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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.09.27

vol.238  − 忍 (しのぶ) −

信夫(しのぶ)の里(古来、多くの歌で福島はこのように呼ばれていました)では、朝晩は肌寒さを感じる位になりました。早朝、周囲の山の麓(ふもと)には霧が湧いています。
大学がある高台からみると、夕陽でセピア色に染まった市街地は懐かしさと物悲しさを感じさせます。

道傍(みちばた)や構内には、今年も曼珠沙華(マンジュシャゲ)や萩(ハギ)の花、梅擬き(ウメモドキ)の紅い実が健在です。健気に時をわきまえて姿をみせてくれました。
右往左往している人間に季節の移ろいを実感させてくれます。

玄関先、隠蓑(カクレミノ)、梔子(クチナシ)などの葉が生垣や敷石の上に落ちてきています。職場への往き帰りに、これを生垣の根元に置くのがこの時季の習わしです。「葉っぱのフレディ」のように…。
時は、確実に、秋を深めていきます。

秋の空、見上げると、自分の体が天空にまで行けるような透明感を感じます。

                 夏の終わり

         夜来の颱風にひとりはぐれた白い雲が
         気のとほくなるほど澄みに澄んだ
         かぐはしい大気の空をながれてゆく
         太陽の燃えかがやく野の景観に
         それがおほきく落とす静かな翳(かげ)は
         …さよなら…さようなら…
         …さよなら…さようなら…
         ・・・・・
                                伊東静雄

心もこのような大気の色に染まってくれれば…。

東京でのオリンピック開催のニュースが、国民に活気を与えています。
記憶に残っているオリンピックは、メルボルン(1956)からです。

前回の東京オリンピック(1964)、高校3年の時でした。今でも当時の沸き返るような熱気を覚えています。
田舎で育った私は、白黒テレビや新聞で雰囲気を味わっていました。

“東京に福島の原発事故の影響はない”、タクシー談議の中で、運転手さんが「福島は切り離されてしまったみたいですね」という何気ない言葉が、胸を衝(つ)きました。

自分の経験、そして病と闘っている患者さんから学んだことがあります。それは、目標が明確だと、人は頑張ることが出来るということです。希望が、前へ進む原動力になるからです。

目を福島に転ずれば、今、原発事故現場や支援業務をしている方々は、自分達が行っている仕事が「世の中の役に立っている」という確固とした手応えがないまま、“底の抜けた桶(おけ)に水を汲む”感覚で作業を続けています。
現地で直接対策にあたっている人々、再生・復興事業を実施・支援している方々に、心の崩壊が起こってくるのではと心配しています。

人を動かすのは共感です。今、原発事故対応にあたっている人々に、目にみえる目標(希望)が必要です。
勁(つよ)い心を持った人々にこれからも頑張り続けてもらわないと、いつか原発事故収束現場からも人が居なくなってしまいます。

福島の人々には、戊辰の役後の会津藩士やその子弟達の生き方を鏡として生きて欲しいと願っています。

9月21日(1933)、宮沢賢治が亡くなっています。37年の生涯でした。

9月22日(1868)、明治元年のこの日、戊辰戦争で鶴ヶ城が開城、会津藩が降伏した日です。
この時の屈辱を忘れまいとした緋毛氈(ひもうせん)の逸話や、これをバネとして、多くの会津藩士達が明治に活躍しました。近年、漸(ようや)くその生き方が人々に知られるようになりました。

9月24日(1877)、明治10年、西郷隆盛が自刃し、西南戦争が終結しています。
この戦いに、多くの会津藩士が政府軍の一員として参加しています。

今週の花材は、執務室は秋の豊かさ、秘書室は秋の気高さを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■パンパスグラス   イネ科/多年草/ススキを大
きくしたような花姿。草丈は3m程になり群生する。白
銀色のふわふわした巨大な花穂が特徴。
■アジサイ〔秋色ミナヅキ〕   アジサイ科/落葉低
木/《名前の由来》旧暦の6月頃に咲くことから“水無
月”/7〜9月に白い花が咲く。「秋色ミナヅキ」は夜
間温度が低下することで、白からピンクに染まったも
の。
■ユリ〔モンテズマ〕   ユリ科/球根植物/大輪咲
で優雅な花姿と芳香が特徴のオリエンタルハイブリッ
ド種。「モンテズマ」は濃い赤色品種。
■久留米ケイトウ〔アーリーローズ〕   ヒユ科/一年
草/《名前の由来》花序が鶏の鶏冠に似ていることか
ら“鶏頭” /「久留米ケイトウ」は、花序が丸いのが特
徴。「アーリーローズ」は発色の良いピンク色。
■ユーカリ〔ポポラス〕   フトモモ科/常緑高木/原
産地のオーストラリアを中心に約600種分布。コアラ
が食べる木として有名。「ポポラス」は丸く大きな葉が
特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2381.jpg

【秘書室】
■グラジオラス〔プリンセスマーガレットローズ〕  
アヤメ科/球根植物/1000を超える園芸品種が
あり、花色がとても豊富。1m程の草丈で、漏斗状
の花が花茎いっぱいに次々と開花する。「プリンセ
スマーガレッドローズ」は黄色の花弁のフチにオレ
ンジが入る。
■オンシジュウム〔ハニーエンジェル〕   ラン科
/無数の蝶が舞い飛ぶような花姿で、「バタフライ
オーキッド」の別名を持つ。「ハニーエンジェル」は
従来品種にある斑点が入らない綺麗な花色。
■アンスリュウム〔アフリカンキング〕   サトイモ
科/常緑多年草/光沢があり造花と見間違うよう
な花。花弁のように見える部分は苞で、中央の棒
状の部分が花。苞を鑑賞するため、非常に長く楽し
める。
■ドラセナ〔コーディラインレッド〕   リュウゼツラ
ン科/常緑低木/ドラセナ類は日本で流通する観
葉植物の代表種。切花でも非常に長くもつ丈夫な
グリーン。「コーディラインレッド」は赤葉。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2382.jpg

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