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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2009.08.21

vol.43  − 夏の終わり −

庭のサルスベリ(百日紅)が漸く咲き始めました。
蝉の声が蜩(ひぐらし)に変わると、自然が夏の終わりを告げていることを知ります。
確かに、朝晩は虫の音が聞こえてきます。今週の花材にも栗を揃えて戴きました。

この季節の変わり様が、我が国固有の文化を形成するうえで大きな役割を果たしてきました。
現代に生きる我々は、紫式部や和泉式部らに始まり、室町時代に確立されたといわれる我が国独特の美意識を、歌、絵、音楽(音楽に関しては明治政府の政策によって壊滅的な打撃を受けてしまったと言われていますが…)、そして自然感を受け継いで、今に至っています。
音の無いことにでなく、川のせせらぎや鹿威しの「音」に静寂を感じたり、
或いは描かれているところでなく、絵の余白に存在や主張を感じるのは、
先人の築いてくれた美意識の遺伝なのでしょう。
そのようなところに美を感知した先人達の鋭さは、どのような過程から得られたものなのでしょうか。
彩色が剥落して素材が剥き出しになった仏像や建物に簡素な美しさを見出し、
寿司屋さんの白木の一枚板のカウンターに清潔な美を感じるのも、
その背景にある「美」への認識は同じではないでしょうか。

お盆休みの一日、久し振りにレコード屋(今は何と言うのでしょうか?)に出掛けてみました。
当然ながら、昔、頻繁に通っていた頃とは演奏者の顔触れが一変していました。
当時は不朽の芸術家と言われていた、ヴァイオリンのダヴィッド・オイストラフ、歌手(バス)のポール・ロブソンの邦盤(この言い方も正しいかどうか分かりません)が一枚も見当たりませんでした。僅かに輸入盤で残っているのみでした。ジャズでもその傾向は同じでした。当時、史上最高と謳われていたドラムのバディ・リッチもありませんでした。
勿論、指揮者のヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ヴァイオリンのヤッシャ・ハイフェッツ、ジャズではチャーリー・パーカーやビリー・ホリディは置いてありました。
作曲家ではなく演奏者にとっては、不滅、或いは不滅の美という言葉で代表される「時代」の壁は、とてつもなく厚いのだと言うことを知りました。

只、何を美しいかと感じる美意識は変わらないのでは、と思うことも、この休日に感じました。
勝田尚哉氏の「築く」という写真が紹介されていました。
http://konicaminolta.jp/plaza/schedule/2009august/gallery_c_090817.html(「コニカミノルタプラザ」HPより)
これを見た瞬間、私は横山 操の「塔」と須田国太郎の「校倉(乙)」を連想しました。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■栗
ブナ科 落葉高木
原産:日本
5〜6月頃に花が咲き、秋にイガで覆われた実をつける。実が成熟すると、自然にイガが裂けて栗があらわれる。材は腐りにくく、建築材や家具、枕木などに使用。
■柏葉アジサイ
ユキノシタ科 落葉低木
原産:北米
《名前の由来》葉に切れ込みがあり、柏の葉に似ていることから。
円錐状の大きな花穂が特徴で、ピラミッドアジサイとも呼ぶ。秋の紅葉も綺麗で、庭木としても人気種。一重咲き、八重咲きはあるが、花色は白のみ。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/43_zoom1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)



【秘書室】
■トクサ
トクサ科 シダ植物
原産:日本 北半球温帯
《名前の由来》木や金属などを研ぐのに利用したことから(=砥草)。
茎は直立し中空で節があり、極細の竹のような草姿。葉は退化し、節の部分で白色の鞘状となっている。茎の表面のざらつきを利用して、金属や木材の研磨に利用。
■クルクマ(ホワイトカップ)
ショウガ科 球根植物
原産:熱帯アジア
《名前の由来》根茎に含まれる黄色のクルクミン色素を染料として利用していたことより。アラビア語で「黄色」を意味するKurkumから。
幾重にも重なり花弁のように見える部分は花ではなく苞。苞の中に小さな花が咲く。暑さに強く、花持ちが良い。「ホワイトカップ」は白色で涼しげな花色。
■ベアグラス
ユリ科
細い線状のグリーン。今回はトクサを束ねるために使用。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/43_zoom2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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