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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2009.02.23

vol.23  − 日本の文化 −

2月も最後の週、三寒四温の日々です。大学(市街地より高台にあり、気温も低い)の外には、一足早く、名残の月ならぬ湿った雪が降っています。市街地にある自宅を出たときには、外は雨でした。

先年、国際学会での会長講演で、英語圏でない日本人の苦労や文化の違いが腰痛に与える影響に焦点を当てて「International collaboration beyond the culture gap」という話をしました。準備をしていて、改めて日本の文化的特異性を認識させられました。国際的な活動の場では、我々はこの違いを違いとして受け入れて、逃げずに行動する必要があるように感じます。

刀剣に対する美意識も彼我(ひが)における差異の一つでしょう。子供の頃、父が正座して日本刀をじっと見詰め、目釘を抜き、鎺(はばき)を外して打粉を打って、長い時間を掛けて手入れしているのを側で見ていました。この一連の所作は、今にして思えば心の静謐さを得る手段だったのでしょう。考えて見れば、武器としてよりも美術品として、そして権威や霊的な象徴として刀剣をみている国民は我が国だけではないでしょうか。その理由は何に由来するのでしょうか。
子供の時に初めて刀の手入れをさせてもらった時、古刀の軽さに驚きました。新新刀や現代刀の重さとは対照的でした。古刀は、錆びて研ぎを繰り返している為でしょうか。あるいは材質が違うのでしょうか。また、刀の端正な優しさも強烈な印象として残りました。美術館等でガラス越しに得る印象とは随分と違う感覚でした。

喧騒な日々、懸案事項に自分なりにベストを尽くして取り組んでいるのですが、「底の抜けた桶に水を汲む」感がしばしばあります。自分の無力さと共に「どんな人間もそれまでの人生によって形成された自分を変えることは難しい」ことを実感させられています。こんな時、今の自分に刀剣鑑賞に心の安寧を求める程の余裕も無いのが情けない限りです。

今週の花に、木瓜があります。部屋は既に春到来です。私自身は木々の花が好きですが、部屋や花器の制約があるためアレンジメント主体になってしまいます。久し振りの“生け花”です。

「立ち返る年のあしたを朱ふかく咲きてひそけし寒木瓜の花(大岡博)」


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■木瓜(ボケ)
バラ科 落葉低木
原産:中国
渡来当初は薬木として利用される。
明治大正になってから観賞されるようになり、庭木や盆栽として人気がある。
切花でも花持ちが良く、長く楽しめる花。

■スカシユリ(ディメンション)
ユリ科 球根植物
《名前の由来》花びらの間が透いていることから(透百合)
日本はユリの宝庫といわれ、約15種が自生している。
19世紀にヨーロッパへ渡り多くの品種が生み出された。
スカシユリはアジア原産のユリを交配してつくられたもので、花は小ぶりで香りはほとんどない。(アジアチックハイブリッド系)
ディメンションは赤黒い花色。




【秘書室】
■カトレア
ラン科 多年草
原産:中南米
《名前の由来》着生ランの栽培に初めて成功したイギリスの園芸家キャトレイの名から。
“洋ランの女王”と呼ばれる花。
小輪系〜巨大輪系まで品種が豊富。
品種ごとに開花時期が異なるので一年中流通している。

■黒目柳
ヤナギ科 落葉低木
ネコヤナギの変種。
ネコヤナギは猫の尻尾のような銀白色のふわふわした絹毛の花穂をつけるが、
黒目柳は花穂が暗紅色〜黒で、枝も赤みを帯びている。

■スプレー菊(ロリポップパープル)
キク科 多年草
ロリポップはスプレー咲きのピンポン菊で小さいダリアのような花姿。
パープルは鮮やかな赤紫色。



(写真:伊藤俊一 氏)

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