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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.04.08

vol.120  − 一場 (いちじょう)の夢 −

県と役割分担し、我々が担当した原発事故退避圏内・外の医療機関や介護施設からの大学病院への受け入れと、県内各地への再転送のセンターとしての機能が、ここ数日、ようやく落ち着いてきました。
24時間体制が遺漏なく遂行できたことは、院長始めスタッフの努力の賜物です。

“自画自賛”を承知のうえで記します。
国や県との緊密な連携のもと、大学は一丸となって、この任務を、自衛隊、消防署、自治体、そして医療・介護関係者の協力の下に、無事にやり遂げることが出来ました。
病院機能の維持の為、職員の燃料確保と水道復旧に、政府や自衛隊始め多くの組織から善意を戴き、辛うじて病院機能を維持できました。
これらの支援なくしては使命の遂行は不可能でした。
関係者全員に只感謝です。

普段なら、今頃は、福島市内の花見山、三春の滝桜といった花の名所に全国から観光客が押し寄せてくるところです。
しかし、今の福島は、地震、津波、そして先の見えない原発事故で、そんな雰囲気はまるでありません。

上手くなった鶯(ウグイス)の鳴き声に背中を押されるように毎朝家を出ます。
気を取り直して車に乗るまでに心の切り替えを必要としているこの頃です。

地上では、いつも土色に濁っている、濁川(にごりがわ)に架かっている木橋に目をやると、橋の下に鴨たちがゆったりと泳ぎ廻っています。
天上には、雲一つない青空が沈黙して広がっています。
原発事故の前と後では自分の環境は勿論、世相は一変したのに、自然は微動だにせず時を刻んでいます。

通勤路には、紅・白の梅、日当たりの良い場所に早咲きのしだれ桜が、庭や構内の生垣には寒椿と山茶花(さざんか)といった花々が、ここでも何事もなかったように、移ろいのあることを知らせてくれます。

         世は一場(いちじょう)の春の夢
                                 (土井晩翠「天地有情」)
この詩歌が、深夜、本を繙いている時脳裡を過ぎります。

         “Life is but an empty dream!”
             〔人生はうつろな夢に過ぎぬ〕
                                 (H.W. Longfellow 「A Psalm of life」)
執務中は一日中、この詩が通奏低音として心の底を流れています。
この歳になって“人生”を見詰め直すことになるとは、考えもしませんでした。

今週の花材は、執務室は桜の登場です。
この彼岸桜は今回の震災で亡くなった全ての人への鎮魂です。
秘書室も、今週は黒の花器で静謐(せいひつ)を表現して、暖色の花を組み合わせています。
これも鎮魂の表現です。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■彼岸桜   バラ科/落葉高木/別名「小
彼岸(コヒガン)」「小彼岸桜」/《名前の由来》
春のお彼岸の頃に開花することから/他の桜
に先がけて開花する品種。花色は淡紅色で一
重咲き。気象庁の発表する桜前線は「染井吉
野」。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1201.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植物/原産:西アジ
ア・トルコ地方/《名前の由来》ラテン語で蛙を意味する“rana”に
由来。自生地が蛙の沢山いる湿地であることから/フワフワした
柔らかい花弁が幾重にもかさなる。大輪咲き品種は存在感があ
り、1本でも見応えがある。
■サンダーソニア   ユリ科/球根植物/原産:南アフリカ/《名
前の由来》発見者サンダーソンの名前から/細い茎にランプを灯
したようなベル型の花がいくつも連なって咲く。原産地でクリスマ
スの頃に開花することから「クリスマスベル」とも呼ばれる。暑さに
も強く、花持ちが良く長く楽しめる花。
■ひまわり   キク科/一年草/原産:北アメリカ/《名前の由
来》太陽(日)の方向に生育することから/太陽のような花を咲か
せる夏の代表花。今回使用したひまわりは小輪咲きタイプの「は
ま丸」。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1202.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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