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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.11.11

vol.390  − 想 (おもう) −

二十四節気では、霜降(そうこう)から立冬(りっとう)に入りました。朝は暗く、道往(ゆ)く車には明かりが点いています。
紅葉の季節から、風が冷たさを増し、暦のうえでは冬です。
構内の紅葉は最後の華やぎをみせています。

         つれないものは人ごころ、
         山の日の入り、秋の風、
         泣いてわかれて見かへれば
         鳥も吹かれてちりぢりと。
                          大木惇夫(おおき・あつお)

戦前のこの唄、伝統的な七・五調です。この時季でのこの歌、日本人がこの時季に持つ哀惜(あいせき)の心情を余す所無く表現しています。

家の庭先では焚火(たきび)の煙が空に棚引き、一幅(いっぷく)の絵のような情景です。
晩秋の陽射しが家の中まで入り込み、庭の木々や葉の影を壁や床に写しています。
“秋深し”です。

晩秋、昼下りの陽射しが、稲刈りが終わり人気(ひとけ)の無い田圃(たんぼ)や紅葉の始まった里山の木々や葉の上に注いでいます。
光の色合いが、景色をややセピア色に染め、静謐(せいひつ)さと穏やかさを際立たせています。

“木守り(きまもり)”、この時季の風物詩です。柿を一つ二つ残して、来年の実りを祈る敬虔(けいけん)な気持ち、鳥達の為に残しておく優しさが、この残り実に込められています。
         (vol.249 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=286

飲兵衛(のんべえ)には燗酒(かんざけ)が恋しくなる季節です。
         (vol.267 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=304
         (vol.289 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=326
         (vol.340 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=379
温度を変えて酒を楽しむのは日本酒だけではないでしょうか。
“和の文化”です。

古来から連綿として続いている行事である月見、今も、中秋の名月(八月十五夜)、その前後の待宵(まつよい)、十六夜(いざよい)、九月十三夜、“後の月”、そして十日夜(とおかんや)の月(旧暦10月10日)が愛(め)でられています。今年の十月十日の夜は11月9日です。

“お蔭様”という言葉に代表される様(よう)に、我が国の先人達は、太陽とは対照的な月に惹かれて来ました。
日本人の優しい心根(こころね)がこんなところに窺(うかが)われます。
月に就いて、度々、書いています。
         (vol.7 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=13
         (vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32
         (vol.133 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=166
         (vol.247 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=284
         (vol.334 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=373
         (vol.335 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=374
満月に就いても然(しか)りです。
         (vol.144 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=177
         (vol.156 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=189
         (vol.159 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=193
         (vol.192 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=228
         (vol.237 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=274
         (vol.286 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=323

“寝待月(ねまちづき)”(vol.119)、“雨月(うげつ)”、“片月見(かたつきみ)”など、先人達の月見に掛ける想いの込もった言葉が今も使われています。
         (vol.119 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=150
月見の行事は、収穫の感謝に彩(いろど)られています。

月見をする場所と言えば、縁側(えんがわ)です。縁側は我が国独特の構造です。
         (vol.229 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=266
         (vol.268 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=305
外気に直接触れているという点では家の外です。一方、庇(ひさし)があるという意味でとれば家の内です。
この曖昧(あいまい)さも先人の知恵です。

縁側に芒(ススキ)、団子、芋や豆などの“大地の恵み”を供えて月見をしていました。
何故、“月見は縁側”なのでしょうか。以下は独断です。愛でる対象として月をみた時の額縁(がくぶち)です。
底辺は、勿論、縁側です。部屋からみれば敷居、畳(たたみ)になります。脇が柱、障子(しょうじ)、襖(ふすま)、上辺は庇、軒先、欄上辺は庇、軒先、欄間(らんま)、長押(なげし)です。
これらの仕切りで、月見に不要な景色を遮(さえぎ)れます。供物(くもつ)を置く台やお盆は、絵の中の点景です。

縁側の歴史を辿(たど)ると、高床式住居(たかゆかしきじゅうきょ)に至ります。縁側の造作にも、先人達の工夫の跡がたくさんみられます。
切目縁(きりめえん)、豆腐板(とうふいた)などです。旧家や寺院の縁側で確かめることができます。

縁側、穏やかに暮らし、暮らしを楽しむ先人達の工夫や優しさに頭が下がります。

今週の花材は、“秋の静謐(せいひつ)”です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ピンクッション〔サクセション〕   
ヤマモガシ科/常緑低木/針山に待ち針を刺
したような独特の花姿。 待ち針のような部分の
一つひとつが雄しべ。 「サクセション」はオレン
ジ色で、他に赤や黄色もある。
■LAユリ〔ロイヤルトリニティ〕
ユリ科/球根植物/鉄砲百合とスカシユリを
掛け合わせた品種(Longifrorum Asiatic
Hybrid)両種の長所を持ちあわせた中輪咲き
のユリ。「ロイヤルトリニティ」はオレンジ色。
■ピンポン菊〔オペラオレンジ・オペラピンク〕
キク科/多年草/ ピンポン玉のように真ん丸
に咲く可愛い菊。 日持ちの良い菊の中でも特
に長く楽しめる。「オペラ」シリーズはダリアのよ
うなデコラ咲き品種。
■ノバラ    バラ科/落葉低木/花期は5〜
7月頃で枝先に円錐花序をつけ、2cm程の白
い花が多数咲く。バラの中でも生命力が強く丈
夫で、品種改良などの台木として利用される。
切花では花後の実を楽しむ枝物として流通。
■キソケイ    モクセイ科/常緑低木/
《名前の由来》ソケイに似た黄色い花を咲かせ
ることから/樹高は1〜2mでよく枝分かれし、
5〜7月頃に小さい黄色い花が咲く。切花では
葉物として流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3901.jpg

【秘書室】
■リンドウ〔ササリンドウ〕   リンドウ科/多年草/日本の秋を代表す
る花で、世界に約400種。近年は敬老の日の花として定着。「ササリン
ドウ」は9〜11月頃に流通し、花弁が反り返って開く。
■ブルースター   ガガイモ科/多年草/淡い水色の5枚花弁が星の
ように開花。花はベルベットのような質感で、葉は産毛に覆われている。
他に色違いでピンクスター、ホワイトスターもある。
■ヒペリカム〔マジカルユニバース〕   オトギリソウ科/半常緑低木/
夏期は5〜7月頃で黄色い花が咲く。主に花後の実を鑑賞するものとし
て流通。「マジカルユニバース」は黒色品種。
■雪柳〔塗雪柳(ヌリユキヤナギ)〕    バラ科/落葉低木/春に枝い
っぱいに白い花を咲かせ、庭木としても人気。「塗雪柳」は紅葉したかの
ように赤く染めたもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3902.jpg

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