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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.08.26

vol.379  − 期 (きする) −

二十四節気では処暑(しょしょ)です。ここ信夫の里は、朝夕に、忍び寄っている秋の気配を感じます。
日の出は遅くなり、日の入りも早くなってきました。

夜半過ぎ、蟲(むし)の声が聞こえます。
百日紅(サルスベリ)の紅もそろそろ見納めです。

晩夏の夕焼(ゆうやけ)、赤銅色(しゃくどういろ)の夕陽が山河や街並みをセピア色に染めています。
日差しは既に秋です。
澄みきった高い空には既に秋の装いの雲が浮いています。芒(ススキ)も道端に顔を出しています。
只、蝉の鳴き声は、主役は油蝉(アブラゼミ)、熊蝉(クマゼミ)、蛁蟟(ミンミンゼミ)で、蜩(ヒグラシ)はまだです。

死者への供養である盂蘭盆(うらぼん)を終えて、今は亡き人々に思いを馳せていた方々が多かったと思います。生きている人への敬意が御中元、暑中・残暑見舞です。
そこに込められているのは、生死を別にして、縁(ゆかり)のある人々との想いの交わり合いです。

人間の営みは、他者への思い遣りで繋がっています。それは、生きていくうえでの“当たり前”の想いです。
そこには、市井(しせい)に暮らす人々のささやかな矜持(きょうじ)も見て取れます。

戊辰の役(ぼしんのえき)、第一次世界大戦、大東亜戦争、戦のなかで亡くなられた方々は、自分の死が決して無駄ではないと信じて逝(い)った筈(はず)です。
戦後、兵として直(じか)に戦った人々ほどそのことに寡黙でした。己の世代は、そのことを実感として知っています。

今という時代、平和や体験を語る記事や映像を眼にする時、体験してない人の主張が声高(こわだか)であればある程、やや違和感を覚えます。
戦後の生まれで、その後の歩みの一端を直接味わってきた己だけに、一層、伝えることの難しさ、言の葉(ことのは)の届かなさを痛感します。
時の移ろいは、意識しているか無意識かは別にして、バイアスによって“事実”とは少し別な形になってしまいます。      (vol.246 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=283

         逃げないんですかどうして?
         下唇を噛む(ふりをする)炎昼(えんちゅう)のあり
                                       睫攘忙

原発事故現場の近く、福島の地で生きることを決意した毅然(きぜん)とした、しかし黙して語らない作者の覚悟と複雑な心中(しんちゅう)を記した作品です。踏み留まった大多数の県民の心中を代弁しているこの歌の作者は、今、どうしているでしょうか。頑張って欲しいと心から願っています。

世間では、原発事故は終わっています。原発の事故現場で働いている人々は勿論ですが、地域の医療を再建し、県民の健康を見守っていくという事業を続けている本学の役割は、今が正念場です。

“いつ事業は終わるのか”、“避難地域の医療の予算は一体どの位掛かるのか”と、語られるのを聞く時、身を粉にして務めている職員を率い、志を持ってこの事業に参加して下さる医師を全国から必死で募(つの)っている己の立場からすると、勁(つよ)い気持ちを保つのに努力が要(い)ります。

“歳月は人間(ヒト)を変える”を実感します。こうして時は移ろい、人やモノが変わっていくのです。

“この世は雑音だらけ、しかし、声は聞こえない。何故なら、耳を傾けようとする者はほんの一握り“、こんな言葉が胸に迫ります。

人間(ヒト)には努力してもどうにもならないことがあります。我々は矛盾だらけの中で生きています。医療と同じように、世の中には人事(じんじ)の及ばない領域があるのです。
それを飲み込んで努力して、その後は天命に委(ゆだ)ねる。これが、人間としての最善の努力の有り様です。

人事と天命の挟間(はざま)がはっきりと見えた時、諦(あきら)めがつきます。

今週の花材は、晩夏に別れを告げるような赤が主役です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ホオズキ    ナス科/多年草/赤い提灯
がぶら下がったような姿が可愛らしい。提灯の
ような袋は咢で、その中にオレンジ色の丸い実
がある。 お盆の頃に各地でホオズキ市が開か
れ夏の風物詩。
■ディスバッドマム   キク科/多年草/スプ
レー菊の脇芽をかいて一輪に仕立てる菊。ダリ
アのように豪華でボリュームがある。
■サンダーソニア    ユリ科/球根植物/細
い茎にベル型の小さな花が連なって咲く。花色
はオレンジで、 ランプを灯したような可愛らしい
花姿。原産地でクリスマスの頃に咲くことから別
名は「クリスマスベル」。
■ピンクッション    ヤマモガシ科/針山に待
ち針を刺したような個性的な花。 待ち針のよう
に見える一つひとつが雄しべ。
■ヒペリカム   オトギリソウ科/半常緑低木
/花期は初夏で黄色い花が咲く。 主に花後の
実を鑑賞するものとして流通。実色は赤系を中
心に、緑や茶色もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3791.jpg

【秘書室】
■千日紅(センニチコウ)    ヒユ科/一年草/《名前の由
来》花色が長く1000日は色褪せない、という意味から/ドラ
イフラワーにも適し、花色も綺麗に残る。
■カーネーション〔ノビオバーガンディ〕    ナデシコ科/多
年草/母の日の花として古くから親しまれる。菊、バラと並び
世界的に生産量の多い主要花。 「ノビオ」シリーズは紫やボ
ルドーを基調とした覆輪が綺麗な品種。
■セダム   ベンケイソウ科/600種以上ある多肉植物。耐
寒性・耐暑性があり、乾燥にも強くグラウンドカバー等にも利
用される。切花で流通する品種も丈夫で長く楽しめる。
■ピンポン菊〔オリサバ〕   キク科/多年草/ピンポン玉の
ように真ん丸に咲く菊。花持ちの良い菊の中でも特に長く楽し
め、仏事以外でも広く利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3792.jpg

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