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福島県立医科大学:理事長兼学長ごあいさつ
竹之下誠一理事長兼学長写真
理事長兼学長
竹之下 誠一

新年度にあたり、ご挨拶申し上げます。
 震災から12年、ひとまわりの年月が過ぎました。私たちはこの12年間、再生と復興の取組みの中で、成功事例に対してはより大きな成果を求め、失敗に対してはそれを糧に新たなチャレンジを試みるという、試行錯誤を繰り返してきました。あらゆる面において倣うことのできる前例がない大きな困難の中、復興の要である医療体制の充実はもちろんのこと、医療人材の育成においても、研究成果においてもある程度の成果を上げることが出来たものと思っています。ここに至るまで、教職員はもとより、県民の皆さまよりいただいた多大なるご理解とご協力に深く感謝申し上げます。

しかし、福島県の復興は道半ばであり、目指すべきゴールはまだ先です。もちろん、これまでに得た成果は素晴らしいものばかりですが、私たちは、これらの成果をプラットフォームとしてさらなる飛躍を図ることが求められています。例えば、保健科学部の開設や助産師養成課程の新設は、多彩な医療人の育成と輩出のための基盤です。これまで取り組んできたサイクロトロンを活用したRI医薬品の研究は、福島国際研究教育機構(F-REI)が取り組む「放射線科学・創薬医療」分野において、最先端の創薬研究の基盤となります。県民健康調査で得られた知見は同じくF-REIの「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」分野において活用される基礎データとなるでしょう。医療-産業トランスレーショナルリサーチセンターの研究は、南相馬市に開設した浜通りサテライトにおいて世界レベルの共同研究を始める基盤となっています。つまり私たちは12年をかけて、復興に必要な準備を整えた、という段階なのです。
 そして今年度からは、これらの成果をプラットフォームとして、いよいよ具体的に目に見える結果を出す、言い換えれば、社会実装できる結果を出して世界や地域にその成果を還元するという、より難しいフェーズへと進むことを強く意識しなければなりません。敢えて厳しいことを言えば、これまでの気の遠くなるような努力によって整備してきたことが無駄になるのか、高い価値として認められるのかは、今年度からの私たちの行動によって決まるのです。

ですから、当然私たちも変わっていかなくてはなりません。もちろん、教育、研究、診療、さらには医療と健康の面から福島県の復興を支えるという私たちの使命に変わりはありません。地方の県立大学ですから立地する地域を最優先に、ということも当然です。しかし、背負ったその使命の完遂のため、そして福島県唯一の特定機能病院として県内医療の屋台骨を支える役割を果たし続けるためには、福島県内だけをフィールドにしていては、医療の進歩から取り残されて行くばかりです。それは新型コロナウイルス感染症への対応を見てお分かりの通りです。ワクチンの効果、予防法、治療法、いずれも世界の状況と推移を見てこそ、県内の対応を検討できたのです。
 本学はおかげさまでこの12年で、研究であれ、教育であれ、医療であれ、世界と伍するだけの強みをいくつか持つことが出来ました。これらを礎に、私たちは世界に情報を発信すると同時に、世界の知見を取り込み、地域に還元し、人材交流を加速化させることで福島県の医療のポテンシャルを高めていきます。福島県の医療を常にトップレベルに維持することは、そのまま県民の皆さんの健康増進へと直結することです。前例のない状況はまだまだ続きます。私たちは視野を広く持ち、レジリエンス、すなわちしなやかに考え判断し、アライアンス、すなわち積極的に他の機関と連携を行なうことを、これまでも言い続けてきました。加えてこれからは、チャンスを的確に捉え機敏に行動するアジリティをキーワードとして前に進むスピードを加速していきたいと思います。

私たちは、いかなる時も、いかなる分野においても最先端を切り拓く強い志と覚悟を持って、積極的に変化を起こし、それを進化に変えて、国内外における福島県立医科大学の価値と存在感を高めると共に、県民の皆様に適切な医療を必要な時、必要なだけ提供できる体制を築いてまいります。今後も、多くの皆さまの変わらぬご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和5年(2023) 4月1日
福島県立医科大学 理事長兼学長 竹之下 誠一

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