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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.11.09

vol.196  − 古 (いにしえ) −

晩秋、柿の木は葉を落とし、実だけが残っています。
収穫の終わった田圃(たんぼ)の中、たわわに実った柿の橙色が、寂しげに佇んでいる実だけの木の姿を一際際立たせています。

日の出が作る風景、最も神々しいのがこの時季です。
日の出前、高い嶺々の頂上付近が赤紫に染まり、短時間の裡に、赤紫の輝きは山裾に降りていきます。
太陽が山頂から顔を出すと大地は黄金色になり、代わりに山肌は穏やかな秋の色をみせます。

川面には霧が漂い、鴨や鷺(サギ)が雲の中に浮かんでいるようです。
霧を纏うこの時季は、自然も人も、寂しさと優しさが同居しているようです。

風の強い夜、大気は澄み渡り、冴え冴えとした満月が夜の小路を白々と浮かび上がらせています。
星は、海のような濃いターコイズブルーの空の下、宝石のように輝いています。

秋の会津路、小高い杜で、咲き残ったコスモスが、風の中、芒(ススキ)と一体となって波のように戦(そよ)いでいました。
その中を赤トンボの群れの飛翔、この光景をみるのはいつ以来でしょうか。懐かしさが蘇りました。

平安初期、会津の古(いにしえ)を今に伝える勝常寺(しょうじょうじ)を参拝することができました。長い間の念願でした。
最澄との宗教論争で有名な徳一の創建とされています。国宝の薬師如来、日光、月光の脇侍像は、奈良や京都のそれとは形態や顔が異なっています。作者の個性でしょうか、あるいは風土がこの違いを生んだのでしょうか。優しさより勁(つよ)さを感じさせます。

これらの仏像を納めている御堂、室町時代の作と掲示されています。仏像が安置されている堂が内部にあり、まるで鞘堂(さやどう)のようです。
廻縁(まわりぶち)の床は、参拝する人々の足や風雨に曝(さら)されて、木目が浮き出て、人が歩いたところは丸く凹んでいます。廻縁は土足で良いとのことでしたが、躊躇(ためら)ってしまいました。

寺の象徴とされているイチョウの木、物寂びた境内や堂宇(どうう)、そして対照的な周囲の陽光を浴びている田圃(たんぼ)、周りの静寂、帰宅後、時間の経過とその間の寺の盛衰に思いを馳せました。

         いにしへを思へば夢か現(うつつ)かも
         夜はしぐれの雨を聞きつつ
                                 良

他の寺院も廻ってみると、これらの寺社が相当昔に創建されていることが分かります。それは、立地です。
すべて、会津盆地を見霽(みはる)かす高台に位置しているのです。鎌倉での社寺の配置と同じです。
恐らく、会津盆地は、今に残っているいくつかの名称が示すように、沼沢地(しょうたくち)だったのでしょう。昔の人の知恵は、川沿いの道、高台にある集落、社寺の所在にみてとることが出来ます。

11月6日(1893)、ロシアの大作曲家、チャイコフスキーが亡くなっています。
哀愁を帯びた抒情性で、今尚、多くの曲が世界中で愛されています。

今週の花材は、寒色系、暖色系の違いはありますが、佇まいに凜としたものを感じます。
自分の一挙手一投足もこのようにありたいものです。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■三叉(ミツマタ)   ジンチョウゲ科/落葉低木/原産:中国
/《名前の由来》枝が3つに分岐することから/花期は3〜4月
頃で、半球状の蜂の巣のような花が咲く。樹皮は和紙などの
原料となる。
■デルフィニュウム〔スーパープラチナブルー〕   キンポウゲ
科/多年草/原産:ヨーロッパ/ブルー系の花色が豊富で250
種程ある。ジャイアント系・ベラドンナ系・シネンシス系に分類さ
れる。「スーパープラチナブルー」は枝が分岐し可憐な印象の
シネンシス系。
■アン
スリュウム〔プレゼンス〕   サトイモ科/常緑多年草/
光沢があり蝋細工でできているかのような花。花弁に見える部
分は苞で、棒状の部分が花。
■オクラレルカ   アヤメ科/球根植物/原産:トルコ/アイリ
スの一種で紫色の花が咲く。剣のように先のとがった長い葉が
特徴。シャープなラインで勢いのある葉物で、生け花等で利
用。
■タニワタリ〔エメラルドウェーブ〕   チャセンシダ科/波打つ
葉が特徴のシダ植物。強健な性質で切葉でも艶やかな状態を
長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1961.jpg

【秘書室】
■フリージア〔アラジン〕   アヤメ科/球根植物/原産:南アフリカ
/甘い香りを放つ春の代表花。花茎に筒状の花を8〜10輪つけ、
次々と開花する。「アラジン」は黄色の一重咲き品種。
■ホワイトスター〔マーブルホワイト〕   ガガイモ科/原産:ブラジル
/《名前の由来》5枚の花弁が星のように咲くことから/ベルベットの
ような独特の質感の花弁。色違いで水色の「ブルースター」、ピンク
の「ピンクスター」もある。
■アンスリュウム   理事長室と同花材の品種違い
■カーネーション〔ジョーレ〕   ナデシコ科/多年草/原産:ヨーロッ
パ・西アジア/パステルからビビッドまでスタンダードカラーの他、覆
色や絞りなど個性的な品種まで、花色がとても豊富。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1962.jpg

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