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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.06.03

vol.128  − 衣裂(きぬさ)き −

庭で跳ねる水飛沫(みずしぶき)で雨を視て、庭木の葉擦れで風を聴いています。
自然の中に身を置き、雨を視、雨と風の音を聴くのは、一時(いっとき)、心を無にしてくれます。

庭のエゴノキが白い花を咲かせているのに気付きました。いつもは、路上に落花した様をみて気付くのですが…。
山法師(ヤマボウシ)も咲き出しました。
以前にも書きましたが執務室から見下ろす山法師、そしてエゴノキは、白と緑の対比が鮮やかです。
 (vol.34 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=54
 (vol.80 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=106

この時季の歌、
         春過ぎて夏来るらし
         白栲(しろたえ)の衣干したり天の香具山
                                持統天皇
この歌は、季節の移ろい(衣更え)とともに、空の青、木々の緑、そして衣の白の対比を意識して詠んでいるのでしょう。

6月は更衣えです。近頃は季節も乱調で、旧暦のそれとは益々合わなくなってきています。
私は5月半ばから単衣(ひとえ)に衣更えをしてしまいました。帰宅したら着物、季節の変わり目は衣更え、私にとって、気持ちの切り替えにはなくてはならない儀式です。

家ではいつも着物を着ているので、衣桁(いこう)と衣紋掛け(えもんかけ)は必需品です。世間では、これらの言葉は既に死語になっているのでしょうが、私には尚、現役です。

衣紋掛けの衣は“エ”と呼び、衣桁の衣は“イ”と呼びます。私のなまりのせいかと思っていましたが、昔に伝承した語法が、当時のまま今に伝わってきているのでしょう。

         越後屋に衣(きぬ)さく音や衣更(ころもがえ)
                                其角(きかく)

「何を見ても何かを思い出す」(ヘミングウェイ)、生地を裂く音は、私自身、子供の頃よく経験したので、この歌には生地を裂くときの音の鋭さ、そして裂く人の気合いのような空気も込められているのを感じます。

「ほねつぎ」の子として診療室で遊んで育った私は、仕事の合間に、父が包帯にするために晒し(さらし)生地を裂いているのを間近で見てきました。巾7僂曚鼻計ったように裂いていく父と相対して生地を必死で掴んでいました。
この時に“衣裂く作業”の持つ雰囲気、生地を裂く時の音、裂く時に生地を持つ手に伝わる衝撃、今でも鮮明に覚えています。と同時に、衣裂きの先端が自分の手許で留まり、個々の裂け目が一直線に横に揃っていることに、幼な心に“熟練”を感じ取りました。

6月2日は、本能寺の変のあった日です(1582年)。
歴史の転換点には深い闇が常に付きまといます。この事件はその最たるもので、私の書棚をみてみるとプロ、アマ問わずノンフィクション、フィクション多数の書籍があることに自分でも驚きます。

今週の花材は、執務室は森の中の紫という景色を、秘書室は一転、夏の到来の予感です。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■スモークツリー   ウルシ科/落葉高木/
原産:中国〜南ヨーロッパ/別名「煙の木」
「霞の木」。名前の通り、煙がモクモクしている
ような姿が特徴の木。独特のフワフワは花後
に花序が伸びたもの。花自体は小さくあまり目
立たず、花後の姿を観賞。
■アリウム(ハヤト)   ユリ科/球根植物/
原産:中央アジア/ネギやニンニクと同じネギ
属の花。茎をカットするとネギの匂いがする。
葱坊主のように小さな花が密集して球状にな
る。「ハヤト」は小輪の「丹頂アリウム」より一
回り大きく、薄紫色の花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1281.jpg
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【秘書室】
■向日葵(サンリッチマンゴー)   キク科/
一年草/原産:北アメリカ/《名前の由来》太
陽を追うように花の向きが回ることから/実際
に花の向きが太陽を追うのは花首の柔らかい
若い時期のみ。夏の代表的な花。「サンリッ
チ」シリーズは花粉のでない品種。他にサンリ
ッチ「レモン」、「パイン」、「オレンジ」などもあ
る。
■ブバルディア(ロイヤルホワイトシュープリ
ム)  アカネ科/原産:中央アメリカ・メキシコ
/《名前の由来》ルイ13世の従医、パリ王国
庭園の園長ブバールの名より/十字型に咲く
小さな花が集まって次々と開花。「ロイヤルホ
ワイトシュープリム」は白色の一重咲き品種。
■利休草   ビャクブ科/原産:中国/茎の
先端が蔓状になるしなやかで涼しげなグリー
ン。水揚げも良く日持ちする。江戸時代に薬用
として渡来。根にアルカロイド系の成分が含ま
れ、駆除剤などに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1282.jpg
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