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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.04.01

vol.119  − 逆境 −

本県での原発事故の発生で、放射能汚染、ライフラインの崩壊、燃料不足などで街は閑散としています。
真に秋風索寞(しゅうふうさくばく)です。
農作物の出荷、摂取自粛は、農家にとっては農業の否定を意味します。ついに農家の方が絶望のあまり自殺してしまいました。子供の頃、友人の家の殆どが農家だったので、心中が痛い程分かります。

鶯(うぐいす)の声が度々聞かれるようになってきました。時は確実に動いています。

         古庭に鶯啼(なき)ぬ日もすがら
                                      蕪村

早い日の出、今朝(3月24日)、月は南の空高く、寝待月(ねまちづき)の姿を見せてくれています。
筋(すじ)状の雲が何本も南西から北東にあり、朝陽を受けて茜色に輝いていました。

3月11日以来、書き込むスペースがない程埋まっていた手帳は、その日から、真っ白です。
その空白は、不気味で、虚無的にさえみえます。
一方、空白を切っ掛けに、仕事の合間の抹茶、何も考えずに喫していましたが、今は、何かを考えながら嗜んで(たしなんで)います。
恐らく、その先に無心があるのかと思い至ります。

原発事故に我が身を捨てて使命を果たしている人々、我が身を顧みず津波の襲来を無線放送で呼び掛け続けていた人々、“無私”をここにみます。
1945年8月20日(8月15日の終戦後)、樺太(からふと)の真岡郵便局で起こった9人(異説あり)の電話交換手の乙女の悲劇と、同じ流れにある人間の崇高な精神です。

このような話に接する度に、この箴言を想い出します。
    「逆境の美徳は忍耐」(フランシス・ベーコン)
先日の会議でも度々遅刻するスタッフにイライラしていると、同僚にシャクルトン(世界的探検家で、世界初の求人広告を出した人物)が言ったという「忍耐」というポスターを眼の前に出されてしまいました。
大学執行部の余裕とユーモアに感謝です。

         Sweet are the uses of adversity
            (逆境が人に与える教訓ほどうるわしいものはない)
                                      シェークスピア

3月27日(1689年)は芭蕉が奥の細道へ旅立った日です。

         月日(つきひ)は百代(はくたい)の過客(かかく)にして、行(ゆき)かふ年も又旅人也

この言葉は、今までとは違う何かを教えてくれます。

今週から再開した花だより、大学に集う人々が、頑張っていることの読者への意思表示です。
執務室はクリスタル、秘書室は白磁で清冽さを演出して、それに鋭敏ぎみになっている心を優しく癒してくれる暖色系の花の組み合わせです。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■カンパニュラ   キキョウ科/原産:ヨーロ
ッパ/別名「フウリンソウ・釣鐘草」/《名前の
由来》ラテン語で「小さな鐘」を意味する語から
/風鈴のような形の花を一枝にいくつも咲か
せる。世界で約300種あり、日本にも4種自
生する。
■スプレーストック   アブラナ科/一年草/
原産:地中海沿岸/甘い香りを放つ春の花。
茎の上部で3〜5本に分岐して開花するスプ
レー咲きのストック。ボリュームのある八重咲
きと清楚な一重咲きがある。
■コデマリ   バラ科/落葉低木/原産:中
国/白い小花が半円球状に密集し、ひとつの
花のように咲く。枝いっぱいに連なって開花
し、大株に育ったものは見応えがある。花の重
みで枝垂れる姿が優雅で、庭木としても人
気。花期は4〜5月。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1191.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植
物/原産:西アジア・トルコ地方/《名前の由
来》ラテン語で蛙を意味する“rana”に由来。
自生地が蛙の沢山いる湿地であることから/
フワフワした柔らかい花弁が幾重にもかさな
る。今回はピンク、濃黄色、淡黄色の3色を使
用。
■ラグラス   イネ科/一年草/原産:地中
海沿岸/《名前の由来》ギリシャ語の「うさぎ
の尾」/英名「バニーテール」でも流通。名前
の通り、うさぎの尻尾を思わせる花穂が特徴。
フワフワした花穂が愛らしく、ガーデニングで
も人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1192.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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