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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.04.25

vol.267  − 嗜 (たしなむ) −

大地が春を謳歌(おうか)しています。
庭、海棠(カイドウ)の薄紅、木瓜(ボケ)の深紅、花桃の朱に近い赤、そしてライラックの薄紫、華やかです。

“種蒔き桜”、季節と人間の営みを今に伝える証(あかし)です。
玄関には山桜の花びらが飛んできています。踏むに忍びなく、避けて足を運びます。
室内には白山吹、姫五加木(ヒメウコギ)、慎(つつ)ましい美があります。

街中、遠目に点描画法のように緑の葉が交った桜、花水木(ハナミズキ)、目線の先にはミヤマキリシマやサツキツツジ、ドウダンツツジの生垣、地には八重桜の花弁(はなびら)が散り敷かれ、その間にチューリップ、タンポポ、ハナニラ、ムラサキダイコン、菖蒲、百花繚乱です。

大学の周囲、様々な種類の桜で埋めつくされています(vol.172、216)。桜の極楽浄土です。
   (vol.172 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=206
   (vol.216 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=253

原発事故は、福島の人々や大地に癒し難(がた)い傷を残してしまいました。
「忘れない」と「希望」は矛盾しないと、自らにそして周囲に説いてきた3年です。

         漢国(かんこく)山河在り
         秦陵(しんりょう)草樹(そうじゅ)深し
         暮雲(ぼうん)千里(せんり)の色
         処(ところ)として心を痛めざるは無し
                              荊叔(けいしゅく)

杜甫の、“国破れて山河在り”を思わせます。
この詩、人の世の儚(はかな)さ、将来への憂い、悠久たる時の流れ、一瞬でしかない今というこの時、そんな中に身を置く自分、哀惜(あいせき)を覚えます。

疲れ果てている時、古(いにしえ)の隠者達の世界に逃げ込みます。
詩、文章から、心の持ち様や身の処し方を学びます。彼らの清閑(せいかん)の暮らし、日々の営みに一喜一憂している我が身、到達できない憧れです。

楽しみ、哀しみ、怒り、嘆き、酒は、太古から、人の感情の側にいつも寄り添っています。
暮らしや仕事のなかで、酒は、人々の一日での様々な感情、例えば、遣る瀬無さ、苛立ちを落ち着かせ、少しだけ勇気を与え、素の自分を取り戻してくれる役目を果たしてきました。

原発事故以降、酒を嗜(たしな)むことはなくなりました。
若い時から、独り酒の経験がないので、酒は酒でしかありませんでした。幼い頃の体験が瑕(きず)となって、自分の感情を酒に落とし込む事が、出来ませんでした。
   (vol.22 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=39

齢(よわい)を重ねるとともに、日本酒、ウイスキー、ワインなど、そこに何かの意味を見い出そうとしました。
しかし、利いた風なことを言っても、所詮、歩んで来た人生は変えられません。行き着く先は日向燗(ひなたかん)の燗酒というところです。

海外の友人達、会食を終えた後、場所を変えて、一杯のスコッチウイスキーを味わうことが多いのです。
しかも、銘柄を指定するのです。日々の暮らしのリズムにウイスキーが組み込まれているのを感じます。

酒の味わい方にも彼我に差があるよう感じます。
例えば、ワインでは種類によってグラスが異なります。一方、我が国では日本酒用の器にそれ程の工夫がされているようにはみえません。酒の楽しみ方が違うのかも知れません。

ワインは、香りや味を鼻と舌で味わいます。
日本酒はと言えば、「聞き酒(利き酒)」という言葉に代表されるように、五感で味わうという雰囲気です。酒を呑んだ時の「五臓六腑に染み渡る」という表現、この感覚に通じているのでは…。

酒を嗜(たしな)んでいた時分、酒を飲んでいる姿に、その人の歩んで来た道や矜持(きょうじ)まで顕(あらわ)れているのを知りました。ここにも「人に歴史あり」を実感します。

今週の花材は、両室とも透明感のある緑が心に安らぎを与えてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■アリウム〔踊る丹頂〕  ユリ科/球根植物
/ネギやニンニクと同じネギ属の花。茎をカッ
トするとネギの匂いがする。くねくねと曲がった
茎は成長途中に手を加えたもの。
■モルセラ  シソ科/一年草/爽やかなライ
トグリーン色と独特の茎のラインが特徴。円形
で盃状のガクを持ち、その中に白く小さい花が
咲く。ミントのような清涼感のある芳香を放つ。
■ピンポン菊   キク科/多年草/通常の菊
と異なり、丸く可愛く咲く。花持ちの良い菊の
中でも特に長く楽しめる。
■トルコギキョウ〔ボヤージュグリーン〕
リンドウ科/多年草/花色や大きさ、咲き方
など多岐にわたり品種がとても豊富。「ボヤー
ジュ」シリーズはフリル咲の八重咲。花弁の巻
きがしっかりしていてボリュームがあり花持ち
が良いのが特徴。
■モンステラ   サトイモ科/蔓性植物/成
長するにつれ、葉に切れ込みや穴が開く。独
特の葉姿がユニークで、インテリアグリーンと
しても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2671.jpg

【秘書室】
■モカラ〔カリプソ〕  ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルム
の3種の蘭を交配した人工種。南国の花で暑さに強く、花持ちが良
い。ビビッドカラーの花色が豊富で、「カリプソ」はピンクの代表種。
■トルコギキョウ〔桜みちる〕(理事長室と同花材)
「桜みちる」は淡いピンクの八重咲。
■ブバルディア   アカネ/常緑低木/4枚の花弁で十字型に咲く
筒状花。枝先に多数の花を房状に次々と咲かせる。
■ブルースター〔ピュアブルー〕   ガガイモ科/多年草/ベルベッ
トのような独特の質感の花弁をもつ。名前の通り、淡い水色の5枚
の花弁が星のように咲く。
■ハラン   ユリ科/多年草/江戸時代から生け花の材料として
使用。葉の先端に斑の入る「旭ハラン」や縦縞の「シマハラン」など
もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2672.jpg

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