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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.04.28

vol.123  − 瀬音 −

この時季、屋内には芍薬(シャクヤク)、花菖蒲(ハナショウブ)、ストック、屋外の紫の筋の入った辛夷(コブシ)や紫木蓮(モクレン)、そして蘇芳(スオウ)をみていると、紫の色が多いのに気付きます。
色彩豊かな季節の到来です。

雪解け水の増加のせいか、枕元に側を流れている川からの瀬音が耳元まで届いてきます。
  (vol.45 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=70
就寝時、瀬音を聞きながら眠りに入るのは最高の贅沢です。

瀬音と言えば、
         あしひきの山川の瀬の響(な)るなへに
         弓月が嶽に雲立ち渡る
                                柿本人麻呂
はあまりにも有名です。
瀬音は、多くの歌謡曲にもモチーフとして取り上げられています。皇后陛下の歌集の題が「瀬音」です。

深夜、仕事の合間、30年も前に出会い、その後、家族の病気や本人の怪我でも相談を受けた患者さんから送って戴いた「クレーの絵本」(谷川俊太郎)や「約束 ― 「無言館」への坂を登って」(窪島誠一郎)を繙(ひもと)いて、心のクールダウンを図っています。
以前から、ミロの絵にクレーに似た雰囲気を感じていました。後年、明らかな影響を受けたことを本で知りました。ルオーにも似たようなものを感じます。共通するのは、温かさと希望でしょうか。
無言館に関する本も、「葉っぱのフレディ」(レオ・バスカーリア)と同様に児童書ですが、静謐な希望を感じさせてくれます。

この時季、通勤路に、菜の花の群生をみることができます。
司馬遼太郎や伊東静雄の命日は、菜の花忌とされています。菜の花を愛する人は多いようです。
 
         くさかげの名もなき花に名をいひし
         初めのひとの心をぞ思ふ
                                伊東静雄
この歌から透明度の高い優しさを感じます。

最近、「先入観の危うさ」ということを考えてしまいます。
例えば、鎌倉には鎌倉時代の建物が一つも残っていません。古都京都といっても洛中には平安時代の建物は皆無だそうです(「芸術新潮」2010年11月号)。
昔の自然は現代より豊か、という印象も違うようです(小椋純一「植生からよむ日本人のくらし」)。
鎌倉幕府滅亡時、北条高時が自害する時、鎌倉だけで6千人も後を追っているのです(今野信雄「鎌倉武士物語」)。評判の悪い最後の将軍が、鎌倉庶民にこれ程慕われているとは思ってもいませんでした。これは、「無常」にも繋がります。

今週の花材は、執務室は春を代表する木と草々の花の組み合わせです。ゴシック建築を思わせる天上に向かっての祈りを感じます。
秘書室は、緑のグラデーションです。アナスタシアの淡い緑が心に染みます。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■花蘇芳(ハナズオウ)   マメ科/落葉低木/原産:中国/葉
が出る前に、紅紫色の花を枝いっぱいに付ける。花期は4月で、
蝶形の花。江戸時代に渡来。白色の花を咲かせる「白花花蘇芳」
(シロバナハナズオウ)もある。
■トルコギキョウ(小夏オレンジ)   リンドウ科/一年草/原
産:北アメリカ/「小夏」シリーズは小輪タイプの八重咲き品種。
「小夏オレンジ」はピンクとオレンジが混ざったような可愛らしい花
色。他に「小夏ハニー」「小夏ガール」もある。トルコギキョウは花
色や大きさ、咲き方が様々で多品種ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1231.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)




【秘書室】
■アリウム(丹頂アリウム)   ユリ科/原産:ヨーロ
ッパ/花序の上部と下部の花色の変化が面白い花。
ユリ科ネギ属の花で、鋏を入れるとネギの匂いがす
る。くねくねした茎は成長途中の細工によるもの。
■アナスタシア(ライム)   キク科/多年草/花弁
が花火のように広がる大きな菊。「ライム」は爽やかな
淡緑色で、他にピンクやブロンズ、黄色、白などもあ
る。通常の菊と違い、供花よりも祝花としての利用が
多い。
■ユーカリ(銀世界)   フトモモ科/常緑高木/原
産:オーストラリア/オーストラリアを中心に600種ほ
どあり、コアラの食用樹として有名。「銀世界」はシル
バーリーフの品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1232.jpg
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