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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.03.11

vol.116  − 茜空 −

【編集註】
この原稿は「東北地方太平洋沖地震」発生以前の同日午前10時半に掲載したものです。
この度の地震発生に伴い、しばらくの間お花の活け込み写真については休載いたします。ご了承ください。
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今朝(9日)、出勤時、山の端から朝日が顔を出す直前、東に茜空(あかねぞら)が広がっていました。
東の吾妻の嶺は雲に覆われ、市内の上空は青空です。雪がわずかに舞っていました。

久し振りの予定の入っていない日曜日、いつもの時間に目覚め、「ここは福島」、「今日はフリー」と唱え、また床に就きました。
どの位経ったのか、鶯の声で目を覚ましました。
今年初めてです。鶯が、幼いのか、鳴き初めか、下手くそでした。滅多にその姿をみせないことは分かっていましたが、探しました。見付けることはできませんでした。歌に詠まれているように、小さな口かどうかなど、とても分かりません。

         よりあひて真すぐに立てる青竹の藪のふかみに鶯の啼く
                                      若山牧水

拙宅の庭は、竹ではなく樹木ですが、雰囲気は同じく感じられます。
鶯といえば、有名な和歌があります。

         ふるさとへゆく人あらば言づてむ
         今日うぐひすの初音聞きつと
                                      源兼澄

私にはもはや、伝える親も幼馴染みも逝ってしまいました。

福寿草は今年も、同じ時期、場所に姿を見せてくれました。
以前にも書きましたが、この姿をみると「健気(けなげ)」という言葉が口を衝いて出てきます。
(vol.70 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=96

この時季、東京では、沈丁花(ジンチョウゲ)の香りがどこからともなく漂ってきます。
福島では、朝日を背に受けて山々の尾根に屹立している木々の幹が一本一本みえる程、赤を背景にその黒を際立たせています。
智恵子抄(vol.27 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=44)で有名な阿武隈川が蛇行し、そこに白鳥が羽を休めています。
その背後には安達太良山が、雲一つない青空を背景に、裾野を春霞にまとわれて、冠雪した山姿で存在感をみせています。

心猛々しい(たけだけしい)自分のだらしなさに腹を立て、香りを放つフリージアの黄色とカスミ草の白、そして都忘れの可憐さをみて「知られざるを憂えず」を呪文のように唱えている毎日です。
こんな時、「Youve Got A Friend (君の友達)」が流れてきて、心は1970年代に飛んでいきました。

         You just call out my name
         And you know wherever I am
         Ill come running to see you again…
         All you have to do is call
         And Ill be there
         Youve got a friend

今週の花材は、執務室は凛々しい姿をみせてくれ、自分の心の拙さ(つたなさ)を諫め(いさめ)られているような気がします。
秘書室は春到来で、暖かさで部屋を包んでくれています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■山吹   バラ科/落葉低木/原産:日本・
中国/万葉の時代から春の花として日本人に
親しまれた植物。花の色が“黄色”を表す代表
的な色名。しなやかな枝が山で風に揺れてい
る姿を表現し「山振(やまぶり)」とも呼ばれ
る。
■エピデンドラム(サンセットオレンジ)   ラ
ン科/非耐寒性常緑多年草/原産:中南米
/《名前の由来》ギリシャ語のepi(上に)とde
ndron(木)から。本属が一般的に着生ランで
あることから/細く伸びた茎の先に、小さな花
が密集して半円形の一つの花のように咲く。
次々と開花するので、観賞期間が非常に長
い。
■スカシユリ(セラダ)   ユリ科/球根植物
/《名前の由来》花弁の先端が広く、付け根
部分が細くなり、透けることから/別名「アジ
アンティックハイブリッド」。大輪咲きのユリ(オ
リエンタルハイブリッド)に比べ、花が小さく、
香りもほとんどない。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1161.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■エピデンドラム(ピンク)
 ※理事長室花材をご参照ください。
■カーネーション(ジョーレ)   ナデシコ科/多年草/原産:南ヨーロッ
パ・西アジア/江戸時代にオランダから渡来。スタンダードな花色から絞
りや覆色の個性的なものまで、品種が豊富。母の日の花として古くから
親しまれる。
■スィートピー(ファーストラブ)   マメ科/一年草/原産:地中海沿岸
/明治〜大正時代に渡来。一つ一つの花が蝶のような花姿で甘い香り
を放つ。チューリップ、フリージアと同じく、春の花として代表的なもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1162.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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