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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.02.25

vol.114  − 異邦 −

海外での仕事、その合間にみる「異邦の空」は、一時、人を詩人にします。
中継地で、定宿に立ち寄り、何もしない。 この事が、荒ぶる心を平常に戻してくれます。

この時季、ロビーの中央には、バラ、アマリリスの赤とピンク、そしてストックの白を組み合わせて山形に、
廻廊の中央には赤いツツジ(アゼリア:職人さんに確認)を半球状に、大きな花器に飾ってありました。
両者とも花と花の間が隙間なく活けられていました。華やかという言葉が似合う設え(しつらえ)でした。

ホテルの廻廊は、普段は、中庭と直に接しているので、心持ちよい風が入ります。
そこの椅子に座って、持ち込んだ本を読むのを楽しみにしています。
この時季、ガラス戸が嵌(は)め込まれていました。しかし、テーブルの上にピンクのバラと白のカスミ草、あるいは赤いバラとクリーム色のフリージアという組み合わせが、小さなガラスの花器に活けられており、心癒されました。

帰国後に寄ったホテルの花も、ツツジと河津桜(カワヅザクラ)でした。
こちらは、どちらもその設えは、間を意識した造形でした。彼我(ひが)の空間構成に対する美意識の違いを認識させられました。

北欧は、まだ真冬でした。
旧市街を囲んでいる運河は凍っており、スカゲラク海峡のフィヨルドも流氷が接岸していました。
真に、「氷水面(こほりすいめん)に封(ほう)じて聞くに浪なし」です。
冬の水の美を氷に見出した心敬(しんけい)なら、どんな詩歌を詠んだでしょう。
湿度が低く、天上での星の輝きと地上での街路の中央に吊り下げられている杉玉状のイルミネーションが、講演を前に緊張している自分には、贈り物でした。

友人夫妻に、西海岸の小さな美術館に連れて行ってもらいました。
“北欧のターナー”と私が名付けた心惹かれた作家(Lars Lerin)は、何と奥様のクラスメート(!)とのことでした。参考にポスターをお見せします。(http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/114_lars_lerin.jpg

「異邦の海と空」は、自分の生き方を自らに問う機会にもなります。
いつにも増して鴎外の「妄想」に思いが至ってしまいます。
  (vol.47 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=72
  (vol.98 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=126
己の生き方とか生死を考えてしまいます。考え過ぎて、眠れない夜を過ごしてしまいました。

         旅館の寒灯  独り眠らず
         客心  何事ぞ  転(うた)た凄然(せいぜん)たり
         故郷  今夜  千里を思わん
         霜鬢(そうびん)  明朝  又た一年
                                      高適(こうせき)

今週の花材は、執務室は春めいた陽光に対して心に抑制を与えてくれます。
秘書室は、暖かさで、訪れる人の心の固さをほぐしてくれそうです。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■黒文字(クロモジ)   クスノキ科/《名前
の由来》樹皮の黒い斑点を文字に見立てて/
春に黄緑色の可憐な花が咲く。実は5mmほ
どの球果で、秋に黒く熟す。樹皮や枝に独特
な香りがあり、材は和菓子などに用いられる
高級爪楊枝になる。
■ピンポン菊(ビロード)   キク科/多年草
/原産:オランダ/ピンポン玉のようにまん丸
に咲く菊。日持ちのする菊の中でも、特に長く
楽しめる品種。「ビロード」は赤茶色の品種。
■ドラセナ(コーディラインカプチーノ)   リュ
ウゼツラン科/原産:熱帯アジア・熱帯アフリ
カ/日本で出回る観葉植物の代表品種。以前
はドラセナ属に分類されていたので“ドラセナ”
の名で流通(本来は“コルジリネ”)。「コーディ
ラインカプチーノ」は赤黒色の葉で縁に白色が
入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1141.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植
物/原産:西アジア・トルコ地方/《名前の由
来》ラテン語で“蛙”のranaに由来。自生地が
蛙の沢山いる湿地であることから/フワフワと
した柔らかい花弁が幾重にもかさなる花姿。
今回は同じ花とは思えないような2種を使用。
オレンジ「コートオレンジ」・グリーン「フレジ
ス」。
■パンパスグラス   イネ科/多年草/原
産:ブラジル・アルゼンチン/草丈が3m位に
なり群生し、ススキが巨大化したような花姿。
白銀色のフワフワした花穂が特徴。今回は花
穂の部分を貼り合わせアレンジしたものを使
用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1142.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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