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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.07.13

vol.181  − 鉄路 −

暁方、激しい雨で川床が変わったのか、瀬音が一段と高くなりました。
川の音に交じって郭公(カッコウ)の鳴き声が聞こえてきました。
寝苦しい夜の朝まだき、一時の幽玄な音の世界でした。

梅雨の合間、青空の下、新幹線の側に在来線の東北本線(今の名称は分かりません)の鉄路が見えました。田圃の(たんぼ)の中の線路上を、2両編成の車両が健気に走っているのが目に入りました。
折から、新幹線開業30周年の記念行事の数々、新旧の鉄路の交叉が、色々な事を蘇らせてくれます。

父が突然亡くなり、毎週、実家と東京の間を往き来していた時期に、東北新幹線が大宮まで開通したのを覚えています。その当時は、今のように外の景色に心を寄せることはありませんでした。環境や年齢が、心象風景の形成に深く影響していることを感じます。
また、当時、東日本を貫く大動脈であった鉄路が、今のようなローカル線化するのも予想できませんでした。
これからの30年、想像出来ない程の変化が待っているのでしょう。それでも、在来線の気動車(ディーゼルカー)は、今、自らに求められる役割を黙々と果たしています。その姿に感情移入してしまいます。

長い出張から帰ると、梔子(クチナシ)が一輪、玄関に咲いていて、出迎えてくれました。
梔子には若い時の思い入れがあるので、労(ねぎら)われたように感じてしまいました。
   (vol.35 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=55
   (vol.85 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=111
   (vol.134 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=167

沿線、そして街中に、紫陽花(アジサイ)が今を盛りと咲いています。白、薄い紅、そして様々な濃さの青が梅雨空の下、暑さを際立たせています。躑躅(ツツジ)から主役交代です。

         球形(たまがた)のまとまりくれば梅雨の花あぢさゐは移る群青の色に
                                                    宇都野 研

汗をかきながら街中を歩く時、先月に足を運んだ北陸で、秋に歌われたこの歌を脳裡に描いて、心の中に涼風を送り込んでいます。

         能登の海ひた荒れし日は夕づきて
         海にかたむく赤き棚雲
                              佐藤佐太郎

梅雨の時季、映画の中で雨が象徴的に使われていることがあります。
「雨に唄えば」(1952)や、「シェルブールの雨傘」(1964)は、主題歌とともに、今尚、取り上げられています。後者の映像美は鮮烈でした。
篠突く雨の場面では、「七人の侍」(1954)や「ショーシャンクの空に」(1994)が記憶に残っています。

7月9日、森鴎外が逝去した日です。享年60歳でした。死後90年、今尚、知の巨人であり続けています。
彼の小説「妄想」は、彼が49歳の時の作品です。今の感覚からすると、“若い時”に既に人生の黄昏や生き方を見詰めていたのです。生前、彼の胸に去来する想いはどんなものだったのでしょうか。名前だけを刻んだ墓石の主張とともに、我々に死生観を問い掛けているように感じます。

今週の花材は、梅雨の移り気な天気のもと、緑の新鮮さが、穏やかな雰囲気を部屋にもたらしてくれています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■アーティチョーク   キク科/多年草/原
産:地中海沿岸 北アメリカ/別名「朝鮮アザ
ミ」。紀元前から高級野菜として食される。ヨー
ロッパなどではポピュラーな食べ物で、蕾をゆ
でて食べる。日本では主に観賞用として栽培
される。草丈は1.5〜2mにもなり、大きくトゲ
トゲした葉をもつ。アザミに似た15僂曚匹梁
きな花が咲く。
■ドウダンツツジ   ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/新緑、花期、紅葉と一年を通して
楽しめる樹木。花期は4〜5月で、スズランの
ような小さな白い花が咲く。赤色の花が咲く
「ベニバナドウダン」や縞模様のが咲く「更紗ド
ウダン」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1811.jpg

【秘書室】
■LAユリ〔ハイドパーク〕   ユリ科/球根植物/鉄砲百合(Lon
gifrorum)と透かし百合(Asiatic)を掛け合わせ、両種の良いとこ
ろを持ち合わせた品種。中輪咲きでスカシユリよりも花持ちが良
い。「ハイドパーク」は鮮やかなオレンジ色。
■ピンクッション〔タンゴ〕   ヤマモガシ科/常緑低木/原産:南
アフリカ/《名前の由来》針山に似た花姿から/待ち針のように見
える一つ一つが雄しべ。独特の花姿と南国らしい色合いが魅力。
■アンスリュウム〔ヌンツィア〕   サトイモ科/常緑多年草/蝋細
工のような造花と見間違いそうな南国の花。花弁のように見える部
分は苞で、中心の棒状の部分が花。主に苞を鑑賞するため、非常
に長く楽しめる。
■グリーントリュフ   ナデシコ科/多年草/原産:ヨーロッパ東南
部/マリモや芝を連想させる独特の花姿。ふさふさした部分は、
花・雄しべ・雌しべが変化したもの。カーネーションと同じナデシコの
一種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1812.jpg

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