HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2015.06.26

vol.322  − 弔 (とむらう) −

飛行機のドアが開くと、そこは祖国、梅雨(つゆ)でした。梅雨は我が国の山河を豊かにし、人間(ヒト)の心を嫋(たお)やかに育んでくれている、天空からの贈り物です。

2週間の国内外の出張、気がつけば、田圃(たんぼ)は早や、緑の絨毯(じゅうたん)と化していました。
強烈な日差しの下(もと)、風に戦(そよ)ぐ苗穂が、生命を宿しているかのように躍動しています。

梅雨寒(つゆさむ)、梅雨雷(つゆかみなり)、梅雨曇り(つゆぐもり)、梅雨籠(つゆごもり)、梅雨冷え(つゆびえ)、梅雨闇(つゆやみ)、この雨空は、我々に抒情豊かな様々な語彙(ごい)を与えてくれてきました。

紫陽花(アジサイ)が雨に濡れ、色々な思い出が積み重なっている梔子(クチナシ)も咲き出していました。
         (vol.35 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=55
         (vol.134 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=167
         (vol.181 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=215
この香り、若かった頃の様々なことどもが走馬灯のように甦ってきます。

鶯(ウグイス)、郭公(カッコウ)、時鳥(ホトトギス)、庭の木立の中、時をおかずに、鳴いています。

米国出張の直前、北海道、稚内市に行ってきました。念願が叶いました。
荒涼たる原野、灌木(かんぼく)と笹で覆われた丘陵、己のような俗人でも、そこに“神”を感じます。

砂漠での夜、星をみていると神の存在を感じる、ということを読んだ記憶があります。この景色もそれに通ずるものがあります。
近藤伍壱によるアイスランドの風景写真が撮り出している、何もない荒涼さとも違います。風が吹き荒(すさ)んでいても、色彩豊かで、地形になだらかな起伏が優しさを生み出しているからです。

一時覗(のぞ)いた日差しの下、開放感あふれる広い眺望(パノラマ)、そこに、広大な牧場がありました。人間の営々とした営みです。人間の偉大さが実感できます。
寒風のなか、岬の公園、平和の象徴とされるアルメリア、別名ハマカンザシの桃色、そして西洋タンポポの黄色、トキシラズ(雛菊)の白と紫、可憐な花が咲いていました。

「皆さん、これが最後です。さようなら、さようなら」、昭和20年(1945)8月20日早朝、真岡郵便局の交換業務をしていた女子職員9名の悲劇が起こりました。
このことを今に伝える「九人の乙女の碑」、樺太島民の慟哭(どうこく)が聞こえてくる「氷雪の門」、大韓航空機撃墜事件(1983)を記念する「祈りの塔」、戦後生まれの人間でも、一時、ここでは祈りの人になります。

         ・・・・・
         山河  破れ砕けて  風  絮(わた)を抛(な)げ
         身世  漂い揺れて  雨  萍(うきくさ)を打つ
         ・・・・・ 
         人生  古(いにし)えより  誰か死なからん (vol.66)
         丹心(たんしん)を留取(しゅうしゅ)して
         汗青(かんせい)を照らさん
                                     文天祥
         (vol.66 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=92

祖国の山河は粉々にされ、風に吹きとばされる柳の絮のようです。この身も同じです。人間いつかは死ぬ、どうせ死ぬなら敵には屈しない。死後、我が志だけは歴史に残そう。真に、彼女達の志です。

そんななか、草原の中を起伏に沿って真直ぐ延びているフットパス、ホタテの貝殻を敷いてある白い歩く小径(こみち)、心に微笑み(ほほえみ)を運んでくれます。
海岸沿いや山野に水平線まで続く舗装路、荒れ狂い、岸に打ち寄せている大きな白波、人間を威圧するかのような風の音、人間の小ささと無力さをも感じざるを得ません。

そして、最果ての地で志を持って頑張っている医療人の皆さん、己も全国で最も医療密度の低い地域で働いた経験があるだけに、心から尊敬の念を覚えました。
医療人の端くれとして、今の自分に出来ることはないか、あるとしたら何か、考えました。そして今も考えています。

今週の花材は、両室とも、この時季に相応(ふさわ)しい嫋やかさと静謐(せいひつ)さを感じさせます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■バンクシア〔フーケリアーナ〕   ヤマモガ
シ科/個性的で存在感のある花が特徴。80
種あるうち1種を除きオーストラリアのみに分
布。現地では庭木として利用される。
■ススキ〔糸ススキ〕  イネ科/多年草/葉
が5mm程のとても細いススキ。葉が密に茂っ
て立ち上がり、あまり広がらず園芸にも適す。
■トルコギキョウ〔ロジーナラベンダー〕   
リンドウ科/多年草/花の大きさや咲き方、
色合いが多岐にわたり、品種がとても豊富。
「ロジーナ」シリーズは中輪八重咲で、バラに
似た花形を追求した品種。「ラベンダー」は上
品な淡紫色。
■キイチゴ   バラ科/半落葉低木/ラズベ
リーやブラックベリーなどの総称で、木になる
イチゴ。春に苺に似た小さな花が咲く。ヤツデ
のように切れ込みの深い葉が特徴。
■ピンポン菊〔アブロン〕   キク科/多年草
/真ん丸に咲く可愛い菊。日持ちのする菊の
中でも特に長く楽しめる品種。「アブロン」は赤
茶色。
■エリンジュウム〔オリオン〕   セリ科/多
年草/長く鋭い苞と松かさのような花が特徴。
成長とともに青みを帯びる。非常に花持ちが良
く、ドライフラワーにも適す。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3221.jpg

【秘書室】
■オンシジュウム〔ハニーエンジェル〕   ラン科/蝶が無数に舞い飛ん
でいるような花姿。約400種が熱帯亜熱帯地域に分布する蘭。「ハニー
エンジェル」は花弁に斑の入らない綺麗な花色の品種。
■クルクマ〔エメラルドチョコゼブラ〕   ショウガ科/球根植物/幾重に
も重なり花弁のように見える部分は苞で、その中に小さな花が咲く。暑さ
に強く夏でも花持ちが良い。「チョコゼブラ」はグリーンとチョコ色。
■利休草(リキュウソウ)   ビャクブ科/茎の先端が蔓状になるしなや
かで涼しげな葉。江戸時代に薬用として渡来。根にアルカロイド系の成分
が含まれ、駆除剤などに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3222.jpg

▲TOPへ