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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.11.02

vol.195  − 灯 (ともしび) −

11月(霜月)、朝起きると外はまだ闇です。出掛ける準備に室内の灯りが必要になりました。
日の出はより遅く、日の入りは益々早くなりました。日差しも黄金色を帯び、優しげです。
朝晩の冷え込みは、初冬が近いことを教えてくれます。

         おりたちて今朝の寒さを驚きぬ
         露しとしとと柿の落ち葉深く
                           伊藤左千夫

朝霧がカーテンのように大気を満たし、川面の青、稲刈りの終わった田圃(たんぼ)の土、樹々の紅葉が、白との対比で鮮やかです。

秋雨は、季節を一歩一歩冬へ進めます。寂寥感が忍び寄ってきます。
只、じっくりと考える時間を与えてくれる思索の時でもあります。
周りの風景が赤錆色に変化していくのも、この心象形成に一役買っているのでしょう。

日曜日、暮れなずむ時、ビルの外形を額縁にして、地平線近くで薄い橙色に染まる空が眼前に展開しています。空の橙色が紫がかり、闇が近づいてきます。
遙か彼方、飛行機の灯が、定められたコースを90度ずつ角度を変えて、2機、3機と降下してきます。何かに操られてでもしているかのように間隔が規則的です。闇が深くなると共に、機体はみえなくなり、灯の動きだけがその存在を知らせてくれます。

周囲に目を転ずれば、額縁になっているビル群にも、所々に、灯りが次々と灯っていきます。
そんな中、息詰まるような緊張感の中で、管制官の指示にパイロットが応答しているのが想像できます。
旅客機の機長から、「降下する時が一番緊張する」という話を聞いたことがあります。その時、「病院のリスク管理が甘い」との忠告も受けました。彼の預言は、その後、医療界で現実のこととなりました。

早朝からの出張から帰った後、夕空を背に降下してくる飛行機やビルの灯りをみて思いました。
声高に主張しない、黙々と、自らに課せられた責務を果たしている人々の働きのお蔭で、何事もないように機能している社会があることを。只々、感謝です。

         秋立つは水にかも似る
         洗はれて 思ひことごと新しくなる
                            石川啄木

人生には、自分ではどうにもならないことがあります。
地理的な距離は、心の距離と比例すると言います。幸い、距離に関係なく今の難局に支援、共感を寄せてくれる多くの仲間がいます。

ラッキー(lucky)とハッピー(happy)は違います。
「運が良くなくても幸せなことはある」、置かれた環境の現実を在りの儘(まま)に受け入れる。そして、そこに居る人々を頼り、遠くに居る人々を信じて、己の限りを尽くして立ち向かう。
その後は、祈る。先人達が運命の音を聴き、それを甘受したように…。

         盛時  再ビス可カラ不(ず)
         百年  忽チ我ニ遒(せま)ル。
         生存シテハ華屋ニ処(を)リ
         零落シテハ山丘ニ帰ス。
         先民  誰カ死セ不(ざ)ル
         命ヲ知ラバ復(ま)タ何ヲカ憂ヒン。
                             曹植

今週の花材は、執務室、秘書室ともに、暖色に秋の日溜まりに宿る温もりを感じます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■LAユリ〔ロイヤルトリニティ〕   ユリ科/球
根植物/鉄砲ユリとスカシユリの掛け合わせ
品種。スカシユリに似た花姿で中輪咲。
■ケイトウ〔ウモウケイトウ〕   ヒユ科/一年
草/《名前の由来》鶏の鶏冠に似た花姿から
“鶏頭”/「ウモウケイトウ」は羽毛のような花
序を持つ。
■ピンポン菊   キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く。花持ちの良い菊の
なかでも特に長く鑑賞できる。
■ユーカリ〔ポポラス〕   フトモモ科/常緑
高木/原産:オーストラリア/コアラの食べる
木として有名。オーストラリアの森林の4分の
3がユーカリといわれ、約600種が分布。「ポ
ポラス」は葉が丸く大きいのが特徴の園芸品
種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1951.jpg

【秘書室】
■サンダーソニア   ユリ科/球根植物/原産:南アフリカ/ベ
ル型の小さな花が連なって咲く。ランプを灯したようなオレンジ色
で、可愛らしい花姿。原産地ではクリスマスの頃に開花する事か
ら、「クリスマスベル」の別名を持つ。
■モカラ〔ルビー〕   ラン科/原産:東南アジア/バンダ・アラニ
スク・アスコケントルムの3種の蘭を交配した人工種。南国の花な
ので、暑さに強く花持ちが良い。
■テマリ草   ナデシコ科/多年草/マリモや芝を連想させる
独特の花姿。ふさふさした部分は花弁、雄しべ、雌しべが変化し
たもの。
■フォックスフェイス   ナス科/《名前の由来》実の形がキツネ
の顔に見えることから/黄色のツヤツヤした7〜10冂の大きな
実をたくさんつける。水に浸けなくても1か月の以上も観賞でき、
ディスプレイ等に適す。
■おもちゃかぼちゃ〔オレンジブー〕   品種が豊富で色や形が
ユニークな観賞用かぼちゃ。ハロウィンの時期に流通。「プッチー
ニ」など一部の品種は食べることが出来る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1952.jpg

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