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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.12.21

vol.202  − 暮 (くれる) −

暁方(あかつきがた)、家を出る時、空を見上げると、紺碧の空を背負って、黄金色(こがねいろ)の満月が、雄々しく輝いているのが目に入ります。
この季節、月は大きく、圧倒的な存在感です。

12月に入って、朝霧が際立ってきました。
朝霧が殊の外(ことのほか)深い日、道行く人や車を殆ど目にしません。霧が造りだしてくれる静寂さ、万物が、一時、楽しんでいるようです。

一転、晴れ渡った朝、橙色を額縁として、南東の大空に、コバルトブルーの空を背景にして “明けの明星”が、文字通り、煌(きら)めいています。
周りに星は全くないだけに、神々(こうごう)しくみえます。この時季の暁方から早朝にかけての時間の移ろいは、1年のうちで最も清々(すがすが)しい時間の1つです。

門扉脇の山茶花(サザンカ)が満開を過ぎ、白い花びらが敷石に散り敷かれています。
夜、帰宅すると、月光の下、白い花びらが妖しく輝き、夢幻の趣(おもむき)を醸(かも)しだしています。
花の少ないこの時季、山茶花の白い花弁(はなびら)の華やぎは、乏しい色を補って余りあります。

         月夜にて山茶花が散る止めどなし
                               細見綾子

12月も半ば、

         また暮れぬすぐれば夢のここちして
         哀れはかなくつもる年かな
                               藤原定家

この時季は、古人も同じような感慨を催していたのだと改めて感じ入ります。
只、昔の人間の寿命と現在のそれとの差を考えると、先人達は早く老成したのでしょうか。
“一芸を極めると達観する”のは年齢に関係ないと言います。何が人間を磨き上げるのでしょうか。

今年も銀杏(イチョウ)の華やぎのある色、舞い落ちる姿、そして黄色い絨毯(じゅうたん)を味わうことは叶わないのか…。こんなことを毎年繰り返していると、心が干からびて人生が終わってしまいます。

仕事の区切り毎に嗜(たしな)んでいる抹茶、この頃は、飲み干すときに茶碗の底に目を遣り、一時、頭を空っぽにします。
抹茶(まっちゃ)の緑、茶碗の黒、黄色、あるいは白の地色の組合せは、鮮やかさ、華やかさ、そして涼やかさを感じさせます。同時に、「大の中に小が宿り、小の中に大が宿る」と何やら哲学めいたことを考えてしまいます。

12月19日(1915)は、今や伝説となったシャンソン歌手エディット・ピアフの誕生日です。
短くも、激しい人生でした(1963年10月11日死去)。自らの身を切り裂くような絶唱は、多くの人の魂を揺さぶり、それは今も続いています。
今は亡き恋人に捧げられた(後で知りました)「愛の賛歌」を初めて聴いた時、歌詞の意味は全く分かりませんでした。只、痛切な歌い方、絶唱というのはこう言うのだと知りました。

今週の花材は、執務室、秘書室ともに赤、緑、白の組合せです。
思わずこちらも居住まいを正してしまう程、凜としたものを感じます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■グラジオラス〔ソフィー〕   アヤメ科/球根植物/原産:南アフリカ/《名
前の由来》葉の形に由来し、ラテン語で剣を意味する“gladius”から/花色
が豊富で1000を超える園芸品種がある。草丈は1mほどで、漏斗状の花
が花茎いっぱいに次々と開花する。「ソフィー」は純白色。
■グロリオサ〔ロスチャイルディアナ〕   ユリ科/球根植物/《名前の由
来》「栄光」や「見事な」を意味するラテン語の“グラリオラス”から/花弁が
反り返り、赤く燃え上がる炎のような花姿。半蔓性の植物で、葉先が巻きヒ
ゲになり、支柱や他の植物に絡んで成長。
■ヒペリカム〔シュガーフレア〕   オトギリソウ科/半常緑低木/初夏に黄
色い花が咲く。主に実を鑑賞するものとして流通。花色は赤を中心にピンク、
茶、緑等あり。「シュガーフレア」は淡いピンク。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2021.jpg

【秘書室】
■カラー〔ウェディングマーチ〕   サトイモ科/球根植物/《名前の由
来》花姿がYシャツの襟(カラー)に似ていることから/メガホン状の花弁
のように見える部分は苞で、その中に棒状の花序をもつ。「ウェディング
マーチ」は白色の代表品種。
■アンスリュウム〔トロピカル〕   サトイモ科/常緑多年草/光沢があ
り蝋細工で出来ているかのような花。花弁のように見える部分は苞で、
棒状の部分が花序。トロピカルな鮮やかな赤色。
■テマリ草〔グリーンボール〕   ナデシコ科/多年草/マリモや芝を連
想させる独特な花姿。ふさふさした部分は、花・雄しべ・雌しべが変化し
たもの。「グリーンボール」は南米で生産された品種で、通常のテマリ草
よりも大きい。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2022.jpg

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