1階)

主な地域貢献

ベンチャー企業等育成

1. 福島医大発ベンチャー称号の授与(5社)

■ 福島プロティンファクトリー株式会社(平成30年2月20日設立)

  事業内容:タンパク質マイクロアレイ用サンプル調製及び関連試薬等販売

■  富士フイルム和光バイオソリューションズ株式会社(平成31年2月18日設立)

  事業内容:創薬支援業務および検査業務の受託サービス

■  福島セルファクトリー株式会社(令和2年2月27日設立)

  事業内容:細胞保管および抗体産生細胞の取得

■  株式会社ジェイサーバイオ(令和5年1月11日設立)

  事業内容:ライフサイエンスに関するコンサルティング等

■  株式会社チューニングフォーク・バイオ・ジャパン(令和5年7月19日設立)

  事業内容:タンパク質マイクロアレイ解析の受託や抗体プロファイリング事業

2. 福島医薬品関連産業支援拠点化事業成果活用を包括的に担う財団の設立

■ (一財)福島医大トランスレーショナルリサーチ機構:福島TR財団(令和2年2月3日設立)

  事業内容:福島事業の研究開発成果物の産業界への橋渡し(技術移転)

3. 研究室・機器の貸付(令和5年3月現在)

・ ベンチャー企業3社及び財団に対し、合計21室及び関係機器貸付。

・ ベンチャー3社については貸付料を減免支援。

雇用創出効果(令和5年4月1日現在100名)

1. TRセンター雇用者:30名(常勤職員16、准職員・非常勤職員8、派遣6)

2. ベンチャー企業・財団等雇用者:70名

事業年度別雇用者数
地域経済寄与効果

ベンチャー企業及び財団の総売上高合計(※決算期末の属する年度で集計)
・ 平成30年度決算ベースで2者合計約24百万円
・ 令和元年度決算ベースで4者合計約266百万円
・ 令和2年度決算ベースで4者合計約384百万円
・ 令和3年度決算ベースで4者合計約687百万円

福島県との連携施策

1.  「福島医薬品関連産業支援拠点化事業」を推進するための予算確保に関する支援、国との調整

2. 福島県では、TRセンター及び「福島医薬品関連産業支援拠点化事業」を、「福島復興再生基本方針(令和3年3月26日閣議決定)」や「福島復興再生計画(令和3年4月9日内閣総理大臣認定、令和4年12月26日変更認定)」などの重要施策や各種重点計画に位置付け

3. 福島県浜通り地域等の企業等との間で意見交換する機会を設け、医薬品分野の産業集積に資する取組を検討

企業等との連携ネットワークの構築

1. 福島TR財団の会員企業等:令和4年6月現在43者(会員登録のご案内はこちらから
(うち県内に事業所・工場等のある企業等20者)
2. 浜通りバイオ産業推進フォーラム
・令和3年10月14日第1回開催(参加43名)
・令和4年12月15日第2回開催(参加55名)
浜通りにおける企業等との意見交換の場として毎年1回以上開催予定。

福島県内企業(TR発ベンチャー以外)との連携事例

1. 研究開発業務委託に関連するC社が本社を福島市に移転(平成25年度)

2. 研究開発業務委託に関連するD社が福島駅前に事業所を新設(平成25年度)

3. E社とリアルタイム細胞アナライザーを用いた創薬研究について共同研究実施(平成27年度)

4. F社に組織細切器(意匠登録)の金型製作を委託(平成29年度)

5. G社の凍結細胞を長期保管(平成30年度から継続)

6. H社に研究成果物(遺伝子発現解析データ)提供(平成30年度から継続)

7. Iクリニックと抗原タンパク質マイクロアレイを用いたペット高性能アレルギー検査法の開発について共同研究実施(平成30年度)

8. 一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構(郡山市)にラット及びマウスの標本作製を委託(令和元年度)

9. J社の抗体依存性細胞傷害活性測定(レポーターアッセイ)を受託(令和2年度)

10.  K社及びL社と研究に関する秘密保持契約締結(令和2年度)

11.  IgA抗体マスクを株式会社ゼファー(須賀川市)と共同開発(令和3年度)

12.  IgA抗体マスクとIgA抗体配合スプレーを株式会社いちい(福島市)が販売(令和3年度)