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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.08.30

vol.234  − 慕 (したう) −

肌を過(よぎ)る風が、日差しは強くても秋がすぐそこまで来ていることを教えてくれます。
夜の主役が、蝉(セミ)に代わり、いつの間にか、虫の音です。

8月、生と死が隣り合わせになります。
祖先、そして戦争や原爆による死者に祈りを捧げ、裡なる声と対話する時季です。盂蘭盆での送り火や迎え火、旧今市市(現日光市)に抜ける会津西街道沿いの家々での迎え火が、今でも心に残っています。
   (vol.91  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=117

         八月はそこいらじゅうにかげのある
         うすむらさきの地上をあゆむ
                             加藤治郎

強い日差しの裏にある影、そこに死者が佇(たたず)んでいます。多くの霊が陽炎(かげろう)のように歩んでいます。上田三四二の歌が連想されます。
   (vol.172  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=206

夜更け、書斎で文机(ふづくえ)を前に端座する時、瀬音、鳥や虫の鳴き声が、外界の静寂さを一層際立たせてくれます。闇は、意識を心の裡に集中させてくれます。
   (vol.148  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=181

小学生の時、故郷の駅から出征した兵士が遺骨として戻って来るというので、夜、駅まで出迎えに行った記憶があります。四角い木箱が白い布に覆われ、遺族がそれを頸から下げて、急拵(ごしら)えの壇上に立って挨拶をしていました。戦後の記憶は、食事のひもじさ(vol.56)とこの位しか残っていません。
   (vol.56  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=82

枝垂(しだ)れ桜のように大樹になった百日紅(サルスベリ)が満開です。父を見送った時、境内のサルスベリが、満開でした。
「医師からメスと薬を取ったら何が残るか。残ったものが医師の力量だ」。父の遺言が蘇ります。
   (CLINICIAN 579,2009 巻頭言  http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/212.html

人の死に対する世情は、昔も今も同じです。
「徒然草」、30段、「人の亡き跡ばかり、悲しはなし」にも、命や世の儚さが記されています。人は、亡くなると、その瞬間から過去の人となり、時とともに忘れ去られ、名前はもとより、墓の跡さえ留めなくなると…。

父の葬儀の時、受付では地元の高校が出場している野球試合の実況中継が流れていました。
自分の生あるうちは、その人を心の裡に留めておくことが真の供養と思った切っ掛けです。
   (vol.203  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=239

能「松風」、600年以上経っている古典が、今尚、上演されているのは、名台詞(めいせりふ)も然(さ)ることながら、亡き人への思慕の念の深さが、人の心を打つからです。

「速水御舟」展に足を運びました。
「炎舞」が目当てでした。「翠苔緑芝」は、現代版琳派です。心に残ったのは、「あけぼの・春の宵」と最晩年の「牡丹花(墨牡丹)」です。「あけぼの」の数羽の鳥、宮本武蔵の「枯木鳴鵙図」を連想させます。
   (vol.151  http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=184
美の追究の果ての水墨の美しさや孤愁(こしゅう)が、門外漢(もんがいかん)にも伝わってきます。

夜の東京駅、ダイヤの乱れでプラットホームにつくねんと立っていた時、復元した駅のドームの灯りが目に入りました。
蝋燭(ろうそく)か行灯(あんどん)の光に近い色、少し寂しげで、懐かしげです。周囲の高層ビルのLED照明、向かい合っているビルのガラス壁に照明が映っている風景、そして新旧の灯(あかり)の対比、現代の美です。
只、夏休みでの旅の帰りと思(おぼ)しき周囲の人々は、携帯やタブレットの画面に夢中で、誰も周囲の風景に関心がありません。勿体無い…。今というこの時、ここでしかみられない風景が眼の前に展開しているのに…。

今週の花材は、執務室、秘書室とも寒色と暖色が一緒に配されています。
この時季を象徴しているようです。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■アマランサス   ヒユ科/モコモコとした小
さな毛糸玉が連なったような花姿。ひも状に垂
れ下がって咲く。
 赤−「ハンギングレッド」
 緑−「ハンギンググリーン」
■ブバルディア〔ダイヤモンドライラック〕   
アカネ科/常緑低木/4枚の花弁で十字型に
咲く筒状花。枝先に房状に次々と開花する。
「ダイヤモンドライラック」は八重咲品種。
■セダム〔オータムジョイ〕   ベンケイソウ科
/600種以上ある多肉植物の一種。耐寒性
耐暑性があり、乾燥にも強い。花が咲き切り
花として流通する品種も、丈夫で長く楽しめ
る。
■菊〔アナスタシア〕   キク科/多年草/花
火のように広がる大きな菊。通常の菊と異な
り、細く繊細な花弁が特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2341.jpg

【秘書室】
■リンドウ〔新踊り子〕   リンドウ科/多年
草/日本の秋を代表する花で、世界に約400
種。花色は青紫色の他、白やパステルブルー
もある。「新踊り子」はピンク色。
■トルコギキョウ〔グラナスライトピンク〕   
リンドウ科/多年草/花の大きさや咲き方、
花色がとても豊富な夏の花。昭和初期に日本
に渡来し、50年代にピンク色が登場。「グラナ
ス」シリーズは中大輪タイプの八重咲でフリン
ジ咲き。
■アンスリュウム〔ローザ〕   サトイモ科/
常緑多年草/光沢があり造花と見間違うよう
な花。うちわのような花弁に見える部分は苞
で、棒状の部分が花。
■浜撫子〔ラベンダーピンク〕   ナデシコ科
/多年草/海岸の崖地や砂浜に生育。光沢
のある肉厚な葉を持ち、潮風による水分の蒸
発を防ぐ。茎の先端に次々と花をさかせ、長期
間楽しめる。
■テマリソウ   ナデシコ科/多年草/マリ
モや芝を連想させる個性的な花。ふさふさした
部分は、花・雄しべ・雌しべが変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2342.jpg

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