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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.08.31

vol.186  − 祈り −

昼間、蝉(セミ)の声が少なくなり、代わりに、夜半、虫の声が聞こえるようになりました。
日の出は遅くなり、日の入りも早まっています。自然は、秋の支度を始めたようです。

只、生活上の実感は、依然、夏です。帰宅して水道の蛇口を捻ると、お湯のような水が出る有様です。

道端の凌霄花(ノウゼンカズラ)、黄紅色の花は、今が盛りです。
小路(こみち)や堀端に小さい花びらが散り敷かれています。槐(エンジュ)です。
見上げると樹木が小さな白い花を纏っています。散って初めて気付かれる可愛そうな樹花です。下ばかり向いて動いている人間に、毎年花びらを散らせて季節の到来を知らせてくれる健気な花でもあります。

海外の友人達と、伊豆に滞在しました。
島の遊歩道には露草の青とカンナの黄色が満ちています。自然の様々な緑を背景にして、みる者に沈黙の優しさを教えています。

         まひ降りて雀あゆめる朝じめり
         道のかたへのつゆ草の花
                            若山牧水

海岸に寄せる波は、入江のせいか、小さく、不規則で、朝陽で波頭が光立っていました。
外国のお客様には“天国”と言って戴きました。

東日本大震災復興支援チャリティーイベント“心をつなぐ”第18回秘蔵の名品アートコレクション展「東京美術学校から東京藝術大学へ  日本絵画の巨匠たち」へ行ってきました。
錚々(そうそう)たる作家達の作品ばかりで圧倒されてしまいます。天皇ご即位の大嘗祭に並列された作品、黒田清輝、山本丘人らの代表作が展示されており、その前には人だかりがしていました。
私にとっては、菱田春草の「帰牧」に横山大観の「無我」と同じ空気を感じ取り、見入ってしまいました。
パリのうらぶれた裏街を描いた佐伯祐三の作品には、ユトリロや荻須高徳の抒情性とは違う、激しく、暗い熱情のようなものをいつも感じます。
香月泰男の「聖堂」、隣に展示されていた自画像と比べると、彼がこの間に経験した苛酷な人生に思いが向かってしまいます。絵も人生そのものなのかも知れません。

併設展の「国宝  古今和歌集と日本の書」、私には猫に小判でしたが、料紙の色の鮮やかさと質、そして流麗な筆遣いは分かりました。現代では再現できない技法ではないでしょうか。

我が国にとって、8月はとりわけ生と死を考える時でもあります。戦後、多くの名歌が生まれています。
只、旧暦のお盆(盂蘭盆〔うらぼん〕)の帰省の風景もどんどん変わりつつあります。私自身、日常の忙しさに紛れて、故郷を思い、死者を敬う時間をなくしています。

         ふるさとの盆の祭に離(さか)りつつ
         今宵酒飲む孤(ひと)りを見るな
                            宮 柊二

この時季になると、いつも想い出す盆踊りの太鼓の音があります。
   (vol.44 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=69
学生時代、夜半、国道45号線を走っていた時、崖下の海岸にある集落から聞こえてくる太鼓です。
今度の震災で大きな被害を受けた筈です。復活を祈らずにはいられません。

今週の花材は、二つとも嫋(たお)やかさを秘めて静謐さを醸し出しています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■パニカム〔チョコラータ〕   イネ科/一年草/
原産:アメリカ/《名前の由来》“panus”(キビの
穂)に由来する/ススキのような花姿で、日向日
陰どちらでも育つ丈夫な植物。「チョコラータ」は
葉と穂が茶色の品種。
■ケイトウ〔ボンベイ〕   ヒユ科/一年草/原
産:アフリカ・アジア/《名前の由来》鶏の鶏冠に
似た花姿から(鶏頭)/花期は6〜9月で、赤・ピ
ンク・オレンジなどの花穂をつける。花穂の形状
が異なる「羽毛ケイトウ」や「久留米ケイトウ」もあ
る。「ボンベイ」は扇形の花穂。
■グリーンアナベル   ユキノシタ科/落葉低
木/原産:アフリカ/小さな花が集まって開花
し、20儖未亮袤楙になる。緑色の蕾から開花
が進むにつれ白色に変化。満開に咲き切ると白
色からグリーンになり、ドライでも楽しめる。
■ヒペリカム〔シャイニーロマンス〕   オトギリソ
ウ科/原産:ヨーロッパ・アジア/初夏に黄色い
花が咲く。花後につける実を鑑賞するものとして
流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1861.jpg

【秘書室】
■クルクマ〔ホワイトカップ〕   ショウガ科/
球根植物/原産:熱帯アジア/《名前の由
来》根茎に含まれる黄色のクルクミン色素を染
料として利用していたことにより、アラビア語で
黄色を意味するKurkumから/幾重にも重な
り花弁のように見える部分は苞で、その中に
小さな花が咲く。暑さに強く夏でも花持ちが良
い。
■アンスリュウム〔チョコ〕   サトイモ科/常
緑多年草/蝋細工で出来ている造花のような
南国の花。花弁のように見える部分は苞で、
中心の棒状が花。主に苞を鑑賞するため、非
常に長く楽しめる。
■風船カズラ   ムクロジ科/一年草/原
産:熱帯アメリカ/蔓性で他の植物やフェンス
に絡まり成長する。夏に小さな花を咲かせ、紙
風船のような形をした果実をつける。実が熟す
と茶色になり、ハート型の白い模様が入った黒
い種子が3つ採れる。
■セダム   ベンケイソウ科/600種以上あ
る多肉植物。耐寒性耐暑性があり乾燥にも強
く、屋上緑化などに利用される。花が咲く品種
で切り花として流通するものも、丈夫で長く楽
しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1862.jpg

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