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理事長室からの花だより

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2012.03.30

vol.167  − 別れ路 (わかれみち) −

そぼ降る小糠雨(こぬかあめ)が静かに、しっとりと大地を濡らしています。
“春の雨”は、一時、人々を“優しい人”に変えてくれます。

大気がざわつき始め、木々はもとより鳥達もはしゃいでいるようです。
29日、今年初めて鶯(ウグイス)が健気な声で鳴いていました。只、花粉症も出番です。
「何かを得るには何かを捨てなければならない」。この世は、全てがうまくという訳にはいきません。

3月末、別れと旅立ちの時です。
長年、慕って入局してくれた弟子達を自分の全てを賭けて鍛え、育ててきました。弟子達も、今、原発事故という未曾有の危機を前にしてそれぞれの立場で立ち向かい、あるいは斗(たたか)っています。
“今”を目の前にして考えると、真に、この時の為に弟子達に自分の伝えられる全てを注ぎ込んできたのかという想いもしています。今こそ「未来の覚悟」を高々と掲げよ、と心の中で檄(げき)を飛ばしています。

すべてが変わりゆく世の中で、日々の変わらない営みが突然断ち切られると、人は改めて、変わらずに繰り返される日常の事どもがとてつもなく貴重であったことに気付かされます。
失って初めて、平凡だと思っていた日々が愛しく思われます。
失って初めて気付く人間の悲しい性(さが)です。

今年も、幾人もの人が定年で職場を去っていきます。その人が、組織や職場で如何に掛け替えのない存在だったかは、居なくなって初めてその大きさに気付かされます。
それは、あたかも我々が水、空気の大切さを、普段、認識していないと同じように。

         さらば君  いざや別れむ  わかれては
         またあひは見じ  いざさらばさらば
                                  (若山牧水)

この時季になると、いつも出会いの大切さを思い返します。
人間には、あの人に出会わなかったら、決して今の自分はなかった、という出会いが必ずあります。
しかも、その時にはその出会いが自分の人生を決定づけるような出会いであるとは気付かないというのが、振り返っての実感です。
だからこそ、どの出会いが自分にとって大切かはその時は分からないのだから、一つ一つの出会いを悔いの残らないように大切に、と弟子達、そして周囲に言っているのですが…。

         勧酒
           君に勧む金屈巵(きんくつし)
           満酌辞するを須(もち)いず
           花発(ひら)いて風雨(ふうう)多し
           人生別離足る
                                  (于武陵(うぶりょう))

この詩(vol.27 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=44)は、
井伏鱒二の名訳で人口に膾炙(じんこうにかいしゃ)しています。

         このさかづきを受けてくれ
         どうぞなみなみつがしておくれ
         はなにあらしのたとへもあるぞ
         「さよなら」だけが人生だ

長く生きていると、悲しいかな、今まで出会った友や組織は愛せないが、これから出会う友や組織は愛せるという人が居ることも事実です。こういう人のその後の人生は、その功利性ゆえに随分と寂しいものになってしまうのではないかと案じています。

今週の花材は、執務室は優しさの中の勁(つよ)さ、秘書室は優しさをもった温かさを感じさせてくれます。
花観る人の心にも温かさを、と花材に願う日々です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ダリア〔熱唱〕   キク科/多年草/原産:メ
キシコ/《名前の由来》スウェーデンの植物学者
の名に由来/世界で3万種以上ありとても品種
が豊富。花径が3僂曚匹里發里ら30cm以上
の巨大輪まである。メキシコの国花。
■アンスリュウム〔トロピカルナイト〕   サトイモ
科/常緑多年草/原産:中南米/ツヤツヤの苞
と葉が特徴の南国の花。花びらのように見える
部分は苞で、中心の棒状の部分が花。「トロピカ
ルナイト」は大輪で赤茶系のシックな花色。
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オラ
ンダ/ピンポン玉のようにまん丸く咲く菊。花持
ちのよい菊の中でも、特に長く観賞できる。
■レモンリーフ   ツツジ科/《名前の由来》葉
型がレモンの形に似てることから/良く間違われ
るが、レモンの香りはしない。ブーケなどの添え
葉として人気のグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1671.jpg

【秘書室】
■ハゴロモジャスミン   モクセイ科/常緑
蔓性植物/原産:中国南部/蔓を長くのば
し、先端に30〜40輪の小さな花をつける。蕾
はピンク色で開花する花は白色。花は強い芳
香がある。
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植
物/原産:西アジア〜ヨーロッパ/《名前の由
来》ラテン語の“蛙”(ラナ)に由来。蛙がたくさ
んいる湿地に自生することから/幾重にも重
なる柔らかい花弁が特徴。
■カーネーション〔プラドミント〕   ナデシコ科
/多年草/原産:地中海沿岸/江戸時代に
オランダから渡来。母の日に贈る花として古く
から親しまれる。淡色から濃色、覆色や絞り模
様など、品種がとても豊富。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1672.jpg
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