HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2012.08.10

vol.184  − 惜夏 −

見渡してみると夾竹桃(キョウチクトウ)、合歓(ネム)の花が野外の主役になっていました。
飛行機の窓には満月、青白く空と下界を照らしていました。
新幹線からは、地平線まで拡がっている緑一色の田圃(たんぼ)の中に屋敷林や丘が点在しているのがみえます。その上に霧雨がふんわりと載っていました。
海外の乾燥した大気、対照的なわが国の湿潤さ、日本人の心情を育んだ風景です。

長期の出張から福島へ戻ると、蝉の鳴き声が大気を満たし、門扉の前に亡骸(なきがら)が横たわっていました。庭が目に入ると青空の下、燃えるような百日紅(サルスベリ)の紅が風の中で躍動しています。
既に夏盛りです。空に目を転ずると、雲は早や、秋の兆しをみせています。

         咲き満ちて天の簪(かんざし)百日紅(さるすべり)
                                               阿部みどり女

7月下旬から、札幌、ハワイ(カウアイ島)、久留米、東京とUSBやCDを抱えての長い旅をしました。
心身が悲鳴を上げている時、最高の薬は、少し大袈裟に言えば、“美”でした。
“美”に接した時だけ、時に支配されているのではなく、己が時間を支配していることを実感できました。

札幌では、関係者の御理解で、“20分!”で東山魁夷展に足を運びました。
どうしても行きたかった理由は、「残照」と「道」が同時に展示されるということを聞いたからです。
透明感のある静寂さが、氏の年齢とともに深まっていくのが素人の私でも分かりました。彼の作品に“祈り”を感じるのは私だけではないでしょう。
以前、「最近は美しい風景に送電線や鉄塔があって」と氏に嘆いた人に対して、“眼に入れなければ良い”と述べたという話を読んだ記憶が蘇りました。

カウアイ島では、講演の後、日暮れのゴルフ場の中を散歩しました。
プルメリアの白、ハイビスカスやブーゲンビリア、あるいはシャワーツリーの赤が、芝や大樹の緑を背景に、夕陽を受けて輝いていました。
ある大樹の下に目をやると、薄い赤紫の花びらがびっしりと地面に散り敷かれていました。花の種類は異なりますが、速水御舟の「名樹散椿」(めいじゅちりつばき)の再現です。
   (vol.166 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=200

         落花踏み落花掌に受け旅なかば
                                 岡田日郎

「花伝書」にある「『しほれたる』と申すこと、花よりもなを上の事にも申つべし」は、このようなことも含んでいると勝手に解釈しています。

8月10日、井原西鶴の命日です(1693)。
古典の授業で習った「直ぐなる世を横に渡る」というセリフが今でも頭に残っています。

今週の花材は、執務室、秘書室どちらも、清楚さがカウアイ島の大樹の下で感じた涼やかさを思い出させてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)

※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
8月24日(金)より連載再開いたします。

今週の花


【理事長室】
■ナツハゼ   ツツジ科/落葉低木/原産:
日本・朝鮮/《名前の由来》夏にハゼのように
紅葉することから/北海道から九州にかけ、
山地や丘陵地に生育。春の芽吹きの頃から赤
みを帯びた葉色が特徴。
■プロテア〔ビーナス〕   ヤマモガシ科/常
緑低木/原産:南アフリカ/豪華でエキゾチッ
クな花姿。存在感のある花で、大きいものは
直径30僂鯆兇┐襦2峪ちがよく、ドライフラ
ワーにも適す。
■トルコギキョウ〔ダブルミニオレンジ〕   リ
ンドウ科/多年草/原産:北アメリカ/品種改
良が盛んで、毎年多くの新種が出回る。夏の
花なので、暑さに強く日持ちする。「ダブルミニ
オレンジ」は小輪八重咲きで、可愛らしい品
種。
■雲竜柳   ヤナギ科/原産:中国/《名前
の由来》竜が昇っていくような曲線を描くことか
ら/日本でも広く栽培され、庭木や生け花に
利用。金や銀に塗り、お正月花材としても利用
される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1841.jpg

【秘書室】
■ヒマワリ〔サンリッチパイン〕   キク科/一
年草/夏の代表的な花。黄色系の濃淡の
他、茶色やエンジ色もあり品種が豊富。「サン
リッチシリーズ」は花粉の出ない品種。他にサ
ンリッチ「レモン」「オレンジ」「マンゴー」もあ
る。
■ピンポン菊〔マライヤグリーン〕   キク科/
多年草/ピンポン玉のような真ん丸に咲く菊。
菊の中でも特に花持ちが良く、長く楽しめる。
■モンステラ   サトイモ科/蔓性植物/
《名前の由来》ラテン語の“モンストラム”(異
常・怪物)から/成長するにつれ、葉の縁から
葉脈にかけて深い切れ込みや穴ができる。独
特の葉型が面白く、モチーフとしても人気の熱
帯植物。
■ワレモコウ   バラ科/多年草/茶色の実
のように見える部分が花序。日本全土の山野
に自生し、開花期は7〜10月頃。根はタンニ
ンを含み、止血薬などに用いられる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1842.jpg

▲TOPへ