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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.03.01

vol.211  − 懐 (なつかしむ ) −

玄関脇にある障子が、早朝のほのかな明かりを受け、僅かに白く映えています。
日の出が早くなっているのを実感します。

最大級の寒気団の襲来、福島でも記憶にない程の風雪に見舞われました。
戸や窓に雪が貼り付いているのをみるのは何時以来でしょうか。

地下鉄の駅の階段、重そうな荷物を持ち、手摺りに掴まり、一段ずつ昇っている老婦人が目に入りました。
前を歩いていた50歳代のコートを着た厳(いか)つい男性(失礼!)が老婦人に目をやっていました。
手を貸そうと、躊躇(ちゅうちょ)していたら、男性が声を掛けて荷物を持って改札口まで行ってくれました。
都会の雑踏の中、宝石をみたような思いがしました。思ったら直ぐやらねばと自らを恥じ入りました。

この時季の寝静まった夜は、一時(いっとき)、人を哲学の人にしてくれます。
闇、澄み切った夜空に輝いている星、冷涼な光を放つ月、ときに雪、これらが一体となって静寂な世界を作ってくれるからです。

         さよふけて岩間の滝つ音せぬは
         高根のみ雪ふりつもるらし
                           良

今は、この景色が醸(かも)しだしている雰囲気、寂しいだけではない作者の心象風景を想像できます。

雪の降った翌夜の月明かりが、心の底に眠っていた記憶を蘇らせてくれました。
雪降りの翌朝、雪の反射光と相俟(あいま)った抜けるような快晴で弾む心、雪、寒さ、そして風。
毎冬、身近に体験しているのに、久しく忘れていました。子供心に、この時は嬉しかったものです。

雪の夜の静けさと共に、そこにあった雪明かりも思い出しました。
雪明かりで書を読むことはありませんでしたが、月の光を反射する雪の青白さが、眼前に蘇ります。

「飛騨の円空、千光寺とその周辺の足跡」展、雨の中を訪れた甲斐がありました。
秘書室にある賓頭盧尊者(びんずるそんじゃ)坐像を描いたリトグラフの本物にも対面できました。
一体一体を鑑賞するというより、仏像が醸し出す会場の雰囲気を味わうのが大切だと感じました。
円空仏の微笑は、広隆寺の弥勒菩薩のそれと比べると、より素朴で、そこには何の邪気も無い笑みです。

王義之展は、壮大!の一事です。
私のような書の基本知識がない人間には、比較する基準を持てないので、歴史上多くの人々が書聖と称えた理由が分かりません。只、拡大写真の中の一つの字に時々強く惹き付けられました。横画の右肩上がりが彼により確立されたことも分かりました。
書を愛する人にとっては待望の特別展ではなかったかと思います。

シェイクスピアの戯曲「リチャード3世」のモデルになった王の遺骨が発見されたということが報じられました。
真実かどうか、悪逆無道を尽くした名高い王(1485戦死)です。約500年後の今、作者がこれを知ったら、登場人物にどんなセリフを吐かせるのでしょうか。
凡人には“あの世も舞台”、“死んでも演技するのが人間”、など浮かびますが…。

26日(1936)、2・26事件の発生した日です。斎藤史の絶唱が胸を打ちます。

今週の花材は、執務室の赤紫、秘書室の青紫が醸し出す気高さが、萎(な)えそうな気持ちに活を入れてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■木苺(キイチゴ)   バラ科/半落葉低木/
原産:日本/ラズベリーやブラックベリーなどの
総称で木になる苺。春に苺に似た小さな白い花
が咲く。ヤツデのような切れ込みの深い葉が特
徴。
■グロリオサ〔ロスチャイルディアナ〕   ユリ科
/球根植物/《名前の由来》「栄光」や「見事
な」を意味するラテン語の“グラリオラス”から/
花弁が反り返り、赤く燃える炎のような花姿。半
蔓性の植物で、支柱や他の植物に絡まって成
長する。絡むため巻きヒゲになる葉先が特徴。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕   リュウ
ゼツラン科/常緑低木/原産:熱帯アジア・熱
帯アフリカ/ドラセナ類は日本で流通する観葉
植物の代表種。「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に
白色が入る品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2111.jpg

【秘書室】
■バンダ〔ダークブルー〕   ラン科/多年草/原産:東南アジア
/花弁に綺麗な網目模様が入る。洋らんの中でも特異なブルー
系の美しい花色。他に桃・橙・黄色などもある。
■エリンジュウム〔スーパーノバ〕   セリ科/多年草/原産:ヨ
ーロッパ/トゲトゲした松かさのような独特の花型。綺麗な青色が
魅力で、成長とともに青みが強くなる。非常に花持ちが良く、ドライ
フラワーにも適す。
■ドラセナ〔サンデリアーナバリケード〕   リュウゼツラン科/原
産:熱帯アフリカ/笹のような細長い葉とストライプの斑が特徴。
原産地では4〜5mにもなる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2112.jpg

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