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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.03.19

vol.70  − 名残の雪 −

都内ではどこからか沈丁花の香りが届いてきます。庭には20年以上に渡って全く手を入れていない福寿草が健気にも毎年顔を出し、春の到来を知らせてくれます。

春の嵐と言える程の強風が窓を鳴らす音を聞きながら書いています。
先日、福島に名残の雪が降りました。只、言葉から連想されるような抒情溢れる雪ではなく、記憶がない程の湿った大雪でした。早朝、20〜30センチの積雪が街や野山を白で覆い尽くし、硫酸銅を溶かしたようなコバルトブルー(アルミニウムが原因とのこと)の荒川(須川)が、その中を貫いて流れていました。
白と青のコントラストは、静謐を絵にしたような風景でした。暫し、車中から見惚れてしまいました。この川は、日本一の水質と評価されています。

この雪は、私に久し振りに「蛍雪」という字句を想い出させてくれました。
早朝、寝室のカーテンの隙間から白い光が差し込んできており、その明かりで積雪を知ったからです。
この雪は季節外れの大雪でしたが、そこは名残の雪、淡雪なので一日で殆どが消えてしまいました。
量は多くてもやはり儚い春の雪でした。

本日(編集註:執筆時)は、3月15日、ジュリアス・シーザーが暗殺された日です。暗殺が歴史を変えたのは殆どないそうです。数少ない例外は、我が国では桜田門外の変での井伊大老と、西洋ではシーザーくらいでしょうか。ちなみに、桜田門外の変の日は、春の雪(旧暦3月3日、新暦3月24日)でした。
シーザーは我々医師にとって忘れてはならない人です。
何故なら、歴史上初めて、医師と教師に対しては、人種、民族、あるいは宗教を問わずローマ市民権を与えたからです。彼は、人間社会で、歴史上初めてこれらの職業の重要さを認めた人なのです(「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後」塩野七生 著)。

最近、男の勁さと優しさを読者に説き続けてきた偉大な作家達が相次いで逝ってしまいました。
アーサー・ヘイリー(2004年11月24日逝去)、ロバート・パーカー(2010年1月18日逝去)、ディック・フランシス(2010年2月14日逝去)、何れも息の長いシリーズを書き続けてくれました。
若い時に、自分の美に対する感覚を刺激してくれた作曲家のヴィクター・ヤング(「ワルソー・コンチェルト」、「エデンの東」、「マイ・フーリッシュ・ハート」、「ラヴ・レター」、「ゴールデン・イヤリング」など 1956年11月10日逝去)、現代陶芸家では、八木一夫の流れを汲み(私の勝手な想像です)、絶えず変化し続けた加守田章二(1983年2月26日逝去)も、今は作品と作品集だけがその美を語ってくれています。

彼等に共通なことは、vol.51(http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=76)で紹介した
「現代は密かな男の勇気というものが消え失せた時代だ」(曽野綾子)という“現代”とは対極に位置していることだと感じています。
彼等が逝っても、私の心から“彼等”が去ることはありません。
「人生はすべてこのように絶えざる嘆惜のうちに過ぎてゆく」(「北京の風物」雲郷 著)を実感します。

今週の花材は、
執務室は早春を象徴する淡い緑を黄色と組み合わせて、春の持つ嫋(たお)やかさを演出しています。
秘書室は、執務室とは対照的に、造形と色彩の減(め)り張りを主張しているようです。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■青文字   クスノキ科/落葉小高木/原
産:台湾・マレーシア/西日本や九州など暖
地の山林に自生する。早春に葉がでるのに先
立って、淡黄色の小さな花がたくさん咲く。果
実はレモンの芳香と辛味があり、秋に黒紫色
に熟し香料となる。
葉とともに材も芳香があり、爪楊枝に利用され
る。
■チューリップ(チャーミングビューティ)   ユ
リ科/球根植物/原産:中央アジア〜地中海
沿岸/《名前の由来》ターバンを意味するトル
コ語に由来。チューリップを見たローマ大使が
名前を聞いたところ、“ターバンに似た形”と間
違って答えたことから/「チャーミングビューテ
ィ」はアプリコットオレンジの八重咲き種。淡い
ピンクの八重咲き種「アンジェリケ」の栽培途
中に突然変異によりできたもの。世界的な生
産地はオランダが有名。日本国内では新潟県
と富山県が県花としている。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/70_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■カラー(ガーネットグロー)   サトイモ科/球根植
物/原産:南アフリカ/《名前の由来》苞がYシャツの
襟(カラー)に見えることから/花弁のように見える部
分は苞で、苞の中にある棒状の部分が花序。「ガー
ネットグロー」はローズピンク色の小輪タイプ。
■リューココリネ(アンデス)   ユリ科/球根植物/
原産:チリ/《名前の由来》ギリシャ語の「白い」と「棍
棒」を意味する言葉に由来。花弁から飛び出した雄し
べにちなんで/1990年代に日本に流通するように
なった新しい花。花は芳香があり、花色は紫、青、
白、藤色がある。「アンデス」は他の品種に比べ、花
弁が丸く茎が太くしっかりしている。
■ハラン(旭ハラン)   ユリ科/多年草/江戸時代
から生け花の材料として利用。青々とした大きな葉で
長持ちする。ハランには他にシマハラン、ホシハラン
があり、「旭ハラン」は葉の先端に白い斑が入る。葉を
丸めたり裂いたりするほか、花止めとしても使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/70_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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