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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2015.06.12

vol.321  − 著 (あらわす) −

照りつける日差しの下、街中の移動、ビブス(脱着容易なカラーゼッケン)を着用して、黙々と、道端を清掃している人々に出会います。背中には我が国を代表する企業名などが記されています。

この光景、自営業者が多く、隣組や宗教が人々の鎹(かすがい)となって、道端、入会地(いりあいち)、里山等を管理していた昔と、会社や組織が集(つど)いの中心である今、相互扶助の有り方が劇的に変わったことを教えてくれます。

宗派により異なりますが、国内外で、キリスト教系の団体や大富豪による慈善事業の展開を目にしたり、聞いたりします。
その背景には宗教の理念があるように感じます。

カナダで修業時代、お年を召した品のある御婦人方が、ボランティア活動として、病院内でコーヒーのワゴンサービスをしていました。
当時、日本ではあまり目にしたことが無く、写真を撮らせてもらいました。どんな人々が、どんな思いで行っているのか恩師に尋ねた程です。

我が国ではどうでしょうか。
古くは行基、光明皇后、近世に入っても、本県に縁(ゆかり)のある人達でみてみると、保科正之、松平定信、近くは瓜生岩子などが貧民救済を始めとした今に伝えられている社会事業を行っています。
庶民の間には講(こう)などの相互扶助組織があり、それは今も続いています。

キリスト教の集団と比べると、仏教の活動が目立たないのはどうしてでしょうか。
恐らく、陰徳の思想、“知られざるを憂えず”という儒教の教えが関係しているのではないでしょうか。

“花だより”、書き続けていると、言葉の使い方に関心が向いてしまいます。
一番、心砕くのは音読みと訓読みの使い分けです。構えることが無く、押し付けずに、音として響いてくる言葉に情緒を感じて読んでもらう為に、訓読み(大和言葉)での表現を使うように心掛けています。読み手に与える“固さ”が、訓読みと音読みでは違うからです。

訓読みは、発音、概念、文法も全く異なる中国語の漢字を受け入れ、それを大和言葉で読むことに始まりました。
その後、我々の祖先達が独自の感性を加えながら、発展させて、今も尚、変化し続けているのが日本語です。
我が国の訓読みは、6世紀半ばには始まっています。日本最古の歴史書である古事記は、訓読みも使って書かれています。

訓読みに拘(こだわ)るのは、音の響きが柔らかく、そこに穏やかな優しさや淑(しと)やかさがあるからです。
音読みには、硬い感じがあり、読み手に緊張を与える気配があります。只、音読みには、1言で、相手に意味が伝えられるという、機能性があります。

「暮らし」と「生活」、「営(いとな)み」と「仕事」、受ける感じが大分違います。
町の読み方、地域差があるようです。西日本から南では「チョウ」が、東日本から北で「マチ」が多いというのです。

数字の読み方も、話し手は、無意識に、時と場に応じて使い分けています。
音読みでは、イチ、ニ、サン…です。一方、訓読み(和語)ではヒ、フ、ミ…です。
訓読みは、日本語に多様性、精微さ、そして豊かさを与えています。これからも、時代とともに変化し続けていく筈です。

我が国は、大陸の端にある為、あらゆる海外の文化が交り合う場に位置しています。そんな立ち位置が、「和」の文化を生みました。
日本文化は、他の文化圏に影響を与えてもいます。例えば、着物、欧米では洒落た部屋着として今も愛用されています。フェルメールやモネの画(え)に既にそれを見て取れます。
そして、和の建築の思想は、欧米の近代建築の創造に大きな影響を与えました。
         (vol.318 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=357


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


※編集註:海外出張のため、今回は「今週の花」活け込み前に原稿を執筆しております。お花についてのコメントがありませんことをご了承ください。
あわせて、来週は休載いたします。6月26日(金)より連載再開いたします。

今週の花


【理事長室】
■ナナカマド   バラ科/落葉高木/《名前の由来》カマド
に7度入れても燃え残るくらい燃えにくい事からという一説
/花期は初夏で1cm程の小さな花が集まって房状に開
花。花後5mm程の実をつけ、秋に熟すと真っ赤に色づく。
■ユウギリソウ〔フォレストブルー〕   キキョウ科/多年草
/小さな花が密集して1つの大きな花のように見える。一つ
ひとつの花は筒状で雄しべが長く突き抜け、花房に霞がか
かったように見える。「フォレストブルー」は濃いブルー。
■トルコギキョウ〔アンバーダブルワイン〕   リンドウ科/
多年草/花の大きさや咲き方、色合いが多岐にわたり、品
種がとても豊富。「アンバー」シリーズは、琥珀を想わせる
ヨーロピアン調のシックな色合い。独特の質感の品種で、花
傷みが少なく長く楽しめる。「ダブルワイン」はボルドー色の
八重咲。
■ピンポン菊  キク科/多年草/真ん丸に咲く可愛い菊。
日持ちのする菊の中でも特に長く楽しめる品種。
オレンジ「ジェニーオレンジ」ワイン「ロピポップパープル」
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3211.jpg

【秘書室】
■カラー〔ピンクハーツ〕   サトイモ科/球根植物/《名
前の由来》苞がワイシャツの襟(カラー)に見えることから
/花弁のように見えるメガホン状の部分は苞で、その中
に棒状の花序がある。
■アンスリュウム〔シンシア〕   サトイモ科/常緑多年
草/造花と見間違うようなツヤツヤした苞が特徴の南国
の花。花は棒状の部分で、主に苞を鑑賞するため非常に
長く楽しめる。
■ハイドランジア  ユキノシタ科/落葉低木/日本のア
ジサイがヨーロッパに渡り品種改良された西洋アジサイ。
日本原産の紫陽花に比べ、花が大きく華やかな印象。
ドライフラワーにも適し、リース等にも人気。
■レモンリーフ   ツツジ科/常緑低木/《名前の由来》
葉形がレモンの形に似ることから/水揚げが良く、ブーケ
等の添え葉として人気のグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3212.jpg

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