HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2012.07.06

vol.180  − 嘆惜 −

7月、単衣(ひとえ)から上布(じょうふ)に衣更えです。
家では昔から着物なので、今も衣更えは暦に従っています。着物に着替えることは、私にとって日常のオン・オフの切り換えは勿論、季節の到来を肌で感じさせてくれる大切な儀式です。
   (vol.8 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=14
   (vol.80 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=106
   (vol.128 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=161

季節が変わり、上布を身に纏(まと)う時、ある患者さんの顔が脳裡に浮かびます。
能登から上京して病床に伏している女性が居ました。小さいお子さんが居て、実家から上京したお母様が付き添っていました。そのお母様が能登上布の織り手だったのです。一日3回の廻診の時、上布について教えてもらいました。
私が病院を辞して間もなく患者さんは亡くなりました。今でもお二人の笑顔が瞼に浮かびます。
   (vol.93 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=119

夜半、独り端座して机に向かっていると、遠くから蛙の鳴き声が聞こえてきます。

         雨後、行鷺(こうろ)に逢い
         更に深く遠蛙(えんあ)を聴く
                             賈島(かとう)

一時、古典の世界に迷い込んだような雰囲気です。

室内に鉄線(テッセン)を配すると、やや重い大気も紫で引き締まる感じがします。
朝は夜明けの空、夜の月や夜空との組み合わせ、際立ちます。

富山へ行ってきました。
上空からみると立山連峰を背に緑の田園が広がり、前は碧い海、真に豊饒の地です。

富山、弘前、会津若松、松本、赤穂、佐賀など、何れも城跡が残っていて、水堀が周りに配されています。
これらの地を散策するとき、共通点に気付きます。澄み切った寂寥感、静謐な空気、大らかな空間です。
城の石垣が、無用の造形美で、この印象をより深くしています。日本人の心象風景の一つです。

富山県水墨美術館、富山県立近代美術館に再び足を運びました。
これらの立地や建物の佇まいは、訪れる人々の心を軽く、穏やかにしてくれます。

ここ福島では、原発事故の復興が始まったばかりです。残念ながら、思うようには進んでいません。
「科学が確実な因果関係を設定できない領域では、科学的合理性を超えた配慮が必要」(村上陽一郎)との言葉が胸に突き刺さります。

今、この時、自分の置かれている立場を天命と受けとめて、求められている役割を果たしているつもりです。
只、時々自分の無力さ、そして虚しさを感じてしまいます。
人生は一瞬で、漂泊の旅です。
今のしていることが、真に自分に与えられた仕事なのか、自問自答の毎日です。

         春を留(とど)むるに関城の固を用ひず、
         花は落ちて風に随(したが)ひ、鳥は雲に入る。
                                 「和漢朗詠集」

原発事故の対応で心砕く合間、能登のお母さんや患者さんを想い出すと、当時の熱い想いが胸に去来します。と同時に、柔らかな風が体の裡(うち)を吹き抜けて、波立つ心を鎮めてくれます。

王義之の「人生はすべてこの絶えざる嘆惜のうちに過ぎてゆく」が心に染みます。

今週の花材は、執務室、秘書室とも赤を基調としています。
この時季の赤は、梅雨空の下、何時にも増して映えます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■プロテア〔ロビン〕   ヤマモガシ科/常緑低木
/原産:南アフリカ/豪華でエキゾチックな独特な
花姿。大きいものは直径30冂兇砲發覆訛減澳兇
ある花。花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。原
産地・南アフリカの国花。
■アランセラ〔アンブラック〕   ラン科/原産:マレ
ーシア/アラクニスとレナンセラの交配種。秘書室
で使用しているモカラの交配元バンダの仲間。蝋
質で細長い花弁が特徴。「アンブラック」は赤黒い
シックな色の品種。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕   リュウゼ
ツラン科/原産:熱帯アジア・熱帯アフリカ/日本
で出回る観葉植物の代表種。以前ドラセナ属に分
類されていた為“ドラセナ”の名で流通(本来はコル
ジリネ)。「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に白色が入
る品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1801.jpg


【秘書室】
■モカラ〔カリプソ)   ラン科/原産:東南ア
ジア/バンダ、アラクニス、アスコケントルムの
3種の蘭を交配した人工種。南国の花なので
暑さに強く、抜群の花持ち。「カリプソ」は鮮や
かなピンク色。
■デルフィニユウム〔ハッピーピンク〕   キン
ポウゲ科/多年草/原産:中国/ジャイアント
系、べラドンナ系、シネンシス系に分類され
る。「ハッピーピンク」はシネンシス系で、よく分
岐し可憐な印象の花。
■トルコギキョウ〔コサージュホワイト〕   リ
ンドウ科/多年草/大輪系八重咲フリンジの
品種。「コサージュ」は花数や花径、茎の硬
さ、バランスなど、厳しい基準をクリアした高品
質レベルの品種。
■ブルーファンタジア   イソマツ科/スター
チスの仲間を掛け合わせた園芸品種。よく枝
分かれしボリュームがあり、青紫の小花を無
数に咲かせる。ドライフラワーにも適す。
■ドラセナ〔サンデリアーナ〕   リュウゼツラ
ン科/笹のような細長い葉とストライプの斑が
特徴。原産地では4〜5mにもなるグリーン。
日本ではテーブルグリーンとしてミニサイズが
人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1802.jpg

▲TOPへ