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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.02.04

vol.111  − 冬日 −

右往左往している世間をよそに、時は確実に動いています。
今日(2月4日)は立春です。

雪原と化した畑の上を、雪が竜巻のように舞っています。しかし、日の光は、既に春のそれであることがみてとれます。
朝ぼらけ、日の出は早くなっており、早朝の出勤時、往来する車のライトは、暦を捲る(めくる)につれて、消えていきます。明けの明星の輝きは薄れ、月の輪郭も鋭さを失ってきました。

一輪挿しのヒヤシンス、
紫の色と香りが、この時季、彩りの乏しさや寒気の厳しさを補い、春の近いことを告げています。

週末、列車の中まで仕事を持ち込み、帰宅したらいつの間にか寝入ってしまいました。目を覚ましたら、夕陽が高層ビルのガラスに自らを映しながら沈んでいくところでした。
さながら現代版浄土寺の浄土堂だと、勝手に想像を膨らませてしまいました。

         凩(こがらし)や海に夕日を吹き落す
                                      (夏目漱石)
この句の「海」を「ビル群」に置き換えると、この冬の東京のようです。
一方、
         相打てる浪はてしなき冬の海の
         ひたと黒みつ日の落ちぬれば
                                      (若山牧水)
「冬の海」という言葉から日本海を思い起こさせます(実際は、沼津での作のようですが)。

話題は飛びます。
俳句は一句、二句と言い、短歌は一首、二首と言います。前から漠然とした疑問を持っていました。これは、漢詩の単位を短歌に流用したためだそうです(飯倉晴武「日本人 数のしきたり」)。

我が国の冬、日本海側と太平洋側の対照的な天候は、そこに暮らす人々の、生活、文化、心情、そして言語などに大きな影響を与えてきました。

福島盆地は、日本海と太平洋の中間よりやや太平洋側で、奥羽山脈の麓(ふもと)に位置しています。
そのため天気も、足して2で割ったような塩梅です。
深夜の雪舞のように降る雪は、木々を覆い、朝起きてみると、その情景は、薄明の橙と青が刻々と変化していく東の空を背景に、“雪の華”の様でした。

ジョン・バリー(英国の作曲家)が亡くなったのを、新聞で知りました。
映画、007シリーズの音楽で有名です。私にとっては、「プレイング・バイ・ハート」が最高です。執務室にこのCDをいつも置いてあります。人生の哀歓を切々と謳い上げています。私の“心の担当医”である同僚教授は、ジャズとは全く対極にいる人(?)ですが、彼がこのCDを借りていったくらいです。

今週の花材は、執務室は渋い華やかさ、秘書室は清涼感漂う明るさを見せてくれています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■グロリオサ(ロスチャイルディアーナ)   ユ
リ科/球根植物/原産:アフリカ、熱帯アジア
/《名前の由来》「栄光」や「見事な」を意味す
るラテン語の“グラリオラス”から/メラメラと燃
える炎のような花姿。半蔓性植物で他に絡ま
りながら成長するため、葉先が巻きヒゲにな
る。
■雪柳   バラ科/落葉低木/原産:日本、
中国/《名前の由来》柳のように茎がしなやか
に垂れ、花を散らした様子が雪が降ったかの
ように見えることから/春に小さな花を枝いっ
ぱいに咲かせる。淡いピンク色の花をつける紅
花雪柳(ベニバナユキヤナギ)もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1111.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■ニゲラ   キンポウゲ科/一年草/原産:南ヨーロッパ/和
名「黒種草」(クロタネソウ)/《名前の由来》ラテン語のNiger
(黒い)より。種が黒色であることから/花弁は退化して、ガク
が花弁のように見える。花後に風船のような実になり、黒い種
が出来る。
■エリンジュウム(プラナム)   セリ科/多年草/原産:ヨー
ロッパ/長く鋭い苞と松カサのような花が特徴。成長とともに青
みを帯びる。非常に花持ちが良く、ドライフラワーにしても楽しめ
る。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1112.jpg
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