HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2015.02.06

vol.304  − 扶 (たすける) −

太平洋と日本海の中間的な気象で、盆地の信夫の里、今が寒(かん)の底です。
田圃(たんぼ)は、一面薄く雪を纏(まと)っています。残雪は凍てつき、歩くのが少し怖くなります。

構内、咲き残った山茶花(サザンカ)が、生垣の奥で深緑の葉陰に縮こまっています。
室内では、フリージアの白が淡い緑葉を背に鮮やかです。ここだけ早春です。

都内、寒椿(カンツバキ)、紅からやや紫がかった紅、寒風の中、痩せ我慢しているように咲いています。
地面には、力尽きたように落花がみられます。

         立春のはやちに出でて街ゆけば
         広き舗道は小起伏あり
                            佐藤佐太郎

週末、北風の吹き荒(すさ)ぶ青空の下、道すがら、閑散(かんさん)とした霞が関界隈(かいわい)に、この歌そのものの風景をみます。

正月の風物詩、東京箱根間往復大学駅伝競走、ひたむきに走っている姿に人々が声援を送っています。
以下は、部外者が知らないだけの事かも知れません。
この行事を裏で支えているであろう、出場出来なかった選手や関係者たちのことです。彼等に、どこかの時点、何等(なんら)かの形で、感謝の気持を表(あらわ)して欲しいという思いです。
整然とした運営、規制に務めている警察や警備の方々、規制に従っている人々を含め、多くの方々が、黙々と、求められる役割を果たしている結果です。
共感や感謝の気持ちを、誰にも分かる形で伝える事は、大切です。想いは、黙っていては仲々伝わらない、というのが年寄の実感です。

生物の世界では、集団の力をみると、エリートだけの集団よりも能力の異なる個体が混ざっている共生集団の方が強いそうです。無言の裡(うち)に、「共に生きる」ことの大切さを、我々に教えています。

殺伐とした世情、全てが満たされた果ての、今の荒涼たる心象風景だとしたら、何と皮肉なことか…。
こんな世情のせいか、本屋さんに行くと、時代小説のコーナーが以前より広くなり、その内容も多様になっています。
何故、時代小説が今を生きる人々を惹きつけるのでしょうか。
時代小説は、我々に、読み終わった後に、忙(せわ)しない街のどこかに置いてきてしまった何かを思い出させてくれるからではないでしょうか。
ここでは、登場する人物は、男も女も真直ぐ(まっすぐ)に生きています。小説は、実際とは違うのでしょうが、身分の縛り、貧しさ、閉ざされた地域社会などの制約が、そこで生きる人々を却(かえ)って実直に生きさせているのかもしれません。

今、昔の貧しさは想像すらできません。
社会保障制度があり、豊かで、気儘(きまま)に生き、働けるから、己の身をどう処していいか分からず、却って窮屈になって生きにくい、と言ったら言い過ぎでしょうか。

鬱屈の多い今という時代、映画「最高の人生の見つけ方」は、‟現代の時代劇”です。
余命を宣告された男達が、死を意識して残りの人生を埋めていく話です。そこには、微笑をもたらすユーモア、友情の大切さが溢れています。
時代小説とどこかで繋がっているように感じます。こんな世情だからこそ、時代小説やしみじみと心に残る映画が、今、人々に求められているのではないでしょうか。

今、道往く時、警備の警察や警備の方々、挨拶をして下さります。挨拶を返してもくれます。会釈一つで空気が和(なご)むのです。

気がつけば、節分(3日)、小枝の先に目刺しの頭を刺して、家の戸口に掲げました。子供の役目でした。
小枝が柊(ヒイラギ)かどうか、戸口のどこに、どう掲げたかは覚えていません。何故、煎(い)った豆を撒(ま)くのか知りません。年齢の数だけ豆を食べました。
闇の中、「鬼は外、福は内」、隣近所から聞こえていました。

今週の花材は、暖かな色彩で、早春の息吹きを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■サンシュユ  ミズキ科/落葉小高木/《名前の由来》
中国名「山茱萸」の音読みから/葉が芽吹く前に、小さな
黄色い花を枝いっぱいに咲かせる。茱萸(シュユ)とはグ
ミのことを指し、グミに似た果実をつける。春を告げる花木
として親しまれる。
■金魚草   ゴマノクサ科/一年草/金魚のようにプク
ッとした花が円錐状に咲き、鮮明な色彩で花色が豊富。
一重咲、八重咲の他、花が杯状に開くペンステモン咲が
ある。切花で流通する高性種とガーデニング向きの小型
種がある。ピンク「メリーランドピンク」黄色「アスリートイエ
ロー」
■コデマリ   バラ科/落葉低木/白い小花が半円球
状に密集し、一つの花のように咲く。枝いっぱいに連な
って開花し、大株に育ったものは見応えがある。花の重
みで枝垂(しだ)れる姿が優雅で、庭木としても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3041.jpg

【秘書室】
■ゼンマイ      ゼンマイ科/シダ植物/
《名前の由来》若芽の丸まっている姿を古銭に
見立てた「銭巻」から/おもちゃや時計の“ゼ
ンマイ仕掛け”の語源。胞子を飛ばすために伸
びる「胞子葉」と通常の葉「栄養葉」がある。山
菜として食用になるのは、栄養葉の若芽。
■ラナンキュラス〔てまりシリーズ〕    キン
ポウゲ科/幾重にも重なる柔らかい花弁が特
徴。「てまり」シリーズは蕾が手毬に似た香川
県の育成品種。白「雪てまり」黄「ゆずてまり」
■リュウカデンドロン〔サファリサンセット〕   
ヤマモガシ科/花弁のように見える部分は苞
葉で、その中に花序がある。非常に花持ちが
良く、ドライフラワーにも適す。「サファリサンセ
ット」は赤茶色。
■テマリ草  ナデシコ科/多年草/葉や茎
はカーネーションやナデシコと同様、花はマリ
モや芝を思わせる独特な花姿。フサフサした
部分は、花、雄しべ、雌しべがガク片のように
変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3042.jpg

▲TOPへ