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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.06.27

vol.276  − 堪 (こらえる) −

21日の夏至、最も遅い日没は26日から29日にかけてです。一年の半分が、早や、過ぎてしまいます。

思い入れのある梔子(クチナシ)、咲き出しました。
   (vol.35 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=55
   (vol.85 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=111
   (vol.134 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=167
   (vol.181 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=215
   (vol.226 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=263
雨樋からの水漏れ、規則正しく雨音を刻んでいます。
紫陽花が、今が梅雨(つゆ)の時季であることを教えてくれています。
手入れしている家の紫陽花、濃い青です。濃い青を望むなら根元に釘を埋めておけと古老から聞いたことがあります。

この時季、夾竹桃(キョウチクトウ)の白や紅の花が目立ちます。
畑の端、菖蒲(アヤメ)の濃い紫、水を含んだ畑の濃い茶との対比、農家の方の粋を感じます。
構内、百合の木(ユリノキ)や泰山木(タイサンボク)の花から下野(シモツケ)の薄桃色の花へと、主役が交代していきます。

原発事故により、県民の健康を見守っていくという歴史的使命が、本学に課せられました。職員が一緒に仕事が出来る建物の工事が、始まりました。
東日本大震災に伴う原発事故、大学は勿論、一人ひとりの人生を変えてしまいました。死生観、如何に生きるかを問われた瞬間でもありました。

         身を観ずれば岸の額に根を離れたる草
         命を論ずれば江の頭(ほとり)に繫がざる舟
                                羅維

人生、考えてみれば、あやういものです。それは、根から離れかけた河岸の草のようなものです。
人間(ひと)の命は儚(はかな)く、川の流れのほとりに繫がれずにある小舟のようです。
只、嘆いても何も変わりません。これを「天命」と受け止め、「自らを鍛える良い機会」と捉えて動いています。

         天定の数(すう)は、移動する能(あた)わず
         凡(およ)そ事を作(な)すには、当(まさ)に人を尽くして天に聴(まか)すべし
                                                    佐藤一斎「言志録」

3年有余、求められている役割は何かを考え、それに基づいて、少ない人手のなか、職員が一丸となって動き続けた歳月でした。
その間、何をどうやろうとも、時に、謂(いわ)れ無き批判に曝(さら)されました。しかし、皆、様々な思いを飲み込んで、求められる仕事を懸命に務めてくれています。

各所に分散して、事故の半年後から、新たな仕事が始まりました。只、“地理的な距離は人の心の距離に比例する”を実感することもありました。
休日のない、この3年有余、不安や怒りをエネルギーに変えて、与えられた歴史的使命を果たすことに全力で走った結果の今です。

この逆境や困難な仕事、

         一燈(いっとう)を掲(さ)げて暗夜を行く
         暗夜を憂うこと勿(な)かれ 只一燈を頼め
                                  佐藤一斎「言志晩録」

毎朝、心を奮い立たせての出勤です。

本学は郊外にあっても、使える土地はありません。大学自らが土地を買い足し、林を切り拓(ひら)かなければなりません。除染による樹木の伐採と相俟(あいま)って、心痛む風景が眼前に広がります。職員自らが費用を募って植樹できれば、と期待しています。

何かに追われるように仕事をしていると、日々の何気ない一コマ、陽が昇り、そして沈むという平凡な日々こそが、掛け替えのない時間であることが分かります。
周囲との連絡が殆(ほと)んど取れず、孤立無援の中で斗(たたか)った1週間、職員はよく踏み止(とど)まりました。人間という生き物の全てをみてしまった時です。

人生には限りがあり、面白いものでも、楽しいものでもありません。
   (vol.193 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=229
「生きる」ということは、側に居る人との関わりです。その中に喜びがあり、哀しみがあります。巡り合いの大切さを改めて気付かされました。

今回の原発事故で、失ったものでしか語れないことが、また増えてしまいました。長く、厳しい斗いの中で出会った人間(ひと)を頼りにして、次の世代に何かを残していこうと思います。

今週の花材には、執務室は高々とした勢いを、秘書室は静謐さを感じます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ガマ〔ヒメガマ〕   ガマ科/多年草/日本全土の川辺や沼、池などの湿地
に自生。草丈は1.5〜2mになり、菖蒲の葉を大型にしたような線形。夏の花
粉を乾燥したものが生薬の蒲黄(ほおう)で、止血や利尿薬に利用。
■ヒマワリ〔サンリッチパイン〕   キク科/一年草/もっとも有名な夏の代表
花。黄色系を中心にエンジや茶色など品種が豊富。「サンリッチ」シリーズは花
粉が出ない。
■クルクマ〔エメラルドチョコゼブラ〕   ショウガ科/球根植物/幾重にも重な
り花弁のように見える部分は苞で、苞の間に小さな花が咲く。暑さに強く夏でも
花持ちが良い。「チョコゼブラ」はグリーンとチョコ色のユニークな品種。
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕   リュウゼツラン科/笹のような細長い
葉とストライプの斑が特徴。熱帯アフリカ原産で、現地では4〜5mにもなる。
■ドラセナ〔コーディラインホワイト〕   リュウゼツラン科/日本で流通する観葉
植物の代表種。「コーディラインホワイト」は青葉で、正式には「コルジリネ」。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2761.jpg

【秘書室】
■カラー〔ロマンス〕   サトイモ科/球根植物/《名前の由来》
花型がYシャツの襟(カラー)に似ていることから。花弁のように見
える筒状の部分は苞で、苞の中の棒状が花。「ロマンス」は濃い
ピンクで、高温期は少し薄れる。
■アランダ〔ノーラブルー〕   ラン科/アラクニスとバンダを交配
した人工種/花弁に入る斑が特徴で、暑さに強く花持ちが良い。
■トクサ   トクサ科/シダ植物/《名前の由来》砥石のかわり
に刃物を研ぐことが出来ることから“砥草”。茎は直立し表面がザ
ラザラして硬く、昔は歯磨きにも利用。
■トルコギキョウ〔エスプリピンク〕   リンドウ科/多年草/花の
大きさや咲き方、花色がとても豊富/祝事仏事問わず人気の高
い夏の花。「エスプリ」シリーズは分岐が多く、輪付の良いフリル
咲品種。
■タマシダ   ツルシダ科/シダ植物/海岸近くの岩肌や木に
着生。葉は羽状複葉で叢生し多くの楕円形の羽片を付ける。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2762.jpg

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