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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.06.10

vol.129  − 感謝 −

今年初めて郭公(カッコウ)の声を聞きました。そのうち鶯(ウグイス)との競演になり、夕暮れの中、しばし二重唱を楽しみました。
室内には梅花空木(バイカウツギ)、芍薬(シャクヤク)を設(しつら)えて、翌週の準備で梅雨入り前の日曜日を過ごしました。

視線を上げて大学構内を歩いていると、中庭に聳え(そびえ)立つ大木、ユリノキに咲く大輪の花に気付きました。梅雨空、エゴノキがあちこちで花を咲かせていました。
考え事をしながら下を向いて歩いていると、散り敷かれている様で初めて存在を知ります。
上を向いて歩くだけで別の世界が拓けます。

今、この時でも、昼夜を分かたず命を賭して原発事故の収束にあたっている関係者に、心からの感謝と支援の気持ちを届けたい想いです。
人間は、「知られざるを憂えず」という志だけでは頑張れないものです。何故なら、「士は己(おのれ)を知る者の為に死す」(司馬遷)だからです。
ここに少なくとも一人、黙々と作業している方々に祈るような気持ちで感謝している人間がいることを現場の人に知ってもらえれば、筆を執った甲斐があります。

私の今の細(ささ)やかな夢は、原発事故収束後のしみじみしとした酒宴の設定です。
そして、この詩のような気持ちになってその場で眠り込む、これが最高です。勿論、この時は、最早、寝ぼけて仕事の話などすることはないでしょう。

         酒を把らば直ちに須(すべから)く判して酩酊すべし
         花に逢はば暫く淹留(えんりゅう)するを惜しむ莫れ
         假如(たとえ)三万六千日なるも
         半ばは是れ悲哀  半ばは是れ愁い
                                杜牧「寓題」

この宴(うたげ)には、アルコール度数が低い酒としてワイン、できればシャンパンがいいです。
何故なら、長い時間語り合いたいからです。問題は、相手をしてくれる弟子や同士が居るかです。

シャンパンは、悲しみにも、喜びにも合うように感じます。
映画の印象的な場面にシャンパンがよく出てきます。我々の世代は再上映やテレビでみている、歴史に残る名訳「君の瞳に乾杯」(高瀬鎮夫)の「カサブランカ」(1942年)でのマム・コルドン・ルージュ、「ギャルソン」(1983年)のペリエ・ジュエ・ベル・エポック、「プリティ・ウーマン」(1990年)のモエ・エ・シャンドン・ブリュット・アンペリアルなどで、シャンパンが効果的に小道具として使われています。

6月5日は、今度の震災で再び脚光を浴びている後藤新平の誕生日です(1854年)。
彼は、本学の前身である須賀川医学校で医学を学んでいます。当時の解剖実習の写真が、今も本学実習室に掲げてあります。

今週の花材は、テーマは初夏です。
執務室は乾いた空気を、秘書室は前々号と同様にモネの画で感じる“風”を演出しています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)



※編集註:海外出張で学内不在となるため「理事長室からの花だより」は2週間の休載をいただきます。
次回掲載は7月1日(金)予定です。

今週の花


【理事長室】
■グズマニア(ヴィノ)   パイナップル科/常緑多年草
/原産:南アメリカ/鮮やかな色が目を引くトロピカルな
花。花に見える部分は苞で、花は小さく苞の間に咲く。
「ヴィノ」は鮮やかな赤色。他に鮮やかなオレンジや黄
色、シックな紫系の品種もある。
■モカラ(ムーンライト)   ラン科/原産:東南アジア/
バンダ、アラクニス、アスコケントルムの3種の蘭を交配
した人工種。南国の花なので暑さに強く抜群の花持ち。
「ムーンライト」は鮮やかなレモン色。
■アンスリュウム(みどり)   サトイモ科/多年草/原
産:中南米/ツヤツヤで光沢があり、大きく独特な花姿
が特徴。花弁のように見える部分は苞で、中心の棒状
の部分が花。苞を観賞するため、長期間楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1291.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ブルースター(ピュアブルー)   ガガイモ
科/多年草/原産:ブラジル/《名前の由来》
淡い水色の5枚の花弁が星のように咲くことか
ら/花はベルベッドのような質感で、葉は産毛
に覆われている。「ピュアブルー」は従来のブ
ルースターより花弁が丸く、可愛く咲く品種。
■カーネーション(プラドアクイラ)   ナデシコ
科/多年草/原産:地中海沿岸/母の日の
花として、古くから親しまれる。スタンダードな
花色から絞りや覆色の個性的なものまで品種
が豊富。江戸時代にオランダから渡来。
■カスミ草(ホワイトロード)   ナデシコ科/
多年草/原産:地中海沿岸・中央アジア/明
治時代に渡来。日本で作付けされるようになっ
たのは昭和50年頃から。花束などの添え花と
して根強い人気がある。
■ギボウシ(フランシー)   ユリ科/多年草
/原産:日本・中国/葉色が綺麗で観賞価値
の高いグリーン。花期は初夏から秋。花は寿
命が短く、一日で萎む。(英名:ディリリー)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1292.jpg
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