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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.02.12

vol.65  − 北帰行 −

若い時から東京との往復を重ねてきました。この季節、北に向かうとき東京は雲一つない冬晴れ、那須野ヶ原にかかる頃から雲行きが怪しくなり、雪をみることもしばしばです。

先日の朝、大宮付近から冬の澄みきった空気の中に“真白き富士の嶺”が青空を背に“銭湯の壁絵”のような姿をみせてくれていました。折しも下弦の月が天空に在り、しばし見惚れていました。
関東平野の北の辺りから雪に変わり、視界は一面の雪原で、吹雪が勝手気儘に荒れ狂っていました。
真に“風止まず”です。“他人の破れ傘”そのままに、窓の外をみながら暫し“旅情”に浸っていました。

鉄路での移動は夜が多かった為、若い人も多かった車内に、幾何かの寂寥感や疲労感を伴っての“静寂”、そして運命(さだめ)の“受容”があったように感じていました。
新幹線の“夜汽車”では、壮・高齢者が多くなっているにもかかわらず喧騒に近い“楽しさ”や“賑やかさ”が車内を満たしています。
一昔前の人々には“哀しみ”、“苦悩”、そして“受容”があって、今の人にはないということはないので、この変化の背景にある何かが気になります。豊かさだけの違いでしょうか。

その日は、福島も近年にない大荒れの天気でした。仕事があり遠出をしました。吹雪で視界はゼロ、若い時に地吹雪で車が立ち往生したことを想い出しました。
北の文学者達(宮澤賢治や伊藤整など)は、何故か、吹雪を女性や優しさに転化して歌っています。しかし実体は、判断を間違えれば命を失う“白い魔物”です。

夜汽車の今昔の違いと同様に、リーダー達にも躊躇(ためら)いや迷いが目に付きます。決断が遅い、しない、では、周りが大変なのではないかと、自分の事は棚に上げて案じてしまいます。
リーダーは、平時には何もしなくて良いのです(してはいけない!?)。危機の時に如何に素早く判断できるかだけが問われているように思うのですが…。

鉄路から吹雪をみていて、旧制旅順高等学校の愛唱歌と言われている「北帰行」という歌が流行った時(1961年、昭和36年)、B面(今はない!)にあった、島崎藤村の若葉集から再構成されたという「惜別の唄」を想い出しました。学生時代に覚えた唄は、今でも口を衝いて出るから不思議です。
それにしてもリズム、テンポの違いに、今昔の感に堪えません。

惜別の唄 (作詞:島崎藤村)
   遠き別れに たえかねて
   この高殿(たかどの)に登るかな
   悲しむなかれ わが友よ
   旅の衣(ころも)をととのえよ

今週の花材は、執務室はいよいよ桜の登場です。秘書室は、カーネーションとフリージアです。
ともに鑑賞する木や草々の花の代表選手です。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■東海桜   バラ科/原産:日本・中国/中
国原産のカラミ桜と日本原産の小彼岸の実生
との交配種。淡桃色の一重咲きで芳香があ
る。しなや
かな枝ぶりと、枝いっぱいに花をつ
けることから近年人気のある品種。桜は春を
象徴するもっともなじみの深い代表的な花。桜
の開花宣言や花見の桜は染井吉野で、東海
桜は染井吉野より早く咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/651.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■フリージア(ポルトサルート)  アヤメ科/球根植物/原産:南ア
フリカ/和名「アサギスイセン」/《名前の由来》デンマークの植物
学者が発見し、親友の名フレーゼにちなんで名づけた/南アフリカ
ケープ地方に原種が11種生育。オランダで品種改良がすすみ、現
在は150種以上になる。甘い香りが特徴の春の花。日本には明治
中期に渡来。「ポルトサルート」は鮮やかな黄色で大輪咲き。
■カーネーション(プラドアクイラ)  ナデシコ科/多年草/原産:地
中海沿岸/母の日に贈る花として長く親しまれている花。品種が豊
富で花持ちが良く、菊やバラと並び世界的に需要が多い。日本へは
オランダから渡来し「オランダセキチク」と呼んでいた。スペイン・モナ
コ・ホンジュラスの国花。「プラドアクイラ」は爽やかなライトグリーン
の花色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/652.jpg
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