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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.09.20

vol.237  − 喪 (うしなう) −

夕刻、秋桜(コスモス)、芒(ススキ)が道端に並び、田圃(たんぼ)の稲穂も実ってきました。秋です。

中秋の名月、今年は19日で、満月です。台風一過、光輝く月でした。
   (vol.7  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=13
   (vol.93  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=119
この時季、気温や湿度が下がり、収穫の時期とも重なり、月は一段と輝きを増します。

         ・・・・
         三五夜中 新月の色
         二千里外の故人の心
         ・・・・
                     白居易

黄金色(こがねいろ)に輝く月、遠く離れている友の心情に思いを馳せる…。
金色(こんじき)に輝く月が、透明な青白き明かりで地上に静寂をもたらしてくれます。
月の光は、観る人々の心の裡にまで差し込みます。

         暮れて花野になりぬ月ひとつ
                          福永武彦

只、現代では、月の光の下、独り歩くということはなくなってしまったのでは…。
闇を喪(うしな)ったからです。

木々や花々が毎年、季節になると花や実をつけます。どこで時機を知るのでしょうか。
それに比べて、人間は季節感を喪(な)くしつつあるのでは…。

先頃、沖縄でヘリコプター墜落事故がありました。その機体が、東日本大震災でトモダチ作戦に参加していたことを知りました。当時、本学はルース米国大使の本学訪問による学生の激励を含め、米国政府や米国民、そして在米日本人から多くの支援を受けました。

事故が、基地問題だけに関係づけられて取り上げられる中、私は、亡くなった方の御冥福を祈っていました。
そんな胸中だっただけに、事故でお亡くなりになった兵士の方に、国民の間から追悼の声が挙がっていることを知り、ほっとしています。

事故を非難する余り、日本人が古来から発揮している高高(たかだか)とした思い遣りの精神を喪くしてしまったのでは、と危惧していたからです。

私達の先人達が確かに持っていた高尚な精神の証(あかし)の一つを、大阪府千早赤阪村にある墓地にみることができます。そこに、楠木正成と幕府の軍勢との戦いの後に造られた、「寄手塚(よせてづか)」と「身方塚(みかたづか)」があります。

この塚の敵味方各々の五輪塔、敵方であった「寄手塚」のそれが「身方塚」よりも遥かに大きいのです。怨霊思想も然(さ)る事ながら、ここに相手を思い遣って弔(とむら)う、高高とした精神性を感じます。
14世紀、先人達は、既にこのような「思い遣り」を持っていたのです。

日露戦争での旅順要塞の戦いの後、乃木希典(まれすけ)が敵将や敵兵に払った敬意、第一次大戦後、坂東俘虜収容所の所長であった松江豊寿(旧会津藩士の子弟)の収容されていたドイツ兵への寛容と博愛、彼等の振る舞い、「察し」の心です。
この有り様(ありよう)は、現代の、他者に対する暴力的ともいえる完璧性の要求、他を全く慮(おもんばか)らない声高な主張とは対極にあります。

身辺に目を向けると、囲炉裏(いろり)、炭入(すみい)れ、灰均(はいなら)し、五徳(ごとく)、火消壷(ひけしつぼ)、自在鉤(じざいかぎ)などが喪くなりつつあります。

口ごもる躊躇(ためら)い、懼(おそ)れの気持ち、然(さ)り気ない気配り、そして美しい後ろ姿、喪くしてはいけない我々の心です。

9月14日(2007)、画家盪鈎ね困量親です。幻想的な作風で、観る者に“祈り”を感じさせます。
   (vol.207  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=244
あの香月泰男が彼を高く評価しています。
   (vol.22  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=39
   (vol.62  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88
   (vol.74  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=100
   (vol.186  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=221
   (vol.207  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=244

同じ日、三越デパートの天女像で知られている佐藤朝山が亡くなっています(1963)。
彼の故郷は、福島県相馬郡中村町(現相馬市)です。

今週の花材は、執務室、秘書室ともに、一見、質素な佇まいながら、そこには落ち着きと確かさがみられます。自分の心も常にこうありたいものです。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■豆柿   カキノキ科/落葉高木/原産:中国
/1〜2cm程の実が秋に橙に色付きはじめ、霜
が降りる頃に真っ黒に熟す。未熟な果実から柿
渋をとるために古くから栽培される。近年は実の
可愛さから盆栽など観賞用で人気。
■菊〔アナスタシア〕   キク科/多年草/花火
のように広がる大きな菊。通常の菊と異なり、細
く繊細な花弁が特徴。今回はグリーン・白・ピンク
の3色を使用。
■りんどう〔紅竜〕   リンドウ科/多年草/《名
前の由来》根が薬になり、竜の胆のように苦いこ
とから“竜胆”/日本の秋を代表する花で、世界
に約400種。「紅竜」は濃いピンク色。
■千日紅〔バイカラーローズ〕   ヒユ科/一年
草/《名前の由来》花期が長く一つ一つの花の
寿命が長いことから/細い茎の先端に丸く可愛
い花をつける。乾燥しても色褪せずドライフラワー
にも適す。「バイカラーローズ」はピンクと白の可
愛らしい品種。
■ソリダゴ   キク科/多年草/北米原産の原
種を基に作られた園芸種。円錐状に花穂をつけ、
黄色い小花がたくさん開花する。カスミソウ等の
ように添え花として利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2371.jpg

【秘書室】
■バラ〔フリーダム〕   バラ科/落葉低木/花型・花
色など多岐にわたり2万種を超える世界的にも古くから
親しまれる人気の花。「フリーダム」は赤の大輪咲きで
日持ちの良い品種。
■りんどう〔ブルーハイジ〕   (理事長室と同花材)「ブ
ルーハイジ」は青色で、花弁が反り返るように開花する
ササリンドウ種。他に「ホワイトハイジ」「セプテンハイジ」
などもある。
■タニウツギ〔ウェイゲラナナ〕   スイカズラ科/落葉
低木/原産:日本/花期は4〜6月頃で、ミントの葉を
大きくしたような葉を持つ。「ウェイゲラ」は斑入り品種で
ライム地にクリームの斑が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2372.jpg

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