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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.01.20

vol.157  − 懐古 −

早や、小寒も過ぎ、畳の目一つずつ日脚(ひあし)が伸びています。
日の入りは明らかに遅くなっており、春を待つ気持ちが募ります。

冬の暁、これ程の千変万化の姿をみせているとは、今まで気付きませんでした。
体調を崩してから、睡眠時間を増やしました。何もせず、表(おもて)を眺めている時間を作っただけで発見した事実です。

太陽の光、雲、空が綾なして、時時刻刻(じじこくこく)と変わる様は、見ていて飽きるということがありません。短い時間ですが、校舎を紅(くれない)に染めていく時間帯は、圧巻です。
今まで時間、時間と言っていながら、僅かな時間、暁を鑑賞して自省したことは今までありませんでした。
如何に時間を大切にしていなかったか思い知らされました。

花の色彩が乏しいこの時季、南天、千両、万両などの赤い実が、室内外で華やかな点描になっています。
これらの違いは迂闊(うかつ)にも最近まで知りませんでした。
雪の白、天空の群青、そして水仙の白や緑、これらの組み合わせが一際鮮やかです。
 
         一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
                                (山崎方代(やまざき・ほうだい))

雪を背景にした南天を思い描くと、この有名な歌の潔さが迫ってきます。

花の彩りが少なくなるこの時季、室内には啓翁桜、紫と白いピンクの混ざったスイートピーを組み合わせ、あるいは一点でヒヤシンスの紫を配すると春の気配を感じることが出来ます。

1月16日は「藪入り」です。今は落語の世界にしかその姿を留めていません。
只、正月やお盆の帰省が、今にその伝統を伝えているようです。時が移り、故郷に親が居なくなると、この形がどのように変化するのか、日本人の精神のあり様にも関係してくるのでしょう。

私事ですが、私にとっては大関貴ノ花の引退(1981年1月16日)が忘れ難い思い出として心に残っています。
彼は、一世を風靡した、今や伝説的な名力士です。彼は若い時から、そして引退後も、治療と保養を兼ねて私の実家を定期的に訪れ、長期に渡り滞在していました。
彼の、父と話す時の礼儀正しさや丁寧な言葉遣いは、私自身、教えられることが多くありました。小さな体で、直向きに闘う姿勢が、あれ程の国民的な熱狂を巻き起こしたのでしょう。

印象に残っているのは、2代目若乃花(若三杉)が父の墓前で土俵入りをした時のことです。
前例のないことを行うことの周囲の反対、土俵入りの写真を町の広報誌に使ったことへの建前論での反対、そして自ら進んで太刀持ちを買って出た貴ノ花の唇を噛みしめた凛々しい姿などを、今でも鮮やかに思い出すことが出来ます。

今週の花材は、執務室は、いよいよ桜の登場です。
秘書室は、カラーの白と緑に愛らしいスイートピーが協演です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■啓扇桜(ケイオウサクラ)   バラ科/冬に咲く桜として人
気の枝物用の園芸品種。寒冷な気候を利用した促成栽培に
よるもの。花付きが良く、薄紅色の花を次々と咲かせる。一般
的な桜と異なり太い幹が無く、ディスプレイやアレンジに使い
易い。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1571.jpg
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【秘書室】
■カラー〔ウェディングマーチ〕   サトイモ科/球根植物/原
産:南アフリカ/《名前の由来》メガホン状の苞がYシャツの襟
(カラー)に似ていることから/江戸時代にオランダから渡来。
別名「阿蘭陀海芋」(オランダカイウ)“オランダから来た芋”とい
う意。花びらに見える部分は苞で、その中の棒状の部分が花。
■スイートピー   マメ科/一年草/原産:地中海沿岸/明治
大正時代に渡来。ひとつひとつの花が蝶のような花姿で、甘い
香りを放つ。チューリップ、フリージアとならぶ春の代表花。花
色が豊富で、パステル系〜ビビッドなものまで多品種ある。今
回はパステル系のピンクとパープルを使用。
■ブプレウルム   セリ科/一年草/原産:ヨーロッパ・中央
アジア/爽やかなライムグリーンの葉。茎が葉の中央をつきぬ
けるのが特徴。主にグリーンとして流通するが、黄色い小さな
花が集まって咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1572.jpg
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