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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.05.09

vol.269  − 交 (まじわる) −

風と緑の季節です。
風は、田圃(たんぼ)の上を吹き渡る気流、緑は若葉です。古来、青と表現されてきており、碧(へき)、翠(すい)、常盤(ときわ)色など、瑞々(みずみず)しい表現が多くあります。

水が張られた田圃(たんぼ)のさざ波、木々の葉裏の翻(ひるがえ)りに、人は風を視(み)ます。
夜半、蛙の鳴声が遠くから聞こえてきます。
公園や道路で、落葉掃きの作業がみられます。この時期の落葉の清掃、今まで気付きませんでした。

新社会人が街にあふれています。
大学入学時に購入したと思われる背広、丈が短く、前ボタンを嵌(は)めると窮屈そうです。ズボンの裾が短く、足首が顔を出しています。靴下は白のスニーカー用です。
黒のスーツ姿の女性、鞄を手にして、緊張した面持(おももち)でインターホンや受付に向かっているのがガラス越しにみえます。“初々(ういうい)しい”という表現がピッタリです。

就職活動でしょうか、黒のスーツに身を固めた女性、その足どりは疲れ切っています。「頑張れよ」と、声を掛けてやりたくなります。
切羽詰まった表情や心情、忘れないで欲しいと切に思います。忘れてしまった事があるからそう願うのです。

これらの姿を眼にする時、うらやましいとは思いません。只、若さに畏怖(いふ)を感じます。

数年は経っていると思(おぼ)しい社会人、服は着崩れ、狎(な)れた態度で横並び、雑談しながら歩いています。IDカードを他人の目に晒している人、楊子(ようじ)や煙草を銜(くわ)えてる輩(やから)もいます。
年寄りの偏見です。心身共に隙だらけです。少し饐(す)えた臭いさえ感じてしまいます。

若い人々には、緊張感を持ち続け“仕事”に挑戦して欲しいし、先輩にはいい手本であり続けて欲しいと願わずにはいられません。

“謝る時は直(す)ぐに、責める時は慎重に”、当時の大人から教えてもらった戒(いましめ)です。
“そうしないと一生の恩師や友を失う”とも。
研修医時代、私からみたら理不尽な叱責(しっせき)に耐え、夜半、4km以上の道を自転車で上司の自宅へ謝まりに行った事を思い出しています。
   (「学長からの手紙」vol.107  http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/107.html

“人生の扉は他人が開く”のです。
「優れた能力を持ち、懸命に努力しても、他人が認めてくれないと道は拓(ひら)かないよ」、肩を叩いて教えてやりたくなります。「“ボロは着てても心は錦”、他人には通じないよ」、とも。

我々の祖先が創った独自の文化や慣習、交通や通信の発達で、変化を余儀なくされています。
海外への転勤、留学、仕事での頻繁な往復は、今や日常の一コマです。以前には確かにあった移民する方々が持っていたであろう決死の覚悟や別れ、今はありません。

授業で習ったアレキサンダー大王の東方大遠征、ゲルマン民族の大移動、チンギスハーンの西方大遠征、そして日本人の南米への移民、様々な悲劇を伴って、移住、混血、定着、長い年月をかけて新たな暮らしや文化が生まれました。

技術の進歩は、短時間での大陸間の移動を可能にしました。
現在の民族大移動は、血を流すことはなく、定着化も伴っていません。異なった文化を持った人々、短期での交流や行き来(いきき)、活発でも、以前のような民族融合は、米国を除いては、あまりありません。
しかし、その事が却(かえ)って民族や国の間に軋轢(あつれき)、緊張、誤解などが生じさせて、新たなる課題を我々に突きつけています。

都市社会でも、同じような問題が起きているような気がします。接触はあっても、相互理解できる程の深化は少なく、結果的に個の孤立化が目立ちます。

今週の花材は、この時季を代表する黄、紅、紫色が印象的です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)





今週の花


【理事長室】
■万作(マンサク)   マンサク科/落葉小高木/《名前の由
来》早春に他の花に先駆けて開花することから。“まず咲く”が転
じて「マンサク」/早春に葉に先だって黄色い細くねじれた花弁
の花が咲く。芽吹いた葉姿も綺麗で、枝ものとして流通。
■向日葵(ヒマワリ)〔サンリッチマンゴー〕   キク科/一年草
/もっとも有名な夏の代表花。黄色系を中心に、エンジ色や茶
色など品種が豊富。「サンリッチ」シリーズは花粉の出ない品種。
他に「サンリッチパイン」「サンリッチレモン」「サンリッチオレンジ」
等がある。
■LAユリ〔カプレット〕   ユリ科/球根植物/鉄砲百合とスカ
シユリの掛け合わせ品種。鉄砲百合の花持ちの良さとスカシユ
リの上向き咲、双方の良い所を持つ。「カプレット」はピンク系の
品種。
■アンスリュウム〔みどり〕   サトイモ科/常緑多年草/光沢
があり造花と見間違うような花。花弁のように見える団扇のよう
な部分は苞で、棒状の部分が花。
■ドラセナ〔コーディラインレッド〕   リュウゼツラン科/日本で
流通する観葉の代表種。「コーディラインレッド」は赤葉で、正式
にはコルジリネ。以前ドラセナ類に分類されていたため現在も
「ドラセナ」で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2691.jpg

【秘書室】
■バンダ   ラン科/樹木や岩肌に根を張りつかせて育つ着生種。洋ラン
の中でも特異なブルー系の美しい花色。10cm程の大きな丸弁で、網目
模様が入るのが特徴。
■アンスリュウム〔ソナタ〕  (理事長室と同花材)
「ソナタ」は濃いめのピンク色。
■テマリソウ  ナデシコ科/多年草/マリモや芝を想わせる個性的な花。
ふさふさした部分は、花・雄しべ・雌しべが変化したもの。
■利休草(リキュウソウ)   ビャクブ科/茎の先端が蔓状になるしなやか
で涼しげな葉。江戸時代に薬用として渡来。根にアルカロイド系の成分が含
まれ、駆除剤などに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2692.jpg

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