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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.01.25

vol.206  − 徹 (てっする) −

暁方、“明けの明星”は山々のすぐ上に位置を移しています。橙色の山際とその上空の薄い青がこの星をより鮮やかにしています。
日の出、太陽は初め赤く、昇るにつれて黄金色を帯びてきます。

朝市で水仙を安く手に入れました。水仙の姿と香りは、人の心を穏やかにさせてくれます。

         水仙の 香やこぼれても 雪の上
                            加賀千代女

冬、東北新幹線での往復、天気の目まぐるしい変化は、観(み)ていて飽きるということがありません。
関東平野の沿岸に位置する東京から、平野を突っ切るように北上し、白河の関を超えて奥羽山脈の麓(ふもと)を走ります。

抜けるような青空の下を北上すると、関東平野の縁(へり)に行くにつれ、大地は一面の霜(しも)です。
前方に低い錫色の雲が立ち込めて、平野や里山を覆っています。那須の原野に入ると、みるみるうちに横殴りに雪が降ってきて、視界は殆ど効きません。山際に入ると風が舞い、田畑や道路は氷っています。雑木林や畑々がうっすらと白く染まっています。そこを抜けると雪は雨に変わり、激しい雨が車窓を叩きます。
しかも、この変化が10分かそこいらで変わってしまいます。

景色と雨は、早朝の車内の静寂さを一層際立たせています。窓打つ雨音は、思いを心の裡(うち)に向かわせます。
新幹線や飛行機という現代技術の進歩は、地理的な距離を一挙に短くしてくれました。只、“心の距離は地理的な距離に比例する”は当て嵌まらず、却って遠くなってしまったように感じます。
あたかも、それは、晴れと褻(け)の区別があまりなくなった今と呼応しているようです。

自分のライフワークである“腰痛”の診療ガイドラインの発刊を、新聞が取り上げていました。
心理・社会的因子の関わり、画像の意義などを見出しにしていました。約20年前から、自分が黙々と提示し続けた末の今です。
一つのことに的を絞ること、そして続けることの大切さを改めて胸に刻みました。一瞬、臨床に、そして研究に没頭していた時代に思いを馳せました。

「愚直なる継続」は、最後は、他人ではなく、自分との斗(たたか)いです。

「琳派芸術供彭犬紡を運びました。私にとっては、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一の「風神雷神図屏風」が一堂に会して展示されて以来の琳派展です。
酒井抱一の特徴である銀地着色の「紅白梅図屏風」、冬の月光をみるような、清冽さが画から発散しています。彼の心の師である宗達や光琳が金地で、豪奢な画風に対して、銀地の秘めやかな冷涼さが対照的です。師を超えようとして到達した境地でしょうか。只、銀地は黒く変色してしまうので、描かれた当初の雰囲気を想像するのが難しい絵もありましたが、この絵は銀地が良く残っていました。
一方、洗練されるとともに躍動感(やくどうかん)や力強さが失われるのも事実です。それは、人間や国家の生命と同じです。

今週の花材は、執務室は黄と赤、秘書室は赤紫が可憐(かれん)さを漂わせています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■サンシュユ   ミズキ科/落葉小高木/原産:中国・朝鮮
/《名前の由来》中国名「山茱萸」の音読みから/葉が芽吹く
前に、小さな黄色い花を枝いっぱいに付ける。“茱萸”とはグミ
のこと指し、グミに似た果実をつける。薬用植物として江戸時代
に渡来。春を告げる花木として親しまれる。
■ダリア〔熱唱〕   キク科/多年草/原産:メキシコ/《名前
の由来》スウェーデンの植物学者ダールの名に由来/世界で3
万種以上もあり、品種がとても豊富。花径が3cm程の小輪のも
のから30cm以上にもなる巨大輪まである。「熱唱」は鮮やか
な赤橙色。メキシコの国花。
■ベアグラス   ユリ科/原産:北アメリカ/細く長い線状でし
なやかな葉。束ねたりカールさせたりと、いろいろな利用ができ
るグリーン。非常に丈夫で、籠を編む材料に使用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2061.jpg

【秘書室】
■エピデンドラム〔バイオレットクィーン〕   ラン科/原産:中南
米/《名前の由来》ギリシャ語の“epi”(上に)と“dendoron”(木)
から。本属が一般的に着生蘭であることから/小さな花が集まっ
て半円形の一つの花のように開花。次々と開花するので、切り花
でも長期間楽しめる。
■スィートピー〔プレミアムトトロナイト〕   マメ科/一年草/原
産:地中海沿岸/チューリップ、フリージアとならぶ春の代表花。
ひとつひとつの花が蝶のような形で、甘い香りを放つ。
■矢車菊   キク科/一年草/原産:ヨーロッパ/《名前の由
来》鯉のぼりの竿の先端で勢いよく回る“矢車”に似た花形から/
別名「矢車草」「コーンフラワー」トウモロコシ畑や麦畑で、たくまし
く育つ雑草であることから/細い茎の先端に青、白。ピンクの花が
咲く。ドライフラワーに適し、ハーブとしても利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2062.jpg

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