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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.07.15

vol.132  − 夢幻 −

家を空けていて、木戸口を開けてみたらハグロトンボが2輪ほどの花をつけた玄関脇の梔子(クチナシ)の植え込みの上を舞っていました。去年も同じ頃だったように思います。
  (vol.38 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=62
  (vol.88 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=114
東京でも歩道沿いの生垣の梔子が花を付けているのを見付けました。この梔子、先日、出雲での講演の後の会食の部屋に紫陽花(アジサイ)と一緒に投げ入れされており、香りで気付きました。
梔子の季節到来です。

この時季の通勤路、葵(アオイ)と紫陽花が主役です。来週はまた変わるのでしょう。

古代の歴史観を根底から覆した荒神谷遺跡を見学させて戴きました。
豪雨の中でしたが、一時(いっとき)、古代にタイムスリップできました。大賀ハスが満開で、雨の中に煙り(けぶり)、夢幻のようでした。この種子が2000年前のものかどうかについては異論もあるようですが…。

出雲大社は、60年に一度の御修造中でした。権宮司様の案内で修造中の本殿を拝観できたのは僥倖(ぎょうこう)でした。「葬られた王朝−古代出雲の謎を解く−」(梅原猛)を再読せねばと思いました。
それにしても、先人達の知恵と工夫には驚くばかりです。何をもって「進歩」というのかがよく分からなくなりました。

福島への帰路、那須の嶺々の麓の那須野が原が霧の中に浮かんでいるのが目に入ってきました。
その途端、車軸を流すような雨が列車の窓を打ち、視界が全く効かなくなりました。
陸奥(みちのく)の玄関である白河に入ると、一転、空は夏雲でした。

この変化を愛(いとお)しむことを最近覚えました。
以前の車中は、役目を終えたコピー用紙を裁断して作った手製のメモ紙には、論文の要旨であったり、研究上のアイディアや疑問、あるいは組織運営上の課題を書き殴るだけでした。原発事故に向き合うようになってからは、詩や唄の思い出であったり、窓からの情景から湧いてくる断片的な文章が加わりました。

そんなことを考えていると、西の山壁は奥羽山脈の深い嶺に変わってきます。
その奥には、20年以上前に勤めていた病院があります。この辺りを通過中、当時の患者さん、職員、町の人々を思い出すことが、心のバランスに重しをつけてくれます。

         被曝しつつ放水をせし自衛官
         その名はしらず記憶にとどめよ

長谷川櫂の「震災歌集」は、読んでいて胸に迫るものがあります。
私は「大津波」を「放射能」と読み替えて読んでいます。

今週の花材は、執務室は、一転、穏やかな静謐を、秘書室はガラスの花器と一体になって清々しい初夏を演出しています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■鉄線   キンポウゲ科/蔓性多年草/原産:中国/
《名前の由来》蔓が細く丈夫で針金のようであることから
/フェンスや支柱に蔓を絡ませて育つ。クレマチスの一
種。クレマチスはギリシャ語の“Clema”(巻き上げる・つ
る)が語源。
■ユーカリ   フトモモ科/常緑高木/原産:オーストラ
リア/コアラの食べる木として有名。オーストラリアを中
心に約600種ほど分布。オーストラリアの森の3/4がユ
ーカリ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1321.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■縞ススキ   イネ科/多年草/原産:日本
/ススキの園芸品種。縦に白色の斑が入るの
が特徴。他に、葉の細いイトススキや葉に黄
白色の斑が入るタカノハススキもある。
■アンスリュウム   サトイモ科/常緑多年
草/原産:中南米/花弁のように見える部分
は仏炎苞で棒状の部分が花。南国の原産の
花なので暑さにも強く、苞を観賞しているため
長期間楽しめる。今回は白色の「ホワイトヘブ
ン」を使用。
■ドラセナ   リュウゼツラン科/原産:熱帯
アジア・熱帯アフリカ/日本で流通する観葉植
物の代表種。葉姿も様々で約50種ほどある。
丈夫で日持ちのするグリーン。
■アガパンサス   ユリ科/多年草/原産:
南アフリカ/《名前の由来》ギリシャ語の“アガ
ベ”(愛)と“アンサス”(花)の2語から/園芸
品種は300種以上あり、草丈や開花時期など
バラエティに富む。花茎の先端に数十輪の花
が放射状に開花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1322.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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