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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.12.26

vol.299  − 還 (かえる) −

心の四季、日の入りが最も遅くなる第一の折り返し、そして、冬至(12月22日)が第2の折り返しです。
もう少しで日の出が最も遅くなり、最後の折り返しです。

夜、福島の駅に着く時、大きな木に飾られたクリスマスのイルミネーションが目に入ります。
脇には闇に沈んだ小さな社(やしろ)、平戸(長崎県)の坂からみる寺と教会が並んでいる風景と同じです。こんなところに‟和”、我が国の人々の大らかさと優しさを感じます。

止(とど)まることなく動いている時、師走、特別な思いでこの月を迎えます。感謝、寂寥感、そして幾ばくかの哀しみ…。

         街あゆむ心は寂し行く年を
         惜しむはおのがいのちを惜しむ
                           佐藤佐太郎

この一年が、過去へと過ぎ行こうとしています。
年越し、落語「芝浜」が思い浮かびます。正直を美徳とした我が国の人情を描いた名作です。
誰にでも、大切にしている思い出があります。
         (vol.248 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=285
この美徳、今尚、多くの日本人が持っています。

普段、我々には当然の言動も、海外の人々はそこに品格を感じ取ってくれることが少なくありません。只、世情は刻々と変わっていきます。個性の尊重が他人への無関心に、自由が野放図(のほうず)になり兼ねません。
厄介事を捌(さば)く塩梅、どこに折り合いをみつけるか、先人の知恵を次の世代に伝えることが、老人の務めです。

温暖な土地である西日本での降雪による事故、自然界で何かが変わってきています。
四国の大雪、湿った雪で倒木が道を塞ぎ、電線を切断、死者まで出たという記事を読みました。しかも、高齢者が犠牲になっています。日本海側の大雪でも同じです。災禍は常に高齢者に苛酷です。

ここ信夫の里も、着任時と比べると、雪の降る量も、日数も、極端に減っています。
只、降る時は、土地の長老達が経験したことがないという降り様です。春や秋の豪雨も然(しか)りです。

現代の杣人(そまびと)の話です。
温暖な土地では樹木の成長が早く、根の張り具合が木の成長を支える程にはなっていないのではないか、というのです。寒い気温が続く土地では、木の成長は遅いが、その代わり、根もしっかり張るのだそうです。あの程度の湿った雪では、いくら降っても、通常では、あのような事は起きない筈だというのです。
事の真偽は分かりませんが、哲学者の警句のように聞こえました。

この連載も、次号で300回を数えます。この欄を始めた経緯(いきさつ)については以前に書きました。
         (vol.27 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=44
         (vol.100 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=128
         (vol.200 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=236
定期的な「花だより」、不定期な「学長からの手紙」の2本立てです。

この間、東日本大震災に伴う原発事故で、本学や己の立場は一変してしまいました。原発事故は、県民の健康を見守っていくという、先人に教えを乞うことのできない歴史的使命を本学に課しました。
医の道を副業にすることを余儀なくされました。この時、恥ずかしながら、人生で初めて「死生観」、如何(いか)に生きるかを問われました。
花だよりの内容も、時とともに変わり、自らの揺らぎもでてしまいます。

この花だより、自分で最も大切にしている「愚直なる継続」を実践できました。海外の恩師から、「努力できることも才能の一つである」と、励まされて、人生が変わったことを思い出しています。
       〔学長からの手紙〕
         (No.36 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/036.html
         (No.209 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/209.html
       〔理事長室からの花だより〕
         (vol.35 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=55
         (vol.100 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=128
         (vol.179 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=213
         (vol.199 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=235
         (vol.250 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=287

読者の皆様、この1年間、本学に関心を持って下さり、心から感謝しております。
良いお年をお迎え下さい。

今週の花材は、両室とも観る者に、“冬来たりなば春遠からじ”、早春の兆(きざ)しを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■キンカン   ミカン科/常緑低木/花期は
6〜7月頃で小さな白い花が咲く。柑橘類の中
で最も小さく、一粒10g程の可愛い果実。他
の柑橘類と異なり、主に皮を利用。皮の方が
香りが高く甘味も強い。
■菊〔アナスタシア〕   キク科/多年草/花
弁が花火のように広がる大きな菊。通常の菊
と異なり、細く繊細な花弁が特徴。
■ケイトウ〔羽毛ケイトウ〕   ヒユ科/一年
草/花期は7〜11月頃で、鶏の鶏冠に似た
花序をもつ。「羽毛ケイトウ」は羽毛のようなフ
サフサした花序の品種。他に花序が丸い「久
留米ケイトウ」や扇状の「ボンベイケイトウ」な
どもある。
■アルストロメリア〔ナタリア〕   ヒガンバナ
科/球根植物/一本の茎から花茎を伸ばし、
5〜8輪の花が咲く。一つひとつの花はユリを
小さくしたような形。ほとんどの品種で花弁の
一部に縞模様が入るのが特徴。
■テマリ草   ナデシコ科/多年草/マリモ
や芝を連想させる独特な花姿。ふさふさした部
分は、花・雄しべ・雌しべが変化したもの。
■ユーカリ〔ポポラス〕   フトモモ科/常緑
高木/コアラが食べる木として有名。「ポポラ
ス」は大きい丸葉が特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2991.jpg

【秘書室】
■ガーベラ〔グリーンスパイク〕  キク科/多年草/四季咲き性で
春から秋まで長期間楽しめる。花色が豊富で、一重咲や八重咲、
スパイダー咲等ある。針のような花弁が特徴の「グリーンスパイク」
は高価な希少種ガーベラ。
■リュウカデンドロン〔サファリサンセット〕   ヤマモガシ科/花弁
のように見える部分は苞葉で、その中に花序がある。非常に花持
ちが良く、ドライフラワーにも適す。「サファリサンセット」は赤茶色。
■ピンポン菊   キク科/多年草/ピンポン玉のように真ん丸に
咲く可愛い菊。日持ちの良い菊の中でも、特に長く楽しめる品種。
■ユーカリ〔ポポラス〕 (理事長室と同花材)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2992.jpg

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