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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2015.03.20

vol.310  − 励 (はげます) −

春です。冬から春になっていく、この移ろいゆく時の流れに心寄せるのが、日本人です。
寒気は緩み、山河が賑やかです。鳥の声、早朝から、一際、響きます。瀬音も軽やかに耳に響きます。
庭の木蓮(モクレン)や桜、木の芽が膨らんできています。

         折節(おりふし)の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ
                                           徒然草19段

季節の変わりめ、いつもこの言の葉(ことのは)が脳裡を過(よぎ)ります。
遠目、吾妻の嶺々(みねみね)、朝陽のなか、霞んでいます。「春はあけぼの」を実感します。

今年も、多くの学生が巣立っていきます。
己はと言えば、昭和46年(1971)に大学を卒業後、44年が経とうとしています。

         学問は、ただ年月長く倦(う)ずして怠らずして、励みつとむるぞ肝要
                                                 本居宣長

         われ常に学びつつ老いぬ
                        ソロン

いつの時代でも、何事も、「愚直なる継続」が王道です。経験の切り売りは、駄目です。
海外での修業中、英語の拙さ(つたなさ)を莫迦(ばか)にされ、周囲から「無能」の烙印を押されました。
恩師専用の手洗所(トイレ)で悔し涙を流していた時、「努力出来るのも才能の一つである」、と恩師が励ましてくれました。
        〔理事長室からの花だより〕
         (vol.250 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=287
        〔学長からの手紙〕
         (No.36 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/036.html
ある時期、人生のすべてを脊椎・脊髄外科に捧げました。

嬉しい時、悲しい時、切ない時、そして思いあぐねている時、人間(ヒト)は酒を友にすることがあります。
映画「鉄の女の涙」で、サッチャー首相はスコッチウイスキー(フェイマス・グラウス)とジン(タンカレー)を嗜(たしな)んでいます。晩餐会、彼女は勧められたワインを断わり、ウイスキーを頼んでいます。
この遣(や)り取り、彼女が庶民の出である事を然り気(さりげ)なく教えてくれています。

映画「評決」、医療裁判に就(つ)いての代表的な小説の一つです。
主人公であるアルコール依存症の弁護士の飲む酒は、決まってアイリッシュウイスキー(ブッシュミルズ)です。一方、訴えられた大病院の弁護団の愛飲酒は、テネシーウイスキー(ジャックダニエル)です。ウイスキーという小道具を使って彼等の暮らし向きを暗示しています。ここでは、ウイスキーが名脇役です。

ウイスキー、老生(ろうせい)にも思い出があります。若い時、カナダで修業しました。そこで、カナディアンウイスキーの存在を知りました。飲み易さと風味から好きになりました。
カナダのウイスキーといえば、地元の人に“シーシー(CC)”と言い習わされて、愛されているのが「カナディアンクラブ」です。この瓶(びん)をみると、医療制度改革で廃止されて今は無い、修業していた病院の雰囲気、従業員と擦れ違う際の挨拶と笑顔、そして街の香り、風など、当時の事どもが一気に甦り、懐かしさが胸にひたひたと押し寄せて来ます。

ウイスキーを主題とした映画と言えば、スコットランドを舞台にした「天使の分け前」です。出会いの大切さと不思議さ、最後の場面は心に染(し)みます。

敬愛する知人に招かれて、九州は中津に行ってきました。10年振りの来訪でした。
今回は、耶馬溪(やばけい)に案内してもらいました。
この時季の山の辺(やまのべ)、桃源郷とはこういうところかと改めて思いました。

学生時代、臼杵(うすき)の石仏を訪れた時、高台からみた農村風景に、我が国の原風景をみました。
         (vol.47 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=72
その後、地面に置かれていた頭部を元の位置に戻した石仏を拝観する為に再び訪れました。
その時にも、変わりつつはあるものの、同じ感慨を抱きました。

今、野には、和水仙(ワズイセン)、寒椿、紅梅、白梅、菜の花、そして夏蜜柑(ナツミカン)、その側を急流が瀬音を立てて流れ下っています。

今週の花材は、執務室は巣立ち行く者の凛々しさを、秘書室はそれを送る者の温かな眼差しを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■グラジオラス〔エッセンシャル〕   アヤメ科/球根植物/《名前の由
来》葉の形に由来し、ラテン語で“剣”を意味する語から/園芸品種は1
00種を超え花色が豊富。漏斗状の花が、花茎いっぱいに次々と開花
する。
■ダリア〔熱唱〕  キク科/多年草/《名前の由来》スウェーデンの植
物学者ダールの名より/品種がとても豊富で世界に3万種以上ある。
「熱唱」は赤橙色で生育時の温度により色幅がある。
■アルストロメリア   ヒガンバナ科/球根植物/一本の茎から5〜8
本の花茎を伸ばし先端に花を咲かせる。一つひとつの花はユリを小さく
したような形で、花弁に入る斑が特徴。一番花が終わるころにはわき
枝を伸ばし二番花が開花する。
■アマリリス   ヒガンバナ科/球根植物/花期は4〜6月(秋咲きは
10月)でユリに似た花を咲かせる。スッと伸びた太い茎に花径10〜20
cmほどの花が咲き、一株でも見応えのある花。花色は赤の他、白やピ
ンクに複色品種などもある。
■ドラセナ〔ソングオブスリランカ〕   リュウゼツラン科/日本で流通す
る観葉植物の代表種。葉色や葉姿が様々で約50種。「ソングオブスリ
ランカ」笹のような葉形で新芽にストライプの斑が入る。「コーディライン
レッド」赤葉で本来はコルジリネだが、“ドラセナ”の名で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3101.jpg

【秘書室】
■カンパニュラ〔チャンピオンスカイブルー〕   キキョウ科/多
年草/《名前の由来》ラテン語の“小さな鐘”を意味する語から
/風鈴のような可愛らしい花が連なって咲く。花姿から「釣鐘
草」の別名を持つ。
■チューリップ   ユリ科/球根植物/開花時期や花色花形
など多岐にわたり、8000種以上ある。公園や学校の花壇等
を彩る春の代表花。明るく暖かいと開花し、暗くなると花弁が
閉じる。
■ムギ   イネ科/一年草/コムギ・オオムギ・ライムギ・カ
ラスムギの4種。切花として流通するのは主にオオムギ。ドライ
フラワーとしても利用できる。
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕 (理事長室と同花材)
「サンデリアーナホワイト」は笹のような細長い葉とストライプの
斑が特徴。他に黄味の強い「サンデリアーナゴールド」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3102.jpg

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