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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.05.27

vol.127  − 哀惜 −

抜けるような青い天空が続いています。
修業時代に滞在したカナダや毎年訪れているスウェーデンの5月を想い出します。只、福島では、青空の下、はしゃぎ廻る子供達の姿が少なく、“失ったものでしか語れないことがある”情景になってしまいました。

それでも時は河のように流れ、人も移ろっていきます。
今朝(執筆日:5月23日)、道傍のあちこちに、突然、真っ白い塊が目に入りました。贋(ニセ)アカシアでした。
大学の近くではツバメが乱舞していました。

アカシアと言えば、北海道、そして「この道」(北原白秋作詞、山田耕筰作曲)が、すぐ頭に浮かびます。
60年安保世代には、「アカシアの雨がやむとき」という歌謡曲が時代を象徴する歌として有名で、我々の世代でもよく口ずさんでいたものです。

原発事故による爆発の時、約3.5kmしか離れていない病院へ診療応援に行っていた弟子達が緊急避難に出会(でくわ)して、帰らずに最後までスタッフ達を手伝っていたことを知りました。
「彼等が居なければ、浮き足立って総崩れだった」と関係者に感謝されました。
このような弟子達と時を一緒にしたことに誇りと喜びを感じます。
入学辞退者や入学後の条件変更の申し出などで、遣り切れない気持ちで日々の業務をこなしていただけに、「疾風に勁草(けいそう)を知る」想いです。

5月21日、野口英世がガーナで死亡した日です。
戦前の教科書の反動からか、あるいは彼の若い時の破天荒な所行からか、今では評価が揺らいでいます。

私を支えて下さっていた同僚が、最近、野口英世記念医学賞を受賞しました。
立場上、少し勉強してみました。彼は、晩年、ウイルスの存在を知っていたこと、自分の発見した病原体の幾つかは細菌でなく今でいうウイルスであることを認識していたこと、そして自分の研究手法の限界までもを意識していたこと、などを知りました。
後から他人が色々言うのは簡単です。しかし、彼の尋常でない努力と業績は、当時の世界の科学者達や研究所の創設者から尊敬を受けていたことは、彼の壮烈な死後、米国政府の御遺体の扱いから充分窺(うかが)えます。私のような“一番でない人生”を納得して歩いている人間からみると、只々、“凄まじい”の一言に尽きます。

5月22日はワーグナーの誕生日です(1813年)。
最近出た本「音楽で人は輝く」(樋口裕一)で、ブラームス派とワーグナー派があるということを初めて知りました。

今週の花材は、執務室は梅雨入り前の爽やかさを、秘書室はモネの「日傘の女」を連想させる“風”を感じます。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ユリ(ビビアナ)   ユリ科/球根植物/優
雅な花姿と芳香で人気のオリエンタルハイブリ
ット系の品種。「ビビアナ」は濃いピンク〜赤で
発色の良い花色。
■モルセラ   シソ科/一年草/原産:シリ
ア/《名前の由来》インドネシア・モルッカ諸島
原産と間違えられたことから。爽やかな色と独
特の茎のラインが特徴のグリーン。ミントのよう
な芳香がある。グリーンとして使用するが、春
に白い花も咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1271.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■二ゲラ   キンポウゲ科/一年草/原産:ヨーロッパ/和名「種
草」/《名前の由来》ラテン語のNiger(黒い)より、種が黒色である
ことから/花弁のように見えるのはガクで、花弁は退化している。花
後に風船のような実になり、黒い種が出来る。
■ムーンライト   イソマツ科/多年草/原産:地中海沿岸/宿根
性スターチスの種間交雑により育成されたハイブリッドスターチス。
花落ちなどの心配もなく、長期間楽しめる。ドライフラワーにも適す。
■トルコギキョウ(小夏ハニー)   リンドウ科/原産:北アメリカ/
花色や咲き方、花の大きさなど品種がとても豊富。近年は矮性種が
つくられ、花壇や鉢植えでも楽しめる。「小夏」シリーズは小輪タイプ
の八重咲き品種。夏の花なので比較的暑さにも強く花持ちが良い。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1272.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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