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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.07.20

vol.182  − 想い出の夏 −

時は容赦なく移っていきます。
福島の道端では紫陽花(アジサイ)は萎れ、代わって立葵(タチアオイ)が主役です。
室内には向日葵(ヒマワリ)が登場して、真夏の到来が近いことを告げています。

ここ福島の地では、避難された人々は苛酷な環境に尚、置かれています。そして、行政の人々は、住民の不安と怒りのなか、休日返上で仕事に励んでいます。
天候不順な今、体調を崩さずにと祈らずにはいられません。

夏になると決まって思い出すことがあります。
それは、秋篠寺(あきしのでら)とその本堂内に安置されている伎藝天(ぎげいてん)です。この伎藝天は、古来多くの人々が魅了され、数多くの名歌が生まれています。

ここでは、立原正秋の詩歌を取り上げます。

         あきしのの名をなつかしみ
         わかき日にこの道を行きし

         としふりて
         春の陽に白壁もかはらず

         伎藝天のおはすみだうに
         まひるの陽のふりそそぐ

         あだめきしみかほに恋せし
         そのかみのなつかしき

学生時代(1960年代後半)、夏休みになるとよく秋篠寺を訪れていました。
当時は静寂に満ちた境内で、本堂が林の中に悄然と佇んでいました。堂内は暗く、汗が短時間で引く程涼しかったのを覚えています。訪れる人もほとんどなく、1時間近く伎藝天を眺めて過ごしたものです。
今も、執務室に伎藝天の小さな写真を飾って心の安定剤としています。
   (vol.14 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=29

明治が終わって100年が経過した今、当時と今の世の中の変わり様は、振り返ってみると想像を絶する程の激動の時代でした。明治45年(大正元年、1912年)から100年前はとみると、江戸時代です。鎖国体制が揺らぎ始め、沿岸が騒がしくなっていたようです。

歳月の流れは、誰もが予見できない程の変化を示しています。

         後の(之)今を視(み)ること、亦由(なお)、今の(之)昔を視るがごとし
                                                  王義之

         降る雪や明治は遠くなりにけり
                            中村草田男

古今東西、時を視(み)る人の心は変わらないものです。

7月15日、会津磐梯山が大爆発を起こした日です。
多くの村落が壊滅し、多数の人々が犠牲になりました。噴火の結果、堰き止められた川は大小様々な湖沼を生み出しました。今や代表的な観光地となった裏磐梯の風光も、自然の猛威によって形成されたわけです。
只、現在の磐梯山の表がスキー場のゲレンデで無惨な山肌を晒しているのをみると、先人の犠牲の上にたった裏磐梯に申し訳ないような気がしてしまいます。

7という数字は、洋の東西を問わず聖、あるいは吉徴を示す数字とされてきました。
旧約聖書の安息日が7日目です。季節の指標となる北斗七星にも7がついています。月の運行も7日毎で、暦の基準になっています。そして、7を用いた様々な格言もあります。

今週の花材は、今の時季の大気が持つ二つの顔、涼やかさとふっくらとした柔らかさを表現しています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■キイチゴ   バラ科/半落葉低木/原産:
日本/ラズベリーやブラックベリーなどの総称
で木になる苺。春に苺に似た小さな白い花が
咲く。ヤツデのような切れ込みの深い葉が特
徴。
■カシワバアジサイ   ユキノシタ科/落葉
低木/原産:北アメリカ/《名前の由来》葉に
切れ込みがあり、柏の葉っぱに似ていること
から/円錐状の大きな花穂が特徴で、「ピラミ
ッドアジサイ」とも呼ばれる。秋の紅葉も綺麗
で、庭木としても人気の品種。
■トルコギキョウ〔ボヤージュイエロー〕   リ
ンドウ科/多年草/原産:北アメリカ/品種改
良が盛んで、毎年多くの新種が出回る。夏の
花なので、暑さに強く日持ちする。「ボヤージュ
イエロー」は八重咲のクリーム色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1821.jpg



【秘書室】
■カラー〔サファリ〕   サトイモ科/球根植物
/原産:南アフリカ/メガホン状の苞を鑑賞す
る。花は苞の中にある棒状の部分。「サファリ」
はシックなオレンジ色。
■ヒペリカム〔ピンキーフレア〕   オトギリソ
ウ科/半落葉低木/原産:ヨーロッパ・アジア
/初夏に黄色い花が咲く。花後につける実を
鑑賞するものとして流通。「ピンキーフレア」は
ピンク系の品種。
■ベロペロネ   キツネノマゴ科/常緑低木
/原産:メキシコ/《名前の由来》ギリシャ語
のべロス(矢)とペロネ(帯)に由来 /赤褐色
に染まる苞葉が美しい。湾曲する花穂の形か
ら「小海老草」(コエビソウ)の和名をもつ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1822.jpg

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