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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.07.11

vol.278  − 継 (つなぐ) −

高速道路の脇、木槿(ムクゲ)、凌霄花(ノウゼンカズラ)、合歓(ネム)が咲き乱れています。
川辺での主役も合歓の花です。大地は色彩(いろどり)に満ちています。

この時季の雨上り、樹々や草々、緑が鮮やかです。様々な色調で大地を埋め尽くしており、勢いを感じます。
歩いていて、その勢いに少し気圧(けお)されます。

夕べ、土手の上から見下ろすようにみる合歓の花、優雅です。
雨の中、真昼の太陽の中でみるそれとは違い、幽玄な美しさをみせてくれています。

         雨けむる合歓の条花(すぢはな)夕淡き
         この見おろしも今は暮れなむ
                                北原白秋

道端や庭、梔子(クチナシ)が今が盛りと咲いており、香りが漂ってきます。
出勤、帰宅の時、いつも香りがそっと声を掛けてくれるような気さえ覚えます。

雨の中、軒先の紫陽花(アジサイ)が、物憂いにふけっているように、ひっそりと様々な色で咲いています。
 
         雨やみてあぢさゐの藍みなぎれる
         藍の球より満ちてくる刻
                            雨宮雅子

雨音を聴きながら考え事をしていると、 “天上の青”と表現したくなる紫陽花の藍が、目の前に静かに佇んでいます。

都会のビルの谷間、思い掛けない程多くの、そして広い公共空間が設(しつら)えてあります。法律で義務付けられているのでしょうか。この空間に、多くの樹木が植えられています。
太陽の陽射しを遮り、風と静けさ、そして穏やかな気配を齎(もたら)しています。

この広がり、都会の喧騒や人混みから人を隔絶してくれています。仕事で移動している時、この空間を探すのが楽しみの一つです。
「何を見ても何かを思い出す」(ヘミングウェイ)、子供の頃、身近にあった里山や鎮守の杜を思い出します。

今、頭の中を占めているのは、長く事業を続けるには何が大切かという問いです。

金があれば続けられる、という程簡単なものではありません。確かなことの一つは、明確な目標がある事です。これは誰にでも分かります。
あとは何でしょう。組織自体や構成員自身が、時と共に変わっていく社会状況の変化や人々の暮らしに応じて変っていくことでしょうか。

世間の一遇に住んでいる人間の一人として、周りの組織をみてみると、息の長い組織にはいくつかの共通点があることに気付きます。
それは、組織を構成している人々が組織の一員である事に誇りを持っていることです。
そして、その誇りに基づく行動が身に付いていることです。挙手動作、姿勢、言葉使い、表情など…。

例えば、相手に対して、丁寧な物腰と共に、“有難うございます”だけで終わるのではなく“又お待ちしております”、“お気をつけて”を付け加えています。
医療機関であれば“お大事に”の後に、 “何かあったらいつでも連絡を下さい”と笑顔と共に言っています。

感謝の気持ちの表明、そしてちょっとした一言が人間(ひと)の心を打つのです。小さい事のようですが、この日々の積み重ねが、1年、2年と続けていけば、それは組織の財産になり、伝統として根付きます。

縦(たと)え、組織の存在や行動に反対の人でも、「反対だが、何故そうしているかは理解できる」と言ってもらう努力は欠かせません。

対極にあるのが、依頼や要望に対してこちらが何らかの行動をしたのに、当然と思っているのか、御礼は勿論、連絡、確認もして戴けないことです。
一つひとつの行動に対して、報告なり、御礼の連絡をもらって嫌な思いをする人や組織はいないでしょうに。

世の中、時代とともに代わる事、そして時の移ろいがあっても変わらない事、それを明確に意識する必要がありそうです。

今週の花材の赤や紫の色彩(いろどり)が、慎ましさを醸し出し、梅雨の潤いを軽やかなものにしてくれています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■エキノプシス〔ベッチーズブルー〕
キク科/多年草/《名前の由来》ギリシャ語で
ハリネズミに似たという意味/アザミに似た葉
と瑠璃色の球形から「ルリ玉アザミ」の和名を
持つ。茎の先端に綺麗な青紫色の小花を球状
に咲かせる。
■ピンポン菊   キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く菊。通常の菊と異な
り、とても可愛くお祝い用途にも多用。
■バンダ   ラン科/樹木や岩肌に根を張り
付けて育つ着生種。洋ランの中でも特異なブ
ルー系の美しい花色。10cm程度の丸弁で、
花弁に入る網目模様が特徴。
■デンファレ   ラン科/デンドロビュウムの
中で、特にデンドロビュウム「ファレノプシス」と
いう野生種を親とした系統のものをファレノプシ
ス系(通称:デンファレ)と呼ぶ。胡蝶蘭に似た
花形で、花色や大きさが様々あり約4万種に
及ぶ。
■雪柳   バラ科/落葉低木/《名前の由
来》柳のように枝垂(しだ)れる姿と花を散らし
た様子が雪が降ったかのように見えることから
/春に小さな白い花を枝いっぱいに咲かせる。
庭木としても人気のある樹木。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2781.jpg

【秘書室】
■ピンクッション〔サクセション〕   ヤマモガシ科/常緑低木/針山に待ち
針を刺したような独特の花姿。待ち針の様な部分の一つひとつが雄しべ。
「サクセション」はオレンジ色。
■モカラ〔ゴールデンナゲット〕   ラン科/バンダ、アラクニス、アスコケント
ルムの3種の蘭を交配した人工種。南国の花で暑さに強く花持ちが良い。
「ゴールデンナゲット」は落ち着いたオレンジ色。
■トルコギキョウ〔シュークリーム〕  リンドウ科/多年草/花の大きさや咲
き方、花色がとても豊富。品種改良が盛んで毎年多くの新種が登場する。
「シュークリーム」は2005年発売の中大輪の八重咲。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2782.jpg

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