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理事長室からの花だより

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2011.02.18

vol.113  − 残雪 −

この原稿の掲載は、海外で講演をしている頃です。
今回は、医学でないことを話すことで気伏(きぶせ)になっています。
出張中も穴をあけないように書きました。季節感にズレが出るかも知れません。お許し下さい。

先日、仕事からの帰路、地下鉄の駅に向かっていました。
折から、直線の道の遥か先に夕陽が沈みゆくところでした。太陽は黄金色に輝き、夕陽に照らされた人々や建物が金色(こんじき)に、その陰は漆黒となり、その対比は、“安らぎ”でした。

我々は、何故、古来からこれ程夕陽に惹かれるのでしょうか。
  (vol.88 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=114
事実、「夕日が見たい−81のあかね色−」(小学館)など、いくつか写真集も発刊されています。

         西空の夕焼けに立つ冬木の枝
         繁に黒しも大地すでに凍て
                                      (木下利玄)

先日、蜻蛉返り(とんぼがえり)で京都へ行ってきました。改めて、日本の季節の多様性を感じました。
濃尾(のうび)平野では田畑の大気は霞んでおり、早春でした。
関ヶ原には雪が残っており、大地はまだ凍てついているようにみえました。
京都盆地に入ると穏やかな寒気を感じました。
翌朝の帰路では、京都から名古屋にかけては一部に雪が残っており、地表には霜が一面に降りており、幻想的な風景を楽しめました。

次の日、福島へ戻る時には、鉄路から、山や里に残雪がみられました。
残雪をみると、昔、奥会津の医療機関に勤めていた時、暦を捲るにつれ、日照時間が多く、長くなり、屋外の積雪が軒先から少しずつ後退していくのを毎日みては、春を待っていたのを想い出します。

2月15日は西南戦争が始まった日です(1877年)。
戊辰の役までは鬼神の如く、維新後は木偶の坊(でくのぼう)と称された西郷隆盛ですが、そこに肚(はら)をくくった覚悟のようなものをみるのは私だけでしょうか。
「南洲残影」(江藤淳)を読むと、西郷隆盛、会津藩、作者の、滅亡を知りつつ進んでいく姿が重なります。
薩摩や長州の武士から「鬼の官兵衛」と恐れられ、会津藩士から慕われていた佐川官兵衛は、政府軍の一員として従軍し、戦死しています。彼の生涯は、「鬼官兵衛烈風録」(中村彰彦)に詳しく紹介されています。

また、西南戦争の激戦地になった熊本にある旧五高の教師となり、小泉八雲から「神のような人」と慕われた秋月悌次郎も、旧会津藩士です。
  (vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89
彼の生涯は、松本健一、司馬遼太郎、中村彰彦など多くの作家に取り上げられています。
彼等の波瀾に満ちた生涯、彼等の心中は如何ばかりだったかと察すると、胸に疼くものを感じます。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

※編集註:今回は「今週の花」活け込み前の、海外出張出発直前に書き上げた原稿のため、お花についてのコメントがありませんことをご了承ください。

今週の花


【理事長室】
■ユリ(ノバゼンブラ)   ユリ科/球根植物
/大輪咲きの白色のユリ。優雅な花姿と芳香
で人気のオリエンタルハイブリットの一品種。
「カサブランカ」が下向きに咲くのに対し、「ノバ
ゼンブラ」は上向きに開花。
■ハクモクレン   モクレン科/落葉高木/
原産:中国/春を告げる花として古くから庭木
などで親しまれる。葉に先立ち枝先に上向き
の花を咲かせる。白色の花は15cmほどの大
輪で、芳香がある。花弁は日が当たると開花
し夕方になると閉じる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1131.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■カラー(ウェディングマーチ)   サトイモ科/球根植物/原産:南アフリ
カ/《名前の由来》メガホン状の苞がYシャツの襟(カラー)に似ていること
から/別名「オランダカイウ」(阿蘭陀海芋)“オランダから来た芋”という意
味。江戸時代にオランダから渡来。苞の中心にある棒状の部分が花。
■ハイドランジア(ライトピンクアンティーク)   アジサイ科/落葉低木/
日本のアジサイがヨーロッパにわたり、品種改良された西洋アジサイ。日
本原産のアジサイに比べ、花が大きく華やか。「ライトピンクアンティーク」
は、花期を過ぎて花色がアンティークカラーに変化したもので、淡いピンク
がかったシックな色が特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1132.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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