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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2008.11.21

vol.13  − 青春の懐古 −

失ったものでしか語れないことがあります。一方、それこそが自分の今を形作ってくれていることもあります。

先日、大学の公務で初めて中国に蜻蛉返りで行ってきました。今まで幾度となく機会がありながら、どうしても気が進まずに、今に至っていました。
機上から中国の大地をみて、田中克己が詩作日記「夜光雲」に初出し、詩集西康省(今はなく、現在のチベット自治区か)の巻頭にある「このみちを泣きつつわれ(詩集では「我れ」)の行きしこと わが(我が)忘れなば誰か知るらむ」を作った彼の心情に思いを馳せました。

大学紛争の余燼がくすぶる中、屈辱感と劣等感、そして孤独のうちに絶望を抱え、潰されてたまるかと巌に爪を立てるようにして独りで努力しているとき、この歌に出会いました。その後の紆余曲折の人生で、この歌が私にどれ程勇気を与えてくれたことか。
“文”や“言葉”がどれ程一人の人間の一生に大きな影響を与えるかを思い知らされた最初の経験でした。
今も、毎年手帳にこの歌を写し変えるのを、新年を迎える儀式にしています。

そんな時代、若き同僚がカーステレオ(今でもこんな言い方をするのでしょうか)で、“セイリング”を流していて、この曲と前述の歌が表裏一体で自分の身に染みてしまいました。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■フリージア(アラジン)
アヤメ科 球根植物
別名:浅黄水仙 原産:南アフリカ
《名前の由来》発見者のドイツ人が親友の名前「フレーゼ」にちなんで名付けた
花茎に筒状の花を8〜10輪つけ、次々と咲いていく。
甘い香りが特徴の春の花。
品種改良が進み、黄色の他、赤、ピンク、紫、白などの色もある。
アラジンは黄色いフリージアの代表的な人気種。

■ゲイラックス
イワウメ科 多年草 原産:北アメリカ
丸い艶のある濃い緑色の切り葉。1ヵ月位は常緑のまま利用できるとても丈夫な葉。冬期は銅のような色に紅葉したものも流通する。

【秘書室】
■木瓜(ボケ)
バラ科 落葉低木
原産:中国
渡来当初は薬木として利用され、観賞されるようになったのは明治〜大正になってから。球形の実は果実酒や鎮痛剤として利用される。庭木や盆栽でも人気があるが、切花でも長期間楽しめる。

■ドラゴン柳
ヤナギ科
雲竜柳の変種。茎が黄〜赤茶色で、枝ぶりも雲竜柳より太く変化に富む。
クネクネした枝の特徴をいかして、ダイナミックに活けたり、絡めたり丸めたりと形を変えて利用する。
今回は、花器を覆うように丸めて使用した。





(写真:伊藤俊一 氏)

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