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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.02.17

vol.161  − 約束 −

この冬は、今までにない、厳しい寒さです。
降った雪が仲々溶けないというのは、福島に赴任して以来、記憶がありません。

         天の原空さへさえや渡るらむ  氷と見ゆる冬の夜の月
                                       (恵慶法師)

この有名な歌そのままの情景が、今、目の前に展開しています。

福島で、冬を実感する景色の一つに鉄路のトンネルがあります。
この長いトンネルは、福島盆地の南の端に位置しています。上り、下りともトンネルに入った途端に窓が一瞬にして結露してしまいます。視界はその瞬間にゼロになります。
少し経つと、結露が水の筋を形成して真横に流れ始めます。この水滴の帯が、時間とともに窓一杯に後方に向かって水平に走ります。暫し、まるで滝のように流れ終わると、水滴がすっかりなくなります。
その後、窓は前の透明さを取り戻します。と同時に、列車はトンネルを抜けます。
真冬の間、このような現象がトンネルに入る度にみられます。

鹿児島へ行ってきました。
去年の3月12日に行く筈でした。3月11日、東日本大震災が発生した為に約束を果たせなかったので、約束を果たす為の今回の鹿児島行きでした。
色々な想いが胸を過ぎりました。

夕方、西日が鹿児島の市街を横から覆う時、夕陽を浴びた紅(くれない)の桜島は、噴煙を出している荒々しい山容を、一時(いっとき)、優しく雄大な男々しさに変化させてしまいました。
冬、南国の暖かさを実感しました。

鹿児島に行くたびに訪れる二つの美術館、今回も足を運びました。
一つは長島美術館です。
最初に訪れた時、墓地の中に入っていくので驚きました。桜島や市街地を一望できる美術館の位置は、絶景です。ギリシャ神殿のような建物の設計は、高名な建築家になるのでしょうか。迂闊にして確かめませんでした。地元出身の黒田清輝、藤島武二、海老原喜之助などの作品が豊富に展示されています。
いつも足を止めてしまうのは、シャガールの「緑のバイオリン弾き」です。色、輪郭がはっきりしているので、初期の作品でしょうか。落ち着いた優しさと親しみを感じます。

もう一つは、鹿児島市立美術館です。
フォンターナの赤のキャンバスをナイフで斜めに切りつけた有名な“絵”に再会できました。ルオーの“優しいキリストの絵”もさり気なく掛けられていました。
特別展の「桜島百景」、思いがけず、素晴らしい企画展に出会いました。横山操の大作と加山又造の屏風の前では足が止まってしまいました。多くの画家が如何に桜島に関心を寄せていたのかを知りました。

今週の花材は、執務室は涼やかな気品を感じさせてくれます。今にも翼を羽撃(はばた)かせて飛翔するようです。
秘書室は温かく包む優しさの表現で、訪問者の緊張を一瞬解きほぐすことでしょう。それにしても、クリスマスベルはいつみてもこちらの頬が緩くなってしまいます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■アルストロメリア〔ディバリ〕   ヒガンバナ科/
球根植物/原産:南アメリカ/《名前の由来》スウ
ェーデンの植物学者アルストレメールの名前から
/南米に50種ほど分布。一本の茎から花茎を伸
ばし5〜8輪の花が咲く。ユリを小さくしたような花
姿で、花びらに入る独特の斑が特徴。
■カラー〔ウェディングマーチ〕   サトイモ科/球
根植物/原産:南アフリカ/江戸時代にオランダ
から渡来。花びらに見える部分は苞で、その中の
棒状の部分が花。結婚式のブーケによく利用され
る。
■モルセラ   シソ科/一年草/原産:シリア/
《名前の由来》当初、原産地と間違えられたモル
ッカ諸島から/ミントのような芳香がある。花を包
むような大きな緑色のガクを観賞し、グリーンとし
て利用。大きなガクが二枚貝のように見えること
から「シェルフラワー」の別名をもつ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1611.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)



【秘書室】
■サンダーソニア   ユリ科/球根植物/原産:南アフリカ/
《名前の由来》発見者サンダーソンの名前から/細い茎に下向き
でベル型の花がいくつも連なって咲く。ランプを灯したようなオレン
ジ色の可愛い花姿。原産地でクリスマス頃に咲くことから「クリス
マスベル」の別名をもつ。
■ピンクッション   ヤマモガシ科/常緑低木/原産:南アフリカ
/《名前の由来》針山(ピンクッション)に似た花姿から/独特な
花姿と南国らしい色合いが特徴。待ち針のように見えるひとつひ
とつが雄しべ。
■カーネーション   ナデシコ科/多年草/原産:地中海沿岸/
江戸時代にオランダから渡来。菊・バラと並び、世界的にも生産
量の多い主要花。今回は一本の茎が分岐し、数個の花が咲くス
プレー咲きのグリーンを使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1612.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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