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理事長室からの花だより

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2009.02.16

vol.22  − 出逢いと絆 −

この歳になると、自分の人生航路での出逢いや絆を振り返るときがあります。
考えてみれば、「運命的な出逢い」などというものはなくて、出逢った後の、お互いが相手を信頼しての長い日々の営みの積み重ねの結果が「運命的な出逢い」を作っていくのではないでしょうか。
スウェーデン滞在中に、自分達の約20年前の出逢いから今までを顧みて、そんな話を友と語り合いました。そんな友だから、私の愚痴にも「No decision is worse than wrong decision.ダメな決断でもないよりはマシ」と言ってくれるのでしょう。こんな言葉を聞くと、お互いに築き上げてきた絆の強さを感じることができます。

出逢いは過去の良い想い出ですが、想い出したくないことでも、今の年齢だから理解出来て、良い想い出として昇華出来ることもあります。
父は、生涯何も語りませんでしたが、戦後の一時期荒れた生活を送っていました。酔いつぶれた父を迎えに、翌朝4時頃、自転車を引きながら母と一緒に何度か他家へ行ったことがあります。そんな時、母は何も言いませんでした。当時、私はそんな父を軽侮(けいぶ)していました。今の自分には、当時の父の無念さが痛いほど分かります。母は父の無念さを知っていたからこそ、生涯子供にはその事を語らなかったのでしょう。絆があったから耐えられたのでしょう。

私は香月泰男の絵に、いつ頃からか強く惹かれるようになりました。言葉では表せない戦争の残酷さと哀しみを描いたシベリアシリーズ、これとは対照的な明るい郷里の自然を描いた絵は、彼の心の裡からの、慟哭のような気がしてなりません。
言葉では表現できない「怒り」、「辛さ」、「切なさ」、あるいは「哀しさ」というのが世の中には存在しています。芸術家はそれを別の形で表現しています。では、私のような凡人は何で表現すれば、それが他人に伝わるのでしょうか。
山口県立美術館と香月泰男美術館にある香月泰男のコレクションは、見る度に“人生航路”の重さを考えさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


■ 山口県立美術館
http://www.art-museum.pref.yamaguchi.lg.jp/artmuseum/cgi-bin/author
(上記ページ「作家一覧」より、「香月泰男」をクリックして、コレクションをご覧ください)

■ 香月泰男美術館
http://www.city.nagato.yamaguchi.jp/~kazukiyasuo/



今週の花


【理事長室】
■カンパニュラ
キキョウ科
原産:ヨーロッパ
別名:フウリンソウ、釣鐘草
《名前の由来》ラテン語の「小さな鐘」を意味す
ることから
世界で約300種あり、うち、日本で自生してい
るものは4種。
風鈴や鐘のような花姿で、下向きや横向きで
咲く可愛い花。
紫の品種が多いが、ピンクや白もある。

■スチールグラス
ユリ科
原産:オーストラリア
ワイヤーのように細く長く硬い葉。
水揚げがよく、非常に長持ちする。
シャープなラインを出すには最適の花材。

■ドラセナ(紅光)
リュウゼツラン科 常緑低木
原産:熱帯アフリカ
紅光(ベニヒカリ)という品種名の通り、紅葉し
たように綺麗な色の葉。
幸福の木や青年の木、ミリオンバンブーもドラ
セナの仲間。



【秘書室】
■ラナンキュラス
キンポウゲ科 球根植物
原産:西アジア・トルコ地方
《名前の由来》ラテン語のrana(蛙)に由来。自
生地が蛙のたくさんいる湿地であることによる
今回は、大輪品種のコートシリーズを3色ミック
スで使用。
コートシリーズは8cm程の大輪になる品種。
ふわふわと柔らかい花弁が幾重にも重なり、
バラと見まごうような花姿になる。
他、大輪品種は10cm以上になるローヌシリー
ズ、8〜10cmのカルノシリーズなどがある。

■ドラセナ(紅光)
(※理事長室分コメントをご参照ください)


(写真:伊藤俊一 氏)

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