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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.03.15

vol.213  − 案 (あんずる) −

朝、西に聳(そび)えている吾妻の嶺(みね)のすぐ上、黄金色(こがねいろ)に輝いている満月が、巨大と表現しても良い程の存在感がありました。
雄々しいというのが相応(ふさわ)しい程の存在感です。背景の空は縹色(はなだいろ)です。

日の出前、東の山々は薄闇の中に暗く沈み、空や雲の端は後光を纏(まと)っているかのように、赤く輝いていました。赤銅色の太陽が、頂上部分だけ少し顔を出すと、山の稜線も赤く輝き出しました。

他日、満月のような静けさを湛(たた)えた日の出の太陽に出会いました。
大気のせいか夕陽のようです。思わず心の裡で祈りました。

これらの風景こそ、古人が感嘆を込めて詠(よ)んだのでしょう。

この時季、天から降るのは雪でなく、雨です。
春の雨は、人々に春の訪れがようやく来たと知らせてくれる天からの使者です。

          しみじみとけふ降る雨は如月(きさらぎ)の
         春のはじめの雨にあらずや
                                若山牧水

長く医療に携わっていると、忘れられない患者さんが居ます。

志を曲げての医師、なって良かったと思う事がありました。
30年以上も前、戦後、「ほねつぎ」になった父が、突然、亡くなりました。毎週、日曜日の午前中、故郷に戻って、診療所を借りて、父の代わりをしていました。

原因不明の骨粗鬆症を患(わずら)った女性の患者さんがいました。あっという間に背が低くなってしまいました。患者さんは、不安に戦(おのの)き、泣いていました。私にはどうしても原因が分からなかったので、当時、この領域の第一人者であった某大学の教授に検査をお願いしました。

今に至るまで気になっていた患者さんです。今なら分かります。患者さんが求めていたのは、診断でなく、「悪い病気ではない」、「良くなる」という安心できる医者からの一言だったことを。

私が故郷での教授就任の祝いの会に、御主人が、患者さんだった奥様と一緒に作った農作物を持って、出席してくれました。

先日、共通の知人から、患者さんの近況と「元気に働いている。感謝している」旨の言葉が伝えられました。
一時(いっとき)、心の重荷の一部がとれたように、心に潤いを感じました。
 
     はらへたまってゆくかなしみ
         かなしみは  しづかに  たまってくる
         しみじみと  そして  なみなみと
         たまりたまってくる  わたしの  かなしみは
         ひそかに  だが  つよく  透きとほってゆく
         ・・・・・・・・・・
                                八木重吉

次の世代の、福島の、復興を担(にな)う人々が、住みやすくなるようにと働いている日々です。
この季節と相俟(あいま)って、蘖(ひこばえ)を待つ心境です。

宮崎、そして富山への出張の帰路、夜半、飛行機の降下時、そして高速道路の走行時、不思議な感覚に囚(とら)われました。
林立している高層ビルの無数の灯りが、漠とした不安と少しの不気味さを与えるのです。
「汽車通」で、闇の中に浮かぶ人家の灯りをみて人生を感じたのとは反対の感覚です。
   (vol.50 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=75
   (vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134

今週の花材、どちらも淡い紫が、春の穏やかな日差しを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■エピデンドラム   ラン科/原産:中南米/
《名前の由来》ギリシャ語の“epi”(上に)と“d
endoron”(木)から。属が一般的に着生蘭で
あることから/細く伸びた茎の先端に小さな花
が密集して半円形の一つの花のように開花。
次々と開花するので、切り花でも長期間楽し
める。
■ハイドランジア〔アンティークグリーン〕   
アジサイ科/落葉低木/日本のアジサイがヨ
ーロッパに渡り、品種改良された西洋アジサ
イ。日本原産のアジサイに比べ、花が大きく華
やか。
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植
物/原産:西アジア・ヨーロッパ/《名前の由
来》ラテン語の“蛙”(ラナ)に由来。蛙がたくさ
ん生息する湿地に自生することから/幾重に
も重なるやわらかい花弁が特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2131.jpg

【秘書室】
■フリージア   アヤメ科/球根植物/原
産:南アフリカ/明治中期に渡来。甘い香りを
放つ春の代表花。花茎に8〜10輪の花をつ
け、次々と開花する。今回は紫の八重咲を使
用。
■スィートピー〔トトロホワイト〕   マメ科/一
年草/原産:地中海沿岸/チューリップ・フリ
ージアとならぶ春の代表花。ひとつひとつの花
が蝶のような形で、甘い香りを放つ。
■テマリ草   ナデシコ科/多年草/原産:
ヨーロッパ東南部/マリモや芝を想わせる独
特の花姿。ふさふさした部分は花・雄しべ・雌
しべが変
化したもの。
■カーネーション   ナデシコ科/多年草/
原産:地中海沿岸/江戸時代にオランダから
渡来。母の日に贈る花として古くから親しまれ
る。菊・バラと並び、世界的にも生産量の多い
主要花。今回は茎が分岐し数個の花が咲くス
プレー咲タイプ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2132.jpg

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