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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.10.21

vol.145  − 晩秋 −

庭の金木犀(キンモクセイ)、香りが辺り一帯を包んでいます。
室内も秋です。藤袴(フジバカマ)とホトトギス、季節を取り入れることで少し心が落ち着きます。

会津に行ってきました。
見渡す限りの田圃、稲刈りが終わろうとしていました。刈り取りの終わった田の薄茶色、終わっていない稲穂の黄金色、その中に秋桜(コスモス)が点在して蝦夷錦(えぞにしき)をみるようでした。

鉄路の窓の外には、刈り終わった田圃、神社の杜と思しきところに祭礼の墨痕(ぼっこん)鮮やかな幟(のぼり)、落ち穂をついばむ鳥、晩秋の伝統的な風景が、穏やかな光のもとに展開されています。
一年の仕事を終えた農家の方々の達成感が少し分かるような気がします。この変わらない風景がいつまでも続くように…。
昔は、その後に豊作を感謝しての祭りがあり、疲れを癒す湯治(とうじ)の慣習が私の子供の頃はまだ残っていました。人が作った季節の区切りです。

時間の連続性のなかに季節という非連続の存在、ハレ(晴れ)とケ(褻)、人々は自然に寄り添って一年の生活の中にリズムを作ってきたのではないのでしょうか。

連続した時間の中で、生活や仕事に区切りをつけることは、世間智の一つのように感じます。
そんなことを考えていて、前庭に目をやると木々の紅葉が始まっていました。ここの美しさは以前にも述べましたが(vol.54、101)、今年は木々の色の移ろいに目がいかなかった心の不在に愕然としました。
   (vol.54 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=80
   (vol.101 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=129

         落葉焚くあをきけむりはほそほそと
         木の間を縫ひて夕空へ行く
                          (若山牧水)

この歌の持つ透明感を伴った静寂さに惹かれます。いつこの心境に戻れるのか…。

「何かをみれば何かを思いだす」、私も一日のリズムを作り、切り替える儀式を持っています。
教授時代は、出勤したら、先ず医局を整理整頓し、コーヒーを湧かす。定時に病棟へ行く。仕事の区切りには抹茶を喫する。
今は、電気ポットに水を入れ、香を焚き、音楽を鳴らし、前日から出勤時までに溜まった仕事の片付け、そして会議開始を待ちます。

電気ポットの側には仕立ての良い布巾が置いてあります。弾けた水を拭き取るためです。
布巾を見ると、小学校か中学か記憶が朧気(おぼろげ)ですが、家庭科という授業がありました。雑巾縫いが課せられると、自宅から使い古した手拭いを持ってきて縫うのです。これが私には苦手で、3針か4針で一片が終わってしまいます。結果、いつも家庭科は2か3でした。

10月17日、ピアノの詩人ショパンが亡くなっています(1849年)。
生誕200年、彼の烈しさと諦念の入り混じった音楽は、今でも多くの人々に愛されています。
彼は、生前、幻覚に悩まされており、その原因は側頭葉のてんかんではないかという報告があります(Medical Humanities 37:5−8,2011)。天才といえど病には悩まされていたようです。

今週の花材は、執務室は秋を、秘書室は緑で慌ただしい雰囲気を和らげてくれています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■珊瑚水木(サンゴミズキ)   ミズキ科/落葉低木/《名
前の由来》冬になると枝が珊瑚のような鮮やかな色に染ま
ることから/白玉水木(シラタマミズキ)の変種。初夏に白い
小さな花が咲き、秋に白い実を付ける。美しい枝色を楽しむ
花材として流通。
■ドラセナ(コーディラインカプチーノ)   リュウゼツラン科
/常緑低木/原産:熱帯アフリカ・熱帯アジア/日本で出
回る観葉植物の代表種。「コディラインカプチーノ」は正式に
はドラセナでなくコルジリネ。以前ドラセナ属に分類されてい
た為、現在も「ドラセナ」の名で流通。
■菊(フエゴ)   キク科/多年草/花びらの表と裏の色が
異なる巨大輪品種。一本でも存在感があり、花持ちも良い。
他に無い花色が魅力のカッコいい菊。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1451.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■鉄砲ユリ   ユリ科/球根植物/原産:日本/《名前の
由来》鉄砲に似た花形から/OHユリやLAユリなどと異なり、
花の形が筒状で横向きに咲く。沖縄では自生種が群生する。
■ハラン(旭ハラン)   ユリ科/多年草/江戸時代から生
け花に利用されている青々とした大きな葉。「旭ハラン」は葉
の先端に白い斑が入る品種。他に、縦縞の斑が入るものや
点々の斑が入るものもある。
■オキナワスズメウリ   ウリ科/蔓性一年草/2cm程の
実をつけ、とっても小さいスイカのような姿。緑から赤に色付
き、赤くなった姿も可愛い。よく似ているスズメウリ、カラスウ
リとは別属。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1452.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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