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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2009.03.16

vol.25  − 日本の文化〜続々〜 −

この季節は、別れ(旅立ち)と出会いの時です。
夕陽の中に浮かぶ菜の花のように浮き立つ気分と哀しみが交じり、いつも幾分不安や憂鬱な気持ちも感じてしまいます。

庭をみると、そろそろ皐(さつき)の刈り込みの庭が一年中で最も華やかさをみせるときでもあります。
学生時代、多くの庭園を見て廻りました。最初に感動したのが、京都・正伝寺の比叡山を借景とした清楚な庭でした。当時は、訪れる人もなく、時が止まったかのような数時間を過ごしました。奈良と京都の境にある岩船寺も寂れた感じが良くて、浄瑠璃寺との間にある石仏巡りの際によく訪れました。当時は、寺の方がお茶を出してくれた程のんびりしていました。
一方、迫力という点からすると醍醐寺三宝院を雨の時に訪れ、壮大な豪華さを雨が程良く押さえていて圧倒されました。また、苔を見に訪れた西芳寺内を歩き廻っていて、たまたま見た山際の石組みに魅入られました。後日、夢窓国師作の枯山水庭の原点であると知ったとき、自分の無知さと、良い作品はどんな無知な人をも魅了することを知りました。金地院の庭も壮大さという点では一つの典型でしょう。

庭好きが高じて重森三玲の実測図のついた日本庭園の百科辞典風の10冊以上あったかという本のシリーズ(書庫が手狭になり、売却してしまい書名は忘れてしまいました)を買った程です。見た目と地図で確かめた実際の広さの乖離に驚いたりして楽しんでいました。

庭を鑑賞する時、座ってみる日本庭園の一つの特徴に、建物の柱や障子を額縁のようにして景色を切り取る先人の手法に感じ入ってしまいます。
障子で縁取った大徳寺の高桐院、柱で両端を切り落とした感じの京都の円通寺、そして吉野窓で庭を切り取った祇王寺(http://www.giouji.or.jp/top.html)などが頭に浮かびます。
障子をうまく使った意匠として、ホテルオークラ東京の本館ロビー左隅にある窓の障子に現代の粋をみることができます。竹葉が障子にシルエットとなってそよいでおり、みる人を惹きつけているのも同じ感覚による匠の技なのではないでしょうか。

借景という手法も我が国特有なのでしょうか。前述した正伝寺、円通寺、あるいは京都の無鄰庵などが心に残っています。
只、近年久し振りに訪れたいくつかの庭が、以前と比べると“荒れた”感じになっており、以前とは別の庭の観を呈しているのが、気になります。プロの手を入れることのできない(?)管理者の経済的苦境のせいなのか、あるいは手抜きのせいでしょうか。
庭は、良くも悪くも、時とともに変わることを最近実感しています。

音楽で春と言えば、ストラヴィンスキーの「春の祭典」があまりにも有名です。我が国では、宮城道雄の「春の海」が浮かびます。この2曲も、気候の厳しさゆえの表現の仕方での彼我(ひが)の差異をはっきりと示しているように思います。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■ファレノプシス
ラン科
原産:熱帯〜亜熱帯
《名前の由来》ギリシャ語のphalaina(蛾)と
opsis(似る)に由来。花姿が蛾に似ていること
から。
日本では花姿が蝶に似ていることから“胡蝶
蘭”という。
花言葉「幸せが飛んでくる」「かわらぬ愛」
贈答用の高級花として知られ、開店開業祝い
や就任祝い、受賞祝いなどに欠かせない花。
熱帯原産の花なので寒さには弱いが、通常は
花持ちが良い。

■ユーカリテトラゴナ
フトモモ科 常緑高木
原産:オーストラリア
別名:ガムの木
シルバーリーフで芳香がある。
葉から取れる精油は殺菌作用、鎮痛鎮静作
用があり、アボリジニも利用していた。
現在もお茶やアロマオイルなどで広く利用され
る。
日本には明治に渡来。
ドライフラワーにしてリースの材料などにも人
気。



【秘書室】
■フリージア
アヤメ科 球根植物
原産:南アフリカ
和名:アサギスイセン
《名前の由来》発見者が親友のフレーゼの名
前にちなんで名づけた。
甘い芳香が特徴の春の花。
日本には明治中頃に渡来。
黄色(ポートサルート)・白(アンバサダー)

■カスミ草(アルタイル)
ナデシコ科
原産:地中海沿岸・中央アジア
花束などの添え花として根強い人気がある
花。
明治時代に渡来し、日本で作付けされるよう
になったのは昭和50年頃から。
アルタイルは茎が硬く折れやすいが、花弁数
が多く日持ちする品種。
他にミリオンスター、ホワイトフェアリー、雪ん
子などの品種がある。

■ピンポン菊(セイヒンギス)
キク科 多年草
まんまるに咲き、名前のとおりピンポンのよう
な可愛い菊。
セイヒンギスはグリーン。
他に白、黄色、ピンク、紫などの花色がある。



(写真:伊藤俊一 氏)

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