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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.09.09

vol.139  − 秋雨 −

玄関先にある山茶花(サザンカ)の生垣の中から、薄紫の木槿(ムクゲ)が顔を出していました。
ここ一週間、健気に送り迎えに顔を出し続けてくれています。優しい贈り物、朝晩、声を掛けて通っています。道傍には、最近人気がない鶏頭(ケイトウ)も目につきます。

室内では、紫のアスター(蝦夷菊〔エゾギク〕)と黄色の向日葵(ヒマワリ)を投げ入れています。
秋の花は暑さに弱く、店には未だ出ていません。

早朝の庭、テラスが雨に濡れ、寂寥(せきりょう)感が募ります。
         あめつちにわれひとりゐてたつごとき
         このさびしさをきみはほほゑむ
                          (会津八一)
学生時代、古都巡りをしていた自分にとって、会津八一は憧憬の人です。
彼の歌に漂う寂寥感に昔から惹かれています。

         くさぐさの実こそこぼるれ岡のへの
         秋の日ざしはしづかになりて
                          (斎藤茂吉)
郷里の山形で詠ったそうですが、この景色と景色に寄り添う穏やかな心境は、昔どこかで感じた記憶があります。
一日でも、この心境になれればと願いながらの毎日です。

9月8日、ドヴォルザークの誕生日です。
日本語表記ではこうですが、海外の友人達に彼の名前の発音が通じたことがありません。文献によってはドヴォシャークと書いてありますが、彼等から教えられる正しい発音は、私にはお手上げです。

若い時からドヴォルザークとチャイコフスキーの曲が大好きで、同じ曲のCDを何枚も持って聴き較(くら)べています。彼等の哀愁を湛(たた)えた、感傷的なメロディーは、私には演歌のように聞こえます(クラシック趣味の人に叱られるのは覚悟しています)。

教授時代、学生達に「美空ひばりからベートーヴェンまで」といって執務室のCDラックをみせて、半ば呆れられていました。
私は、「クラシックが高級で、ジャズや流行歌(今は死語か)は低級」という世間の受け止め方に昔から違和感を持っていました。事実、ドイツの作曲家達と比べて、「彼等は構成力が弱い」など、プロの人達からの評価が高くないことは知っています。
学生達には、「100年たったら今のポップスもクラシックになる」と言い、音楽に限らず、固定観念に捉われずに向かい合うことの大切さを説いていました。

最近、自分のそんな思いが間違っていなかったことを教えてくれた本に出逢いました(石井宏「反音楽史 さらば、ベートーヴェン」)。
「ポップスもクラシックも差がなく、モーツァルトからロイド・ウェッバーまで一視同仁(いっしどうじん)の世界」と断じていました。文学賞を取った本なので、プロからも高く評価されているのでしょう。

今週の花材は、執務室は落ち着いた清冽な秋、秘書室は魚籠(びく)を据えて秋の演出です。
私の気に入っている“花器”です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ノバラ   バラ科/落葉低木/原産:日
本・朝鮮半島/別名「野茨」(ノイバラ)/花期
は5〜7月頃で、小さな白い花が咲く。今回は
花後の青い実の状態を使用。実は秋になるに
つれどんどん赤く色付く。
■ワレモコウ   バラ科/多年草/枝の先端
にある茶色の実のように見える部分が小さな
花の集まり。日本全土の山野に自生し、花期
は7〜10月頃。根はタンニンを多く含み、漢方
では止血薬などに用いられる。
■LAユリ(シガロン)   ユリ科/球根植物
/鉄砲ユリと透かしユリの掛け合わせ品種。
透かしユリのような花姿で、花持ちが良い。
「シガロン」は大人っぽいワインカラー。
■ドラセナ(コーディラインレッド)   リュウゼ
ツラン科/原産:熱帯アジア・熱帯アフリカ/
日本で流通する観葉植物の代表的な品種。
「コーディラインレッド」は赤色葉のドラセナ。
(正式にはコルジリネ)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1391.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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【秘書室】
■風船唐綿(フウセントウワタ)   ガガイモ科/夏に
小さな白い花が咲き、トゲトゲした紙風船のような実を
つける。晩秋に実が熟すと、パカッと割れて綿毛と種
があらわれる。切花としては花ではなく実を観賞する
ために流通。
■アンスリュウム(バタフライ)   サトイモ科/原産:
熱帯アメリカ/花のように見える部分は苞で、中心の
棒状の部分が花。熱帯の花なので暑さに強く、切花で
も長く楽しめる。「バタフライ」は白色の苞の両端が緑
色の品種。
■ベアグラス   ユリ科/原産:北アメリカ西部/細く
長い線状のしなやかな葉。束ねたりカールさせたりと、
いろいろな利用ができるグリーン。非常に丈夫で、篭を
編む材料に使用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1392.jpg
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